最終更新日 25/04/16
国内スタートアップ

使わないモノを価値に変えるシェアリングサービス 【株式会社アリススタイル】

ITマッチングプラットフォーム生活
Share this post
(引用:公式HP

大量生産・大量消費がもたらす環境負荷や、購入前に製品を試せない不便さが社会課題となる中、「株式会社アリススタイル(以下、アリススタイル社)はモノのシェアリングサービスによって新たな解決策を提示しています。2016年に創業された同社は、「モノの貸し借りを通して『体験』が平等に提供される社会を作る」ことを企業理念に掲げ、使われていないモノを必要とする人に届けるプラットフォームを運営しています。

従来は「たくさん使って、たくさん捨てる社会」が当たり前でしたが、アリススタイルはそれを変えるべく、シェアリングエコノミーを活用した持続可能で便利なサービスを展開しています。同社のサービスは一般消費者にとっては手軽でお得な新しい消費スタイルとして注目され、ビジネス面では大手企業との連携や投資も進む急成長スタートアップです。

事業内容

アリススタイルは主に「アリススタイル」「アリスプライム」「アリストラベル」の3つのサービスを提供しており、それぞれ独自の特徴でユーザーのニーズに応えています。

CtoCシェアリングプラットフォーム「アリススタイル」

(引用:東北電力フロンティア

「アリススタイル」は個人間および企業と個人間でモノの貸し借りを仲介するCtoCシェアリングプラットフォームです。使わない家電や旅行用品、最新の美容機器などを貸したい人(または企業)と、使ってみたい人をアプリ上でマッチングし、レンタル予約から発送連絡、メッセージのやり取りまでサービス内で完結します。貸し手・借り手双方が安心して利用できるよう、商品には物損・盗難保険が適用されるなど安全管理にも配慮されています。

借り手のメリットとして、購入を迷っている商品を試せる点や、気に入ればそのまま購入できる「借りて買える」仕組みも導入され、新品同様の最新アイテムから中古の掘り出し物まで多彩な商品に出会える楽しさが特徴です。実際にサービス開始からユーザー数は順調に増加し、現在では会員数200万人を超える規模のプラットフォームへと成長しています。使わないモノを有効活用したい貸し手にとっても、眠っていた品物が収入源になり人の役に立つことで「捨てずに済む」利点があります。環境にも優しく、ユーザー同士で体験価値を共有できる点で注目を集めるサービスです。

サブスクのシェアリングサービス「アリスプライム」

(引用:PR TIMES

「アリスプライム」月額定額料金で対象商品を“交換し放題”でレンタルできるサブスクリプション型のシェアリングサービスです。2022年に提供開始されると、話題の最新家電や美容家電など800種類以上の商品を月額2,980円(税込)で好きなときに好きなだけ利用できる画期的なプランとして注目されました。

利用者は借りたい商品を選び、返却期限なく手元に置いて楽しんだ後、飽きたら別の商品に何度でも交換可能です。往復の送料もすべて無料で追加費用は一切かからないため、定額でさまざまな製品を試せるお得さと手軽さが支持されています。例えば高価な調理家電や美容機器も購入前に十分試用できるほか、常に最新モデルを使い続けたいガジェット好きにも最適なサービスです。こうした独自の提供価値によりアリスプライムはユーザー層を拡大し、サービス開始以降順調に会員数と取扱アイテム数を増やしています。

また、蓄積された大量のユーザーレビューをAIで解析し製品選びを支援する機能を導入するなど、利便性向上のための技術開発にも積極的です。アリススタイル社はこの定額制モデルを他企業と連携したOEM提供にも展開しており、トヨタやJALなどと組んだ新サービスも登場するなど、プラットフォームのビジネスモデルを拡張しています。

手ぶらで旅行を実現するBtoB向けシェアリングサービス「アリストラベル」

(引用:PR TIMES

「アリストラベル」“手ぶらで旅行”をコンセプトに、旅行先の宿泊施設や拠点で便利なアイテムをレンタル提供するBtoB向けシェアリングサービスです。2019年末にサービスを開始し、現在ではホテルや旅館の客室に最新家電や美容機器を設置して宿泊客が自由に使えるようにする取り組みなどを全国で展開しています。

例えば大分のホテル日航や徳島の古民家宿泊施設では、プロ用のヘアドライヤーや高級トースター、プロジェクター等を客室内レンタル品として配置し、旅行者は自分で持参しなくても現地で快適に利用可能です。これにより旅の荷物を減らせるだけでなく、普段試せない家電を旅先でじっくり体験できる付加価値を提供しています。アリストラベルはJR東日本やJR四国との提携を通じて鉄道旅行向けにもサービスを拡大しており、日本航空との協業「JALでkariteco」などインバウンド需要への対応も進めています。

