今回紹介する企業は、アソビュー株式会社(以下、アソビュー)です。同社はレジャー・体験予約サイト「アソビュー!」を中心に、家庭や企業、自治体に対して、幅広くサービスを展開しています。
興味深い点は、売上95%減からのV字回復を果たした点。コロナで危機的状況に陥りながらも、新たなビジネスチャンスを見出すことで、同社はわずか3ヶ月で前年比232%の成長を実現しました。
「生きるに、遊びを。」というミッションのもと、レジャー業界を発展させるアソビュー。この記事では、同社の企業沿革や事業内容、今後の展望などについてご紹介します。
沿革:レジャー業界の変革者として徐々に成長
アソビューは、元々「カタリズム株式会社」として、山野氏によって2011年3月に創業されました。2012年6月には、現在も主要事業であるレジャー予約サイト「アソビュー!」をローンチ。その後2015年3月に現在の「アソビュー株式会社」に社名を変更します。
同社は多額の資金調達を達成したり、経産省からJ-Startupに選出されたりするなど、徐々に成長を遂げました。2020年には新型コロナウイルスの影響で大きく追い込まれますが、新たなサービスが成功を収めて、さらなる売上拡大を実現します。
2023年11月には「アソビュー!」の累計会員数が1000万人を突破し、その事業規模はなおも拡大中です。
コロナ禍で売上が95%減少するも、新たなビジネスによりV字回復を実現
同社は新型コロナウイルスにより大きな打撃を受け、倒産の危機に追い込まれます。
売上95%減という苦境の中、廣田氏は「レジャー施設の方々が感染拡大の防止に苦労している」ことに注目。営業再開を支援するために、「時間帯ごとに入場を管理するシステム」の開発を決意します。
緊急事態宣言が解除される6月までにシステムを完成させるため、全エンジニアを同プロジェクトに投入。営業部のヒアリングも活用するなど、全社的にシステム開発にあたることで、わずか2ヶ月でのサービスリリースを実現しました。
また同社は少しでも売上を上げたいと考えながらも、市場シェア拡大を狙って「導入費用を無料にする」という大胆な作戦を敢行。この決断が功を奏して、3カ月後アソビューは前年比成長率232%という驚異的な記録を打ち出しました。
事業内容:「遊び」を中心に家計・企業・政府へサービス展開
アソビューは「遊び」を軸に、4つの領域でサービスを展開しています。
- 一般向け:遊び予約サイト「アソビュー!」
- 体験事業者向け:業務DXソリューション「ウラカタ」
- 一般・企業向け:遊び体験をプレゼント「アソビュー!ギフト」
- 地方自治体向け:観光誘客を支援「地域ソリューション」
遊び予約サイト「アソビュー!」
遊び予約サイト「アソビュー!」は、全国のレジャー施設の検索・予約が行えるプラットフォームです。遊びに関する情報が欲しい生活者と、お客さんに来てほしいレジャー施設などの事業者を、オンライン上でマッチングさせます。
本サービスの収益源は、お客さんが遊びを予約・購入した際の手数料。提携している事業者は、取引成立時の10~20%を手数料としてアソビューに支払っています。
決して安くない手数料にも関わらず、多くの事業者が本サービスを活用する理由は、導入メリットが極めて大きいからです。ITに明るくない事業者でも、24時間での予約対応・口コミによる集客を実現できるので、自社で広告・宣伝をするよりも効率的にお客さんを集められます。
今まで事業者の多くは、人員やIT知識の不足から、電話での予約対応も難しく、十分な集客を実現できませんでした。「アソビュー!」はそんな事業者の悩みを解決したのです。
業務DXソリューション「ウラカタ」
業務DXソリューション「ウラカタ」は、事業者の予約管理や事前決済、顧客分析を可能にするツールです。
予約管理や会計処理がシステム化されると、事務手続きにかかる手間や時間を大幅に削減できるので、事業者は本来の業務に集中することができます。余分だった人件費を抑えられるので、コストカットも実現できるでしょう。
また本ツールでは年齢や家族構成など、お客さんの属性ごとに分析を行うことも可能です。事業者は定期的にマーケティング戦略を見直すことができるので、売上の向上も実現できます。
遊び体験をプレゼント「アソビュー!ギフト」
「アソビュー!ギフト」は、個人・企業が第三者に遊び体験をプレゼントできるサービスです。
“モノ”ではなく”コト”を提供できる点が、本サービスの魅力。アウトドアが好きな人はもちろん、思い出づくりをしたい人に、最適なプレゼントを渡すことができます。
たとえば滋賀トヨタ自動車株式会社では、新車成約時の特典として本サービスを活用。従来のお肉や家電といった”モノ”ではなく、”コト”を通した思い出をプレゼントすることで、他社との差別化を実現できたと語っています。
個人同士がプレゼントを贈るのはもちろん、企業が販促として”コト”を活用できるのは、本製品の特徴といえるでしょう。
観光誘客を支援「地域ソリューション」
アソビューは「地域ソリューション」として、地方自治体に向けて、主に3つの支援を行っています。
1つ目は、体験商品の開発支援です。体験事業者を掘り起こしたり、体験商品をブラッシュアップしたりと、まずはお客さんが訪れるように地方独自の魅力を創出しています。
2つ目は、体験商品の販路整備です。体験商品を「アソビュー!」に掲載することで、自治体はオンラインでの販路を確保することができます。
3つ目は、体験商品の販売促進です。アソビューを用いてクーポンを配布したり、顧客データを収集・分析したりすることで、効果的なマーケティングを実現できます。
資金調達:着実に規模を拡大させ総額88億円の資金を獲得
アソビューは2014年3月に初めて2億円の資金を調達して以降、徐々に大きな資金調達を達成してきました。
中でも特筆すべきは、2021年12月に行ったシリーズEでの資金調達です。三井不動産らが共同運営する「31VENTURES-グローバル・ブレイン-グロースI事業」から、30億円もの資金調達を達成しています。大企業から協業先として認められており、アソビューの事業成長が伺えます。
最近2023年7月には15億円の資金調達を達成。拡大するインバウンド需要の対応、顧客利便性の更なる向上を目的に、既存サービスの強化や新規開発に注力するそうです。
市場規模:余暇市場は2022年に約63兆円まで回復
公益財団法人日本生産性本部が発表する「レジャー白書2023」によると、2022年の余暇市場の規模は62兆8,230億円。前年比12.7%の成長を達成しているものの、コロナ禍前の2019年の市場規模には遠く及んでいないのが実情です。
しかし、同社が実施したアンケートによると、仕事より余暇を重視する割合は年々上昇しています。このまま堅調に余暇を重視する人が多くなると、余暇市場のさらなる拡大が見込まれるでしょう。
将来展望:レジャー・観光業界のデジタルシフトを推進
アソビューの代表取締役である山野氏は、「レジャー・観光業界のデジタルシフトを更に推進し、観光立国日本の発展に向けて、貢献してまいります」と発言。
日本の観光・レジャー産業は需要が急回復する一方、人手不足や生産性の低さが課題となっています。こうした課題解決を図るべく、訪日外国人集客・顧客管理の対応・生成AIの実装によるUXの向上を目指すそうです。