
近年、SNSやインターネット上で、生成AIによるディープフェイク技術を使った偽情報の拡散が問題視されています。また、危険なバイト募集(通称「闇バイト」)のような事案も増加しており、特に若年層への影響が深刻です。
これらの問題に対し、情報の正確性を見極める力がますます重要になる中で、学校で行われるメディアリテラシー教育だけでは十分に危険性が伝わっていません。言葉での説明だけでは実生活に生かすのが難しいため、より実践的なアプローチが求められているでしょう。
このような背景の中、株式会社Classroom Adventure(以下、Classroom Adventure)は、メディアリテラシーの向上を目指した新たな教育プログラムを提供しています。Classroom Adventureは、慶應義塾大学の現役学生が立ち上げたEdtechスタートアップで、インターネットやSNSでの情報を正しく判断する力を養うための教育サービスを提供しています。
その代表的なプログラムが、「レイのブログ」や「レイの失踪」といった、実践的かつ没入感のある教育体験を通じて、メディアリテラシーを学ぶことができる内容です。これにより、学んだ内容を実際にインターネットで活用し、社会問題を解決するためのスキルを育むことができます。
本記事ではそのプログラムの詳しい内容やClassroom Adventureの実績などについて紹介していきます。ぜひ、最後までご覧ください。
事業内容①:謎解き型メディアリテラシープログラム「レイのブログ」

(引用:公式HP)
「レイのブログ」は、謎解きをしながらメディアリテラシーを学べる革新的な教育プログラムです。ストーリーと実際のインターネットを駆使した没入型の謎解きゲームを通じて、参加者はプロのファクトチェッカーでさえ難しい、生成AIによるフェイクなどの最新の誤情報・偽情報を見抜く能力を自然と身につけていきます。
没入感を得られる物語の世界

レイのブログは「学生」が開発した「学生のため」のプログラムです。物語は教室の中から始まり、生徒たちは謎の人物「レイ」からの挑戦を解いていきます。没入感を高めたプログラムにより、生徒たちの参加度を最大化することが可能です。
情報リテラシーのプロセスを身に着けられる

「レイのブログ」には、Classroom Adventureのチームが培ってきた正しく情報を疑う力と最新のスキルが含まれています。実際にインターネットを駆使して検証作業を行うため、「疑う」「調べる」「判断する」という情報リテラシーの基本ステップを楽しみながら習得することが可能です。
また、生徒たちがインターネットの海の中で情報を疑うクリティカルシンキング、そして自らの力で情報を判断するという最新のスキルを学べるように設計されています。
最大の特徴:最先端の情報検証手法を学べる

このプログラムの大きな特徴は、実際にファクトチェックを行う専門家が開発に関わっており、最先端の情報検証手法を学べる点です。
ゲーム内では、生成AIを使って作成された偽の画像や動画を見抜く方法、ジオロケーションを活用して位置情報を確認する技術、一次情報を追跡して真実を明らかにする方法など、実際の情報リテラシーに役立つスキルを実践的に学べます。これにより、ただの座学では得られない、実践的で深い知識とスキルを身につけることが可能です。
「レイのブログ」は、2025年3月時点で既に世界6カ国で8000人以上の参加者を迎えており、その取り組みは国際的にも注目を集めています。若者たちが情報の真偽を見極める力を養うこのプログラムは、今後ますます重要な教育的価値を持つと考えられています。
興味がある方は、こちらをご覧ください。
事業内容②:「闇バイト」を追体験するリテラシープログラム「レイの失踪」

また、Classroom Adventureは、若者が直面しやすい社会問題の1つである、闇バイトの危険性についても学べるプログラム「レイの失踪」を提供しています。このプログラムは、実際に「闇バイト」に加担してしまう危険性を追体験しながら、そのリスクを理解することを目的としています。
闇バイトのリアルを学ぶ

「レイの失踪」では、どんな人がターゲットになるのか、最新の闇バイトの最新の手口などの専門的な知識を実際の事例を見ながら学ぶことが可能です。闇バイトに関する知識を蓄えることで闇バイトの恐ろしさや危険性を身近に感じることができ、防犯意識を向上させられます。
実際に体験後のアンケートでは、95%の生徒が「闇バイトに対する知識がついた」と答え、100%が「今後はSNSでの求人に気をつけたい」と回答。また「気軽に返したDMが犯罪につながっていく様子を見て、鳥肌がたった。」「TikTokで怪しい求人が送られてくることがある。あまり気にしていなかったが今思えば闇バイトだったのかもしれない。」などとコメントしており、「レイの失踪」を通して闇バイトに対する防犯意識が高まったことがうかがえます。
自分で闇バイトを見分ける力を養う