さらに2025年には「トラベルサービス」に関する技術特許をインドネシアでも取得し、アジア市場での事業展開を見据えるなどグローバル展開にも意欲を示しています。旅行先で手軽に質の高いアイテムを利用できるアリストラベルは、観光客の満足度向上と荷物削減による快適な旅の実現に寄与するサービスとして期待されています。

資金調達:シリーズEにて総額10億円の資金調達を実施、累計42億に

(引用:PR TIMES

アリススタイル社は創業以来、複数回の資金調達に成功しており、累計調達額は数十億円規模に達しています。直近では2023年6月にシリーズEラウンドのファーストクローズとして総額10億円を調達し、新規投資家に日本郵政キャピタル株式会社JR東日本スタートアップ株式会社を迎えました。これにより累計調達額は42億円となり、大企業系CVCを含む多様なステークホルダーからの支援を確保しています。

既存株主のイノベーション・エンジン株式会社なども追加出資しており、事業の成長性に対する市場の期待がうかがえます。資金使途としては物流網の強化や企業連携の加速に充てる計画で、シェアリングサービスを生活インフラの一部にするべく事業拡大を図っています。また同社は2025年2月には株式投資型クラウドファンディング(イークラウド)でも資金調達を実施し、募集開始直後に目標額を大きく上回る申し込みを集めました。

(引用:PR TIMES

創業者で代表取締役社長の村本理恵子氏はマーケティング分野で長年の経験を持ち、還暦を過ぎてから起業した経歴でも知られます。村本氏はその実績が評価され日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2021を受賞するなど話題を呼び、同社はシニア女性起業家の成功例としても注目されています。アリススタイル社は「2028年のIPO」を目標に掲げ、さらなる事業成長と社会実装に向けて前進している最中です。

市場規模:シェアリングエコノミー市場、2032年度に約15兆円まで拡大する見込み

(引用:SHARING ECONOMY

アリススタイルが挑むモノのシェアリングサービス市場は、近年急速に拡大しています。一般社団法人シェアリングエコノミー協会の調査によると、2022年度の日本のシェアリングエコノミー市場規模は約2兆6,158億円に達し、過去最高を記録しました。さらに今後も成長が見込まれ、2032年度には最大約15兆1,165億円規模に拡大する予測が発表されています。

この中には民泊やカーシェア等も含まれますが、アリススタイルが手掛ける「モノのレンタル」領域も重要なカテゴリーです。実際、家電や家具のサブスクリプションレンタルサービスが若年層を中心に普及し始めており、レンティオやCLASなど競合サービスも台頭するなど市場全体が活性化しています。消費者意識も所有から利用へと変化しつつあり、「必要なときに借りる」ライフスタイルが徐々に定着してきています。また観光分野でも2023年の訪日外国人客数は約2,506万人とコロナ前の80%まで急回復し、今後のインバウンド需要は、本格回復・拡大の予測。こうした背景から、旅行先レンタルサービス「アリストラベル」の潜在市場も大きく、手ぶら旅行ニーズの高まりと相まって成長余地は非常に大きいと言えます。

さらに、循環型経済(サーキュラーエコノミー)への関心も世界的に高まっており、国内関連市場規模は2020年時点の約50兆円から2050年には120兆円超に達するとの推計もあります。物のシェアによるリユース・廃棄削減はSDGsの目標達成にも寄与することから、行政や企業からの支援も受けやすい分野です。以上のように、アリススタイルが属する市場は今後長期的に見ても拡大が期待されており、その成長の波に乗る同社の動向はビジネスパーソンにとっても注目に値します。

会社概要

  • 会社名: 株式会社アリススタイル
  • 所在地: 東京都港区南青山2-5-7 バイオフィリアプレイス南青山4F
  • 設立: 2016年6月
  • 代表者: 代表取締役社長 村本 理恵子
  • 公式URL: https://www.alice.style

まとめ

本記事では、「ちょっと貸してを、もっとみんなで」を合言葉に、シェアリングエコノミーを活用した持続可能で便利なサービスを展開する株式会社アリススタイルについてご紹介しました。

同社はモノの貸し借りを当たり前にすることで消費の在り方を変えようとしており、不要な所有を減らして必要な時に必要な物だけを使うという新しい消費スタイルを提案しています。それは利用者に経済的なメリットをもたらすだけでなく、社会全体では廃棄物削減や資源の有効活用といった持続可能性の向上につながっています。

今後は調達した資金と大手企業との協業をテコに、更なるサービス拡充や利便性向上、新規ユーザー獲得が進むでしょう。アリススタイルが創り出す「借り放題」で豊かな体験を享受できる社会は目前まで来ており、今後もその動向から目が離せません。

New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。

株式会社アリススタイルのように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、ぜひ関連記事もご覧ください。

目次に戻る

タイトルとURLをコピーしました