最終更新日 24/07/24
注目企業海外スタートアップ

【Entomal Biotech】ハエの幼虫で循環経済を実現

サステナブル食品
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Entomal Biotech Sdn. Bhd(以下、Entomal Biotech)は、Yanni、Vic、Thomasの3人によって設立された、マレーシアを拠点とするバイオテクノロジー企業だ。同社はブラックソルジャーフライ(BSF)というハエの幼虫を活用して、生ゴミなどの廃棄物を食料や肥料へと変える事業を運営している。

食品ロスは現在も世界各国で大きな課題であり、消費者庁によると日本だけで約500万トンもの食品ロスが発生している。これは飢餓に苦しむ人々に向けた世界的な食料の支援量とほぼ同等であり、食糧危機も克服できていない現状を踏まえると、現代の飽食は非常に大きな問題を抱えている。

本記事では、こうした食品ロスを解決することで、持続可能な経済システムの創造に取り組むEntomal Biotechについて紹介していく。

事業内容:ハエの幼虫を活用して食料品や肥料を生産・販売

Entomal Biotechは、スーパーやレストランから生ゴミなどの廃棄物を回収し、ハエの幼虫によって処理。そして、ハエの幼虫が出したフンを肥料として、ハエの幼虫自体をペットフード・健康食品として生産・販売している。

近年は化学肥料が高騰しているため、代替手段としてハエを使った同社の堆肥は農家の強い味方になるだろう。また幼虫にはタンパク質と脂肪分など、豊富な栄養が含まれており、健康食品として高い可能性を秘めている。

食料廃棄物や有機廃棄物を高価値の資源に変換する(アップサイクル)ことで、持続可能な経済システムを構築している点が同社の最大の特徴だ。

引用:Entomal Biotechが手がけるペットフード

ハエの幼虫を活用して食料廃棄物を処理

Entomal Biotechではブラックソルジャーフライ(BSF)の幼虫を活用して、食料廃棄物の処理を行っている。動画では大量の幼虫が入った容器の中に魚を1尾入れた際の様子が映されており、24分ほどで魚が骨になってしまった。

実際に小さじ1杯のブラック・ソルジャー・フライの幼虫は、7~10日間で1トンの食品廃棄物を100kgの動物向け飼料と200kgの肥料に変えるらしく、その高いゴミ処理能力がうかがえる。

食料廃棄物を焼却処分しないためCO2の排出を大幅に削減

引用:https://entomal.com/embc/

同事業のさらに優れている部分として、大幅にCO2を削減できる点が挙げられる。

一般的に食料廃棄物は焼却場にて処理されるが、この際にゴミ1トンあたり2.5トンのCO2が出てしまう。世界中で10億トン以上も食料廃棄物が排出されていることも考慮すると、地球温暖化への影響は非常に大きいといえるだろう。

しかし、ハエの幼虫によって処理する同社の取り組みであれば、ゴミを燃やす必要がないため、食料廃棄物1トンあたり約2.4トンのCO2を削減できるそうだ。

東南アジアの広い地域で事業を展開

Entomal Biotechは、マレーシアだけでなく、インドネシアや台湾、韓国などのアジア諸国でも事業を展開している。特にマレーシアでは州政府と協力して、大手小売店舗から排出される食料廃棄物を回収しており、この中には日本のイオンモールも含まれているそうだ。

東南アジアの広い地域で、さまざまなステークホルダーと提携することで、食料品に関する、持続可能なサプライチェーンの構築に寄与している。

Entomal Biotech: Pioneering Sustainable Solutions to Combat Food Waste, Emissions, and Foster Food Security
Entomal Biotech, a multi-award-winning startup, is making waves with its innovative approach to addressing the global ch...

2023年にクラウドファンディングで約6000万円を調達

引用:https://entomal.com/entomal-raises-rm1-75m-in-1st-round-of-equity-crowdfunding-on-mystartr-platform/

Entomal Biotechは、MyStartrというプラットフォーム上で、最新のエクイティクラウドファンディング(ECF)にて、最大目標額の175万RM(マレーシアリンギット)を調達した。

なお、RMとはマレーシアの通貨であるリンギットの単位であり、2023年の平均為替レート(1RM = 33.5円)で計算すると、日本円で約6000万円にのぼる。

OECDはバイオ産業市場が2030年に200兆円に成長と予想

引用:http://www.nedo.go.jp/content/100870410.pdf

OECD(経済協力開発機構)は、加盟国における2030年のバイオ産業市場が約200兆円にのぼると、2009年時点で予想している。

人口増加に伴い食料需要が拡大していると共に、気候変動や環境汚染といった問題への対処も求められており、今後もバイオ産業市場は拡大していくだろう。

会社概要

会社名:Entomal Biotech Sdn. Bhd.

設立年:2021年

本社所在地:クアラルンプール、マレーシア

主要製品:昆虫タンパク質、機能性ペットフード、有機肥料

主要技術:ブラックソルジャーフライの幼虫を利用したバイオ廃棄物処理

公式HP:https://entomal.com/

まとめ

本記事では、ハエの幼虫を活用して食料品や肥料を生産しているEntomal Biotechについて紹介してきた。

New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介している。

Entomal Biotechのように、バイオテクノロジー事業を展開する企業についてもまとめているため、関連記事もご覧いただきたい。

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