【大手SIer発のベンチャー企業4選】

本記事では大手SIer発の新規事業、以下4社について紹介します。

  • 【株式会社パピレス】富士通
  • 【株式会社BOOSTRY】NRI・野村HD
  • 【EneTrack】SCSK
  • 【コエステ株式会社】東芝デジタルソリューションズ・AVEX

【株式会社パピレス】 富士通株式会社

天谷幹夫氏が、大手SIerである富士通株式会社の「社外ベンチャー制度」(富士通社内の起業支援制度)を利用して、平成1995年3月に創業した企業です。
電子書籍販売事業をメインとする企業で、2007年4月に代表サービスである『Renta!』を提供開始しました。

【Renta!】業界初の電子書籍レンタルサイト

(引用元:株式会社パピレスHP 『Renta!』

スマホやPCで、電子書籍のレンタルや購入ができるサービスです。
レンタルで気に入った作品は、購入後48時間以内であれば差額を支払うことで購入できるなどのサービスがあります。

【Renta!】のメリット

①延滞料の心配がない
レンタル期間が過ぎると電子書籍が自動で返却されるため、延滞料がかかりません。

②使えば使うほどお得になる
Renta!には3つの会員ランクがあり、レンタル・購入額によってランクが決まります。そのランクの高さに応じて、還元されるポイントが増えていきます。

事業立ち上げ背景

創業者の天谷氏は、パソコンの掲示板は書き込む人より読む人のほうが多いことに注目しました。
そこで、もっと面白いものを掲示板に載せれば有意義だと考え、出版物を掲示板に載せることを考えたのがきっかけです。
パピレスは1995年3月にフジオンラインシステムとして設立され、同年に電子書店サービスを提供開始しました。 そこから事業を拡大し、2007年からメインサービスとなっている「Renta!」を提供開始します。Renta!の対応作品ジャンルを、小説・実用書・写真集・漫画などへと拡大しました。
(引用元:All Artist Agency エンタメ 2021年7月16日記事掲載 株式会社パピレス・松井康子代表取締役社長が語る「新しいことに取り組むことの大切さ」) 

富士通の社外ベンチャー制度

富士通の社外ベンチャー制度は、社員の起業を支援する制度です。 この全社員と関係会社の社員からの応募を対象にしたベンチャー制度を、94年に導入し、これまでに10社が設立されました。

この制度でのベンチャー設立の条件は以下の4つです。

①IT関連の事業でなくてはならない

②起業家として、富士通は退社しなければならない

③起業家が資本金の51%を出資しなければならない

④3年目に単年度黒字、7年目に累積黒字化していること

これらの条件に加えて、制度を活用すると以下のメリットがあります。

企業情報

会社名    株式会社パピレス

代表者    松井 康子

本社所在地  東京都東京都千代田区紀尾井町3-12 紀尾井町ビル

設立年月日  1995年3月

資本金    4億1400万円

従業員数   137人(2023/3現在)

株式会社BOOSTRY 野村総合研究所×野村ホールディングス

(引用元:INCUBATION INSIDE 『【BOOSTRY】「資金調達の民主化」に挑む大企業発ベンチャー』
BOOSTRY(以下、BOOSTRY)は、大手SIerである野村総合研究所と野村ホールディングスが、ジョイントベンチャーで設立した企業です。 BOOSTRYはブロックチェーン技術を用いた有価証券などの権利を交換するプラットフォームの開発・提供を行う会社です。野村ホールディングスと野村総合研究所のジョイントベンチャーとして2019年に設立され(り)、次世代の資金調達モデルを目指すFinTech事業をおこなっています。 主力サービスであるibetを初め、金融×ITのサービスを数多く提供しています。

【ibet】デジタル化された権利の発行&取引を可能に

(引用元:BOOSTRY HP 『ibet』

ibetはさまざまな企業がネットワークに参加できる許可型のブロックチェーンネットワークです。
ibetは、取引市場の中間者としての役割を担っています。 ibet上で作成された権利、例えば会員権、社債、サービス利用権などはトークンと呼ばれ、ibet上で権利として標準化されています。 このデジタル上でのトークンのやり取りを介して、権利の売り手と買い手の当事者間で直接取引が可能になります。

【ibet】の強み

①工数削減

権利の売り買いをする際に仲介者を必要としないため、手数料の削減や時間短縮に繋がります。

②透明性の高さ

仲介者を必要としないこと、契約内容が自動で記録され誰でも閲覧可能であることなどから、データの改ざんや不正が起こりにくくなっています。

③いつでもどこでも取引が可能
デジタル上での取引であること、スマートコントラクトの活用で24時間利用できることが挙げられます。

事業立ち上げ背景

創業者の佐々木氏が、2017年頃から証券会社のフィンテックの新規事業に取り組んだことがきっかけだそうです。 その際に、佐々木氏はブロックチェーンを使ったP2P(ネットワークに接続されたコンピュータ同士がサーバーを介さずに直接通信する方法)の資金調達の仕組みを作りたいと考え、研究を進めていました。 証券業の役割である「挑戦者とその挑戦を支援したい投資家をつなぐこと」に則り、挑戦者がもっと簡単に資金調達を行い、新しい挑戦ができる仕組みづくり提供するようになりました。 2024年現在では、銀行、証券会社、事業会社、投資家などに向けて、8つのデジタルサービスを提供しています。

(引用元:博報堂WEBマガジン センタードット 2021年4月15日掲載『資金調達の“民主化”で資本市場はどう変わるのか BOOSTRY x HAKUHODO Fintex Base』