さらに、知識を得るだけでなく、自分自身で闇バイトを見分ける力を養うことが可能です。参加者は、実際の被害事例をもとにした状況を疑似体験し、「なぜ騙されてしまうのか」「なぜ抜け出せないのか」、そして「何をすべきか」を学べます。この体験を通じて、若者たちが闇バイトに巻き込まれないよう、情報リテラシーを高めることが可能です。
ディップ株式会社が2023年12月に実施した闇バイトに関する高校生を対象にした調査によれば、ネット上での危険な求人情報を判断できたのは全体の23%に留まりました。つまり、現役高校生の8割が闇バイトを見分けられていません。そのためClassroom Adventureは、「レイの失踪」を通して学生が闇バイトを見分ける力を養い、闇バイトによる被害を減らすことを目指しています。
気になった方はこちらをご覧ください。
事業内容③:ユースファクトチェック選手権

Classroom Adventureは、ファクトチェックを学びながら競い合うイベント「ユースファクトチェック選手権」を主催しています。この大会は、誤情報や偽情報が日常的に流通する現代社会において、若者が情報を正しく判断するためのスキルを養うことが目的です。そのため、実際の情報を扱いながら、チーム対抗戦で速さと正確さを競います。元々はGoogle社が2021年より開催してきましたが、今回はそれを引き継ぐ形として開催。
この大会の特徴は、誤情報や偽情報に関するセンシティブなテーマを、安全かつ教育的な環境で学べる点です。大会形式の本イベントは若者が情報のリスクから逃げるのではなく、情報リスクに立ち向かい、正しく情報と向き合うためのスキルを養うことができます。また、リアルタイムで行われるチーム対抗戦を通じて、速さと正確さを競うことで、情報を迅速かつ正確に判断する能力も身につけられます。
ファクトチェックの基本レクチャーから世界大会までを3日程にわけ、開催されるため、初心者の方でも気軽に参加することが可能です。
興味のある方はこちらをご覧ください。
自治体や学習塾との連携と今後の展望

Classroom Adventureは、2025年3月13日、学習塾「創英ゼミナール」を運営する株式会社創英コーポレーション(以下「創英ゼミナール」)と連携し、独自開発した謎解きゲーム型メディアリテラシー教育プログラム「レイのブログ 」を創英ゼミナール全131校、約7000人の塾生に提供しました。
大手学習塾との連携は今回が初となりますが、2025年3月7日には「レイの失踪」が兵庫県と連携しています。これにより、全国規模での展開が進み、より多くの学生が情報リテラシーを学ぶ機会を得ることができます。
今回の「創英ゼミナール」との連携を皮切りに、Classroom Adventureは全国の学習塾や教育機関との協力を拡大していく計画です。具体的には、2025年度内に累計10万人以上の学生にプログラムを提供することを目指しています。
実績と受賞歴:「Tokyo Startup Gateway 2024」では最優秀賞を獲得

株式会社Classroom Adventureは、これまでに数々の重要な実績を上げており、業界内外から注目されています。
2024年には、朝日新聞社主催の「大学SDGs Action! Awards」でグランプリを受賞し、また東京都主催のスタートアップコンテスト「Tokyo Startup Gateway 2024」では最優秀賞を獲得しました。これらの受賞は、同社の社会的意義と革新性が広く認められている証と言えるでしょう。
さらに、Classroom Adventureは情報リテラシー分野でも高い評価を受けています。総務省の「デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会」や、Google主催の「Trusted Media Summit 2023」など、国際的な場でもその活動が注目され、情報の信頼性を確保するための取り組みが評価されています。
これらの成果を背景に、Classroom Adventureは今後さらに事業を拡大し、教育業界におけるリーダーとして、特に若者の情報リテラシー向上に貢献し続けることが期待されています。
企業概要
- 企業名:株式会社Classroom Adventure
- 代表者:堀口野明
- 設立:2024年9月
- 所在地: 東京都中央区新川1-7-2
- 公式HP:https://www.classroom-adventure.com/ja
まとめ
本記事では、株式会社Classroom Adventureについて紹介しました。
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