
腸内細菌叢移植(FMT)を中心に進化するマイクロバイオーム創薬が、がんや炎症性腸疾患、パーキンソン病などの難治性疾患に新たな治療法をもたらしています。腸内細菌の乱れ(ディスバイオーシス)が多くの疾患の原因とされる中、腸内細菌叢の改善が治療の鍵となります。FMTは、患者の腸内環境を改善し、疾患の症状を軽減する効果が期待されています。また、マイクロバイオーム創薬の進展により、従来の治療法に頼らず、より効果的で迅速な治療が実現可能となり、医療の現場に革新をもたらすことができます。
メタジェンセラピューティクス株式会社とは

メタジェンセラピューティクス株式会社(以下メタジェンセラピューティクス)は、東京都虎ノ門に本社を構えるスタートアップ企業で、「マイクロバイオームサイエンスで、患者さんの願いを叶え続ける」をパーパスとして腸内細菌叢移植(FMT)とマイクロバイオーム創薬を中心に事業を展開しています。
また、順天堂大学、慶應義塾大学、東京科学大学発ベンチャーでもあり、大学発ベンチャーの強みである最先端の研究成果と高度な技術力を活かしてサービスを提供しています。
メタジェンセラピューティクスの価値観には、一貫して「患者中心の姿勢」と「科学への信念」が貫かれています。同社は、腸内細菌を基盤としたマイクロバイオームサイエンスで医療に革新をもたらし、患者に寄り添いながら迅速に治療を届けることを目指しています。そのために、科学への挑戦と探求心を持ち続け、チームとして互いに支え合いながら前進する姿勢を大切にしています。
さらに、ステークホルダーとの誠実でオープンな関係を築きながら、社会と積極的に関わり、成長と革新を楽しむ前向きな姿勢も特徴です。これらの価値観は「患者への貢献」「科学への献身」「チームワーク」「誠実な関係性」「継続的な成長」という5つの柱で表現されています。
事業内容:J-Kinsoバンク
「J-Kinsoバンク」とは
メタジェンセラピューティクスが運営する腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)バンクで、健康な人から便を提供してもらい、その腸内細菌叢を用いて患者に移植するための腸内細菌叢溶液を調製し、医療機関へ提供します。このバンクは、腸内細菌叢移植(FMT)や腸内細菌を利用した医薬品の研究開発を支える重要な基盤となります。
腸内細菌と疾患の関連性
腸内細菌の乱れ(ディスバイオーシス)は、がん、潰瘍性大腸炎、アレルギー、パーキンソン病など、様々な疾患と関連しています。例えば、大腸がんは食物繊維の摂取によってリスクが低下することが示唆され、腸内細菌がその発症に関与している可能性があります。欧米では、腸内細菌叢移植(FMT)が、難治性クロストリジオイデス・ディフィシル感染症(rCDI)の治療法として広く実施されており、今後さらに需要が高まると予測されています。
J-Kinsoバンクの仕組み
腸内細菌ドナー候補者は、まずウェブ問診を受け、その後医療機関で適格性検査を行います。検査を通過した人が正式に「腸内細菌ドナー」として登録され、その後、順天堂大学医学部附属順天堂医院で便を提供します。その便から腸内細菌叢溶液を抽出し、特性試験とスクリーニングを通じて安全性と有効性を確認した後、医療機関に提供されます。
腸内細菌ドナーの条件
腸内細菌ドナーとして登録するためには、18歳以上65歳以下で健康な日本在住者が対象となります。また、腸内細菌を用いた医療支援のために献便に協力する意思があり、ウェブ問診と適格性検査を通過する必要があります。適格性検査を通過した方が、腸内細菌ドナーとして正式に登録されます。
・医療サービス事業
腸内細菌叢移植(FMT)は、健康な人の便から腸内細菌を患者の腸に移植し、腸内細菌叢の乱れを改善する医療技術です。主に炎症性腸疾患(IBD)など、腸内細菌の乱れが原因とされる疾患に対して治療を試みます。FMTの社会実装には、患者とドナーを結びつける「腸内細菌叢バンク」の構築が必要です。メタジェンセラピューティクスは、順天堂大学と連携し、「腸内細菌叢バンク」を構築し、便の収集や細菌叢溶液の調製を支援しています。また、当社のCMOである石川は、順天堂大学でFMTの臨床研究を進めています。
・創薬事業
メタジェンセラピューティクスは、腸内細菌叢移植(FMT)を起点とした独自のマイクロバイオーム創薬に取り組んでいます。FMTを活用することで、臨床研究において安全性と有効性を事前に確認し、有効な腸内細菌種を絞り込むことができ、薬の開発成功確率を高めます。これは、通常の創薬に比べて、早期にヒトに対する介入を行えるため、短期間で薬を患者に届けることが可能です。また、日本初の創薬研究を目的とした腸内細菌叢バンクの構築も進めており、マイクロバイオーム創薬の実現を目指しています。
創業者メッセージ

