
気候変動対策として再生可能エネルギーへの転換が急務となる中、多くの企業が脱炭素を目指しています。しかし、自社で大規模な再エネ発電設備を導入するにはコストや知見のハードルが高く、電力調達に悩む企業も少なくありません。
こうした社会課題に挑むのが株式会社アスソラ(Earth Solar Inc.)です。同社は「再生可能エネルギーをフル活用する」をミッションに掲げ、高圧太陽光発電所を活用した電力供給サービスで企業の脱炭素化を支援しています。
本記事では株式会社アスソラ(以下、アスソラ)の事業内容や市場動向、今後の展望についてわかりやすく紹介します。
事業内容:高圧太陽光発電所による再エネ電力供給

アスソラは企業向けに大規模な太陽光発電所(高圧案件)で発電したクリーン電力を提供しています。
高圧太陽光発電所とは、一般的に出力50kW超の高圧配電網に接続する太陽光発電施設を指し、より大規模な発電が可能です。アスソラは自社またはパートナーとともに太陽光発電所を開発・運営し、その電力をコーポレートPPA(企業と発電事業者の直接長期契約)によって需要家企業へ供給します。これにより企業は自社で設備投資を行わずに再エネ電力を調達でき、脱炭素経営に貢献することが可能です。
サービスの特徴:土地と地域に根ざした再エネ開発
アスソラのサービスにはいくつかの特徴があります。
第一に、発電所の立地選定から建設・運営、電力供給まで一気通貫で手掛ける点です。同社は地域環境との共生を重視し、遊休地や大規模農地を活用した発電所開発を推進しています。特に農地上部に太陽光パネルを設置し農業と発電を両立する営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)にも取り組んでおり、土地の有効活用と農業支援を両立する独自性があります。
第二に、供給する電力は各企業のニーズに合わせて長期安定契約で提供されるため、企業は再エネ比率の向上やRE100目標達成(※1)に向けて計画的に利用することが可能です。
第三に、蓄電池などのエネルギー利用最適化技術も視野に入れ、再エネ電力の安定供給とさらなる普及拡大に取り組んでいます。
ターゲットとなる顧客は、自社の脱炭素化を図る法人全般です。例えば、携帯通信大手のNTTドコモは東北各地の事業所向けにアスソラの発電所から再エネ電力供給を受けています。この初号案件では東北エリアに計約9MWの高圧太陽光発電所6か所を建設し、年間1千万kWh超(一般家庭2,300世帯分)の電力を供給、年間約4,740トンのCO2削減効果を生み出しています。
このようにアスソラは企業の脱炭素ニーズと地域の再エネ資源を結びつけ、社会的意義の大きい事業を展開しているのです。
(※1)RE100
「Renewable Energy 100%」の頭文字を取った言葉で、その名の通り、自然エネルギー100%での事業活動を行うという宣言をした国際的な企業集団。
資金調達:シリーズAラウンドにて6億3,000万円の資金を調達

アスソラは2025年4月、リード投資家の環境エネルギー投資をはじめ三菱UFJキャピタル、ANRI等からシリーズAラウンドで6億3,000万円の資金調達を実施しました(累計調達額7億円)。
調達資金は、新規の高圧・特別高圧クラスの太陽光発電所や系統用蓄電池プロジェクトの開発推進、人材採用の強化に充てられます。実際、同社はこの資金を背景にプロジェクトファイナンス組成や施工・運用体制の強化を図り、さらなる事業拡大に備えています。
創業者プロフィール

創業者で代表取締役の山崎智広氏は異色の経歴を持ちます。東京大学卒業後、日本銀行で経済分析に従事し、スタンフォード大学大学院を修了。2014年より再エネ大手の株式会社レノバで国内最大級のバイオマス発電や地熱発電の新規事業開発を手掛け、2022年にアスソラを創業しました。金融と再エネ両分野の豊富な経験を持つ山崎氏は「再エネの導入拡大には経済性と両立させることが鍵」と考え、経済性を担保しながら脱炭素を実現するビジネスモデルに挑戦しています。このビジョンが評価され、ベンチャーキャピタル各社からの資金調達につながりました。同社オフィスはANRIのインキュベーション拠点「CIRCLE」に所在し、今後もベンチャーならではの機動力で事業拡大と社会貢献を両立していく戦略です。
市場規模:日本・世界で拡大する再生可能エネルギー市場

日本国内の電力に占める再生可能エネルギーの割合は、2016年の約15%から2023年には25.7%へと大幅に上昇しました。特に太陽光発電は同期間で導入量が3倍以上に拡大し、再エネ普及を牽引しています。再エネ全体の累積導入容量は2022年度末時点で約94.2GWに達し、2030年度目標の約61%に到達しました。政府は2030年までに電源構成の36〜38%を再エネで賄う計画であり、高圧太陽光発電所のような大規模太陽光はその達成に不可欠な存在です。

世界に目を向けると、再生可能エネルギー市場はさらに拡大しています。2023年には世界の総発電量の約30%を再エネが占め、太陽光と風力がその成長を牽引しました。とりわけ太陽光発電の累積導入量は過去10年で8倍に急増し、2023年時点で世界全体で約1.6TW(テラワット)に達したと報告されています。各国で2050年カーボンニュートラルを見据えた導入目標が掲げられる中、太陽光発電市場は今後も年率10%以上で成長し2030年代に数兆ドル規模へ拡大すると予測されています。
このような市場環境下、日本でも企業による再エネ調達ニーズが急増している状況です。世界的なRE100運動の波及で、日本企業のRE100加盟社数は2022年時点で70社超に上り、脱炭素電力の需要が産業全体に広がっています。とはいえ、単に既存の再エネ電力を購入するだけでは不十分で、新たな再エネ発電所を増やす「追加性」が重視される傾向にあります。この点、高圧太陽光発電所を新設して電力供給するコーポレートPPAスキームは、新規再エネ設備の創出に直結し、企業のESG戦略と国全体の脱炭素化双方に貢献できる手段です。アスソラの事業はまさにこの潮流に乗ったものであり、国内外の再エネ市場拡大を背景に大きな成長余地があります。
会社概要
- 会社名: 株式会社アスソラ(Earth Solar Inc.)
- 所在地: 東京都港区六本木 6-10-1 六本木ヒルズ森タワー15F(CIRCLE by ANRI 内)
- 設立: 2022年4月1日
- 代表者: 代表取締役 山崎 智
- 公式HP: https://www.earthsolarinc.com
まとめ
高圧太陽光発電所による再エネ電力供給を軸に、株式会社アスソラは企業の脱炭素化と持続可能な社会の実現に挑戦しています。社会課題に正面から向き合うその姿勢と、経済性を両立させるビジネスモデルは、多くの企業や投資家から注目を集めています。
実際に同社は大手企業との契約や資金調達を着実に重ね、スタートアップとして力強い成長軌道に乗っています。今後は更なる発電所の開発拡大や蓄電池の導入によって、電力の安定供給と脱炭素化への貢献度を一段と高めていく計画です。地球と太陽の恵みを活かし輝く明日へ――そんな理念のもと躍進するアスソラの今後の展開に期待が寄せられています。
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