日本では夏場になると「ペットボトル症候群」が話題になる。水分を補給しようと、ジュース・スポーツ飲料などの糖類が入った飲み物を摂取し続けることにより、高血糖状態になってしまうのだ。
しかし、ジュースをはじめとした清涼飲料水は、今や嗜好品の域を超え、日常的な存在となっている。「健康のためにジュースをキッパリと止める」という方法は、もはや現代人にとって難しいものだろう。
しかし、そんな問題を解決してくれるスタートアップがイスラエルから誕生した。甘さ・香りを損ねることなく、糖分だけをカットするという技術を開発する「BlueTree Technologies(以下、BlueTree)」だ。
事業内容:ジュースや乳製品から砂糖を取り除く技術を提供
BlueTreeはジュースや乳製品から砂糖を選択的に取り除くことができる技術を開発しており、同技術をさまざまな飲料メーカーに提供している。また飲料メーカーの生産ラインに簡単に組み込めるため、既存の設備を活かせる点も大きな特徴だ。
2024年5月にはアメリカ食品医薬品局(FDA)の食品安全基準を満たしたと発表しており、ラテンアメリカや東南アジア、ヨーロッパの大手飲料メーカーとも既に話し合いを進めているそう。
独自の技術で味はそのままに糖類を選択的に除去する
BlueTreeは限外濾過・吸着を組み合わせた独自の方法で、物理的に糖類を取り除く。濾過に用いるフィルターを調整することで、飲料メーカーのニーズに合わせて、特定の糖類や量を除去することが可能だ。
従来はジュースに含まれる糖類の化学構造を、酵素によって変化させることで糖類を除去していた。しかし、これでは酵素や副産物の影響で風味が損なわれてしまう。
一方で、BlueTreeの技術はあくまでも「飲み物から糖分を取り除く」ので、添加物を加える必要がない。余計なものを加えない安心感や、栄養素・風味を損なわない点が同社の大きな魅力といえるだろう。
また取り除いた糖類は別の製品に活かしたり、他社へ販売したりすることも可能なため、飲料メーカーはさらなる収益を得られるはずだとCEOのMichael Gordonは述べる。
二糖類を主に除去することで甘みを維持
BlueTreeは選択的に糖類を除去できるが、主にショ糖や乳糖といった二糖類を除去する。
実は二糖類は単糖類よりも甘さが控えで、たとえば飲み物に含まれる二糖類を30%削減したとしても甘さが3割減るというわけではない。そこで二糖類をメインに除去することで、甘さを維持しながら、糖分を下げることに成功しているのだ。
しかし、あまり糖分を減らすと口当たりに変化が生じてしまうので、糖分の調整については飲料メーカーが考えるべきだと述べている。たとえばオレンジジュースであれば、味を損なわずに最大50%の糖類を簡単に除去できるそうだ。
資金調達:2024年7月に230万ドルを獲得
BlueTreeは2024年7月にシリーズAラウンドとして約230万ドルを調達した。
同社は今回の資金を使用して、世界中の飲料メーカーとさらに取引を進める予定だ。
<調達時期>
2024年7月 シリーズAラウンド
<調達金額>
226万ドル
<出資者>
- OurCrowd (イスラエルのベンチャーキャピタル)
- Sucden Ventures (フランスの企業Sucres et DenréesのVC部門)
<資金調達の目的>
- グローバル市場への拡大
- 製品のさらなる研究開発
ウェルネスの市場規模は2027年に8.47兆ドルに到達
ウェルネス(Wellness)とは、健康の解釈をさらに広げた概念だ。心身を健康にするヘルスケアとは異なり、肉体的・精神的・社会的に満たされた状態を維持することを指す。
Global Wellness Instituteの調査によると、2022年のウェルネス市場の規模は5.6兆ドル(約600兆円)。日本のウェルネス市場の規模は約45兆円であることから、世界のウェルネス市場には多くのチャンスがあるといえる。
また同調査によると、2027年まで世界のウェルネス市場は年平均成長率8.6%で拡大すると予測され、2027年には8.47兆ドルに達すると見込まれている。
企業概要
会社名:BlueTree
代表取締役:Michael Gordon (CEO)
設立:2020年
所在地:キリヤト・シュモナ、イスラエル
公式HP:https://bluetree-tech.com/
まとめ
本記事では、砂糖を選択的に取り除くことができる技術を開発するBlueTreeについて紹介した。
New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介している。
BlueTreeのように、海外の面白い企業についてまとめているため、関連記事もご覧いただきたい。