私は、米国でバイオベンチャーを起業し、その後の失敗を経験した後、帰国してからはバイオ・ヘルスケア関連のベンチャー支援に従事してきました。2003年に終了したヒトゲノム計画を契機に、腸内細菌に関する研究が急速に進展し、腸内細菌叢の乱れ(ディスバイオーシス)が多くの疾患に深く関わっていることが明らかになりました。私はこの分野に強い興味を持ち、腸内細菌叢移植(FMT)の日本における第一人者である石川氏と共に、腸内細菌研究を推進するチームを結成しました。
私たちのチームは、FMTを社会実装するために尽力しており、腸内細菌叢の改善が疾患治療において革新的なアプローチとなることを確信しています。さらに、マイクロバイオーム創薬の日本初実現を目指し、患者に新たな治療法を提供できるように研究を進めています。FMTは、健康な人から患者に腸内細菌叢を移植し、腸内環境を改善することで、さまざまな疾患に対して有効な治療効果を発揮する可能性があります。
また、リバーストランスレーショナルな創薬アプローチを採用することにより、腸内細菌による治療効果を確認した後、迅速に医薬品として患者のもとに届けることができるようになります。私は、この分野の可能性に大きな期待を抱いており、マイクロバイオーム研究を通じて、医療の未来に革新をもたらすことができると信じています。(文章引用:公式ホームページ CEOメッセージ)
資金調達:シリーズAで総額17億円を調達

メタジェンセラピューティクスは、2023年6月15日にシリーズAセカンドクローズにて総額6億円の資金調達を実施し、これによりシリーズA総額で17億円、これまでの累計では19.3億円の資金調達を完了しています。
〈引受先〉
・スパークス・アセット・マネジメント株式会社
・日本ベンチャーキャピタル株式会社
・みずほキャピタル株式会社
・SMBCベンチャーキャピタル株式会社
〈背景と目的〉
近年、腸内細菌の研究が進み、医療への応用が広がっています。諸外国では「腸内細菌叢移植(FMT)」が治療法として実施され、2023年には米国で世界初の便由来経口製剤がFDAに承認されるなど、マイクロバイオーム創薬が活発化しています。
メタジェンセラピューティクスは今回の資金調達により、FMTの社会実装と日本発のマイクロバイオーム医薬品開発を加速します。具体的には、患者とドナーをつなぐ「腸内細菌叢バンク」を構築し、医療機関と連携しながら運用します。また、FMTの基礎・臨床研究を進めるとともに、生菌製剤を含む腸内細菌創薬プログラムを推進し、新たな治療法の開発を目指しています。
会社概要
会社名 メタジェンセラピューティクス株式会社
設立 2020年1月
事業内容 マイクロバイオームサイエンスを活用した創薬·医療事業
取締役 代表取締役社長CEO 中原 拓、取締役CMO 石川 大、取締役CSO 寺内 淳、社外取締役 安西 智宏、社外取締役 小林 泰良、社外取締役 林 隼
科学顧問 最高科学顧問 福田 真嗣、最高科学顧問 山田 拓司
本社所在地 山形県鶴岡市覚岸寺字水上246-2
東京事務所 東京都港区虎ノ門1丁目17-1 虎ノ門ヒルズビジネスタワー 15階
まとめ
本記事では、メタジェンセラピューティクス株式会社 について紹介しました。
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