今回ご紹介するスタートアップは、「みはたま株式会社」(以下、みはたま)です。
同社はコーヒー豆の販売を手掛けていますが、特筆すべきはIT技術の活用。特にAI技術を駆使してさまざまなサービスを開発しており、たとえば良い豆と欠点豆(カビや虫くいの発生している豆)を見分ける際に活用しています。
そして最近、みはたまが開発した目玉商品が「Flavor Craft AI」です。この革新的な家庭用マシンでは、AIが利用者の好みを分析し、それに基づいて最適なコーヒー豆を調合してくれます。これにより、いつでも自分好みの味を楽しむことが可能です。
本記事では、みはたまの事業内容や最新動向、そしてコーヒー市場の状況について詳しく解説していきます。
事業内容:コーヒー豆の販売とIT技術のサポート
みはたまはコーヒー豆の販売とIT技術のサポートといった事業を展開しています。同社はフェアトレードで仕入れたコーヒー豆だけを扱う点や、良い豆と欠点豆を選り分けるためにAI技術を活用している点が大きな特徴です。
さらに、個人の味の好みに応じてコーヒー豆を分類する技術や、味覚センサーデータの活用、温度制御、無線技術など、多岐にわたる独自の技術を開発しています。
「Flavor Craft AI」AIが好みに合わせてコーヒー豆をブレンド
みはたまが開発する代表的なプロダクトが、「Flavor Craft AI」です。専用アプリから好みの味を入力することで、利用者の味の好みに合わせてコーヒー豆を配合してくれます。
通常、理想のコーヒー豆やそのブレンドに出会うには、多くの種類の豆を試す必要があり、試行錯誤を繰り返さなければならないため、大変な時間と労力がかかります。これを解決するのがAI技術です。
専用スマホアプリで好きな味を指定すると、AIが豆の配合を計算して最適なブレンドを提供してくれるため、利用者は自分にぴったりのコーヒーを簡単に何度でも試すことが可能です。
なお、Flavor Craft AIは本体と、味覚センサーによって味のデータが登録されたコーヒー豆5種類のセットで販売されています。このプロダクトは、2025年1月にアメリカで開催される家電製品の見本市「CES」でプロトタイプが公開される予定です。
また、同時にクラウドファンディングプラットフォーム「INDIEGOGO」での資金調達も開始されます。小規模な飲食店や家庭をターゲットにしているため、価格は3万円未満と手に取りやすく、非常に魅力的です。
みはたまが提供するコーヒー豆は、生産者から直接買い付けた厳選されたフェアトレード商品です。同社のAI技術によって豆が選別されており、安全で高品質なコーヒーを楽しむことができます。
一方で、選別の過程で取り除かれた虫食いやカビのある「欠点豆」は、廃棄されることなく、肥料として花の栽培に再利用。この花から得られた収益は、地域社会への貢献に役立てられています。
市場規模:コーヒー市場は2036年までに2640億ドルまで成長
SDKIの調査によると、コーヒー市場は今後も順調に拡大し、2036年までに2640億ドル規模に達する予測です。この成長率は年平均約5%(CAGR)とされ、2023年の市場規模である1400億ドルから大幅な増加が期待されています。
コーヒー市場の成長要因
特に米国、ドイツ、中国、フランス、スペインといった主要市場が、世界のコーヒー消費をけん引しています。一方で、アジア太平洋地域や南米では、都市型ライフスタイルの普及により、家庭外でのコーヒー消費が急増しており、この動きが市場のさらなる拡大を後押ししています。
また、新型コロナウイルス感染症の影響が収束したことにより、外食産業が世界的に回復。これに伴い、消費者の行動も変化しています。特にミレニアル世代の間では、プレミアムコーヒーが社会的ステータスの象徴として人気を集めるようになり、さらに冷たい特製飲料(例: フラッペなど)が若年層の間でトレンドになりました。このような需要の多様化は、市場活性化につながる大きな要因となっています。
コーヒー市場の抑制要因
コーヒー市場には成長が期待される一方で、いくつかの課題も存在しています。たとえば、人口増加や食料価格の高騰、失業率の上昇といった社会的・経済的な要因が、コーヒー豆を含む食品原材料の価格変動に対する懸念を引き起こしています。また、輸送コストや保管費、人件費の増加に加え、政治的な影響も絡み、最終的な製品価格に影響を及ぼしている状況です。
コーヒー市場は、家庭外での消費が拡大していることや若年層の新しいトレンドの支持を受けて、今後も成長が見込まれています。しかし、この成長を維持するためには、原材料や製品価格の変動といった課題への対応が求められます。市場の動向を注意深く見守りながら、持続可能な成長を目指すための取り組みが重要です。
市場トレンド:コーヒーの2050年問題
「コーヒー2050年問題」とは、世界のコーヒー豆生産量の約6割を占めるアラビカ種の栽培に適した地域が、2050年までに半減すると予測されている問題です。この問題は、米国のコーヒー研究機関「World Coffee Research」が発表しました。
その背景には、地球温暖化による気候変動があります。具体的には、気温や湿度の上昇、干ばつの頻発、「さび病」と呼ばれる病害の拡大などの影響で、これまでコーヒー栽培に適していた地域が次第に適さなくなることが主な原因です。
こうした栽培適地の減少は、以下のような深刻な影響を及ぼすと懸念されています。
- コーヒーの生産量・品質の低下
- コーヒー農家の貧困化
- コーヒーの価格高騰
これらの問題を解決するために、二酸化炭素排出量の削減やフェアトレードによる適正価格取引といった取り組みの重要性が高まっています。
解決策として注目される代替コーヒー
最近では、代替食品の市場が拡大する中で、代替コーヒーの開発も注目されています。特にコーヒー生産は食品・飲料カテゴリーの中で温室効果ガス排出量が6番目に多いとされ、環境負荷の高さが代替品の開発を後押ししている状況です。
たとえば、アメリカ発のスタートアップ「Atomo Coffee」は、農業廃棄物を活用して、コーヒー豆を使用せずにコーヒーを製造しています。リバースエンジニアリング技術を用い、コーヒー豆の分子構造を徹底的に分析することで、本格的なコーヒーに匹敵するフレーバーを実現している点が最大の特徴です。
他にも米国発のMinusは、Atomo Coffeeと同じく植物由来のアップサイクル原料を使用して「ビーンレスコーヒー」を製造。1缶(250mL)を5ドル(約750円)という高価格で販売しています。
一方で植物細胞を培養して「本物」のコーヒーを育てる、フランスのSTEM・アメリカのCalifornia Culturedといった、バイオテクノロジーに特化したスタートアップ企業も登場。カナダのCult Food Scienceは、細胞ベースのコーヒーに炭酸を混ぜた「Zero Coffee」を間もなく発売予定です。
また業界最大手のスターバックスが、将来に備えて気候変動に強いコーヒーの木の品種を流通させているという報道もあります。いずれにせよ、コーヒー市場の課題解決には複数のアプローチが必要と考えられ、さまざまな代替品開発の動きから今後も目が離せません。
企業概要
- 企業名:みはたま株式会社
- 代表者:代表取締役 山本 美沙
- 設立:2024年
- 所在地: 〒444-3261 愛知県豊田市 東大林町岩本29番地3
- 事業内容:コーヒー豆の販売、ITサポート、その他関連事業
- 公式HP:https://mihatama.com/
まとめ
本記事では、AIが好みに合わせてコーヒー豆をブレンドしてくれる家庭用マシン「Flavor Craft AI」を開発する、みはたま株式会社について紹介しました。
New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。
みはたま株式会社のように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。