企業情報

会社名    株式会社BOOSTRY

代表者    佐々木 俊典

本社所在地  東京都千代田区岩本町3丁目9-2 PMO岩本町4F

設立年月日  2019年9月2日

資本金    23億5,000万円

EneTrack SCSK株式会社

(引用元:SCSK HP 『価値創出型ビジネスへの挑戦』

EneTrackは、大手SIerであるSCSK株式会社が新規事業として立ち上げた、I-REC(再生可能エネルギーにより発電された電気の価値を証書化したもの)のプラットフォームオペレーターサービスです。 EneTrackは、SCSK社内で、新規事業開発を目的にした社内コンテストから生まれました。

【EneTrack】煩雑なI-REC手続きを、WEB上でスマートに

(引用元:SCSK HP 『価値創出型ビジネスへの挑戦』EneTrack HP

EneTrackはWEB上で、I-RECの発行、移転、償却を一気通貫して行うことができるプラットフォームです。 EneTrackは、グローバルにみても数少ないI-RECの認定プラットフォームオペレーターです。 EneTrackのサービスを通じて、I-RECを利用する再エネ発電者と需要家企業に様々なメリットをもたらしています。

【EneTrack】のメリット

①需要家企業を探す必要がない オンライン上で発電事業者と需要家企業のマッチングを行うことができ、簡単にパートナーを見つけることができます。

②すぐに電力の販売ができる EneTrackによる手続きの簡易化で、I-RECの発行後にすぐに電力の販売が可能になります。

③価格を変更できる 再エネ発電者が設定したI-RECの販売価格は、販売状況に応じて上下させるといった対応が可能です。

事業立ち上げ背景

EneTrackは、SCSK社内の新規事業開発を目的にした社内コンテストから生まれました。

新規事業アイデアを事業化する際の後方支援チームである「事業化ガレージ」の支援を受けながら、開発に成功し、2023年7月からサービス提供し始めました。

企業情報

会社名    SCSK株式会社

代表者    當麻 隆昭

本社所在地  東京都江東区豊洲3丁目2−20

設立年月日  1969年10月25日

資本金    212億8,500万円

従業員数   15,328人(2023年3月31日現在)

【コエステ株式会社】東芝デジタルソリューションズ×AVEX

(引用元:コエステーション HPINCUBATION INSIDE 『【東芝】声のプラットフォーム「コエステ」への挑戦』

コエステ株式会社は、2020年2月にAVEXと東芝デジタルソリューションズのジョイントベンチャーとして、設立されました。その後2023年6月に株式会社エーアイに買収され、現在は株式会社エーアイの100%子会社です。

【コエステーション】人工音声で新たなコミュニケーションを

(引用元:ロボスタ 2020年2月6日掲載『タレントやキャラそっくりの声で話せる合成音声技術 エイベックスが新会社「コエステ」を設立 東芝デジタルソリューションズが出資』・コエステーション HPPR TIMES 2021年4月13日掲載『収録なしで音声コンテンツ・ナレーションが自分でつくれる「コエステーション エディター」 オンライン決済によるサービス開始』

コエステ株式会社の主力事業であるコエステーションでは、身近な人から有名人まで、多種多様な合成音声を生成し、様々なデバイスとつなげることができます。人間の声を人工的につくり、テキストを読み上げさせることで新たなコミュニケーションとして利用することができます。
例えば、絵本の読み聞かせを子供が安心するお母さんのコエで行うことができる、会議で発声できなくてもコエステーションで作成したコエで参加できる、身近に使用するロボットの声をお好みに調節することできるなど、多様な利用方法があります。 また、離れた家族や病気で声を失ってしまった方のコミュニケーションとしても有力だと考えられています。

【コエステ】の強み

(引用元:ロボスタ 2020年2月6日掲載『タレントやキャラそっくりの声で話せる合成音声技術 エイベックスが新会社「コエステ」を設立 東芝デジタルソリューションズが出資』)

コエステでは、コエの微調整をすることができます。例えば、喜び・怒り・悲しみなどの感情のパラメーターや、抑揚、話速などのパラメーターを調節することで多彩な表現が可能です。

また11言語にも対応可能で、幅広い表現力が強みです。日本語に加え、英語、中国語やドイツ語など多様な言語に対応ができます。例えば、アニメや映画を原作の声のまま海外展開するなども可能になると考えられます。

事業立ち上げ背景

コエステーションという事業は、元株式会社東芝の金子祐紀氏が企画・構想して立ち上げました。元々、東芝の40年以上におよぶ研究開発から生まれた音声合成技術を活用した新規サービスとして2016年から開発がスタートしました。 その後、コエステは2018年4月にスマートフォンアプリをリリース以降、順調にユーザー数を増やし続けています。
(引用元:AVEX INTERVIEW 『コエステーションが開拓する「エンタメ×声」の可能性 エイベックス×東芝が推進するオープンイノベーション』

企業情報

会社名    株式会社エーアイ

代表者    廣飯 伸一

本社所在地  東京都文京区西片1-15-15 KDX春日ビル10F

設立年月日  2003年4月1日

資本金    1億円(2023年6月現在)

従業員数   53人(2024年4月現在)

まとめ

今回は、以下4つのSIer発のベンチャー企業を紹介してきました。

  • 【株式会社パピレス】富士通
  • 【株式会社BOOSTRY】NRI・野村HD
  • 【EneTrack】SCSK
  • 【コエステ株式会社】東芝デジタルソリューションズ・AVEX

近年ではSIerだけではなく多様な業種・企業で、社内起業制度や、起業支援が充実しています。 そのような制度から、数々のベンチャー企業が生まれ、活躍中です。 New Venture Voiceでは、そんなベンチャー企業について紹介しているので、ぜひご覧ください。

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