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現在、地球温暖化による気候変動の影響で、世界中で水不足や干ばつが深刻化し、多くの農家が農作物の生育不良に直面しています。このように水不足を中心とした環境問題が広がるなか、解決策として注目されているのが、「EF Polymer株式会社」(以下、EF Polymer) の革新的な技術です。
EF Polymerは、オレンジやバナナの皮などの廃棄食材を活用し、100%自然由来の超吸水性ポリマー「EFポリマー」 を開発。従来の石油由来ポリマーとは異なり、環境負荷を抑えながら、農業の水資源管理を効率化し、持続可能な農業の実現を支援しています。
本記事では、EF Polymerの独自技術や製品の特徴、そしてその可能性について詳しく紹介します。
事業内容:100%自然由来の超吸水性ポリマー「EFポリマー」
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EF Polymerは、オレンジやバナナの皮など、作物の可食部以外をアップサイクルして生まれた100%自然由来の超吸水性ポリマー「EFポリマー」を製造しています。
吸水性ポリマーとは、自重の数十倍もの水分を吸収できる高分子素材のことです。水分を保持しつつ、必要に応じて吸収・放出する機能を持ち、農業や衛生用品など幅広い分野で活用されています。しかし、従来の吸水性ポリマーはアクリル酸やアクリルアミドを原料とした石油化学製品であり、環境負荷の高さが課題でした。
しかし、「EFポリマー」は天然由来の成分を原料としているため、環境への負荷が少ないです。この環境負荷の低さが評価され、現在、多くの関心を集めています。ではそのように環境にやさしい吸水性ポリマーはどのようにして作られているのでしょうか。
最大の特徴:サスティナブルな循環モデルを実現
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「EFポリマー」の最大の特徴は、その製造過程にあります。
「EFポリマー」は、果物の皮や搾りかすといった食品廃棄物を原料として製造される100%オーガニックの超吸水性ポリマーです。農地に適用することで、水不足などの厳しい環境下でも生産コストを抑えながら収穫量の向上を実現します。
さらに、この農地で育った作物の残渣を再びアップサイクルし、新たな「EFポリマー」の製造に活用する循環型の仕組みを構築しています。つまり、環境に配慮しながら製造し続けることができるのです。
EFポリマーの5つの特徴
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EFポリマーには主に5つの特徴があります。
特徴1. ケミカルフリーで環境負荷を低減
化学物質を使わないケミカルフリーな素材であるため、人体や自然への害が少ないです。また果物の皮など作物の食べられない部分が原料となっているため、廃棄物の削減にもつながります。
特徴2. 優れた吸水性と水分放出機能
「EFポリマー」は自重の約50倍の水を吸収し、必要に応じて水分や養分を作物に供給する機能を持ちます。これにより、水資源の有効活用が可能になり、乾燥地域の農業支援にも寄与します。
特徴3. 土壌の健全性を保持
土壌の保水力・保肥力を向上し、作物が必要な水分や栄養素をゆっくりと提供するため、土壌の健全性を保持することが可能です。
特徴4. 100%オーガニック・完全生分解性
「EFポリマー」は、有機JAS資材リストおよびECOCERT INPUTの認証を取得しています。これらの認証は、オーガニック農業に適した資材として国際的に認められていることを示しています。また、使用後は約12ヶ月で完全に生分解されるため、土壌や環境に悪影響を与えません。
特徴5. 従来の吸水性ポリマーより環境にやさしい
従来の吸水性ポリマーとの違い
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上記で説明したように、従来の吸水性ポリマーが石油由来であるのに対し、「EF ポリマー」はオレンジの皮などの作物残渣からできています。そのため、「EF ポリマー」は約12ヶ月で完全に生分解するのに対し、従来の吸水性ポリマーは分解しません。有機認証の有無から見ても、EF ポリマーは従来の吸水性ポリマーに比べ環境に配慮していることがわかります。
また、「EF ポリマー」には使用するうえで多くの利点があります。
「EF ポリマー」を使う4つのベネフィット
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1.環境にやさしい「完全生分解性」
オレンジの皮などの作物残渣を原料にしており、完全生分解性を有します。ポリマーとして吸水・放出の効果は6ヶ月間持続し、その後は微生物に分解されて約1年かけてゆっくりと土に還るため、環境にやさしいです。
2.農業に最適な吸水力性能
「EFポリマー」は、農業に最適な吸水機能を有します。自重の約50倍の水分を吸水し、ゆっくりと作物の根に放出します。水や肥料分が土壌で流れ出るのを防ぐことができるため、作物の成長のサポートが可能です。
3.有機物ならではの土への働き
EFポリマーが土壌中で分解する過程で微生物を活性化し、健康で健全な土づくりをサポートします。ポリマーが吸水や放出を繰り返すことで、土壌に気相ができ、団粒構造の発達を促します。
4.資源を効率活用して収量アップ
灌水や施肥の頻度が減るので栽培コストの大幅な削減が可能です。また、土壌の保水力と保肥力が向上することで作物の成長が促進され、収穫量のアップにもつながります。
このように「EFポリマー」には使用することによる利点がたくさんあります。
また、ここまで「EFポリマー」の農業での使い方を見てきましたが、それだけではなく様々なものに応用することが可能です。
「EF ポリマー」の応用性
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このように超吸水性ポリマーはもともと農業だけでなく、画像のように赤ちゃんの用のおむつや生理用ナプキン、シャンプーやリンスなど様々なものに応用して使用されていたため、「EFポリマー」も多くの場面で応用することが可能です。
またそのため、EF Polymerは農業分野に加え、既存の超吸収水性ポリマーが利用されている製品のグリーントランスフォーメーション(GX)を支援しています。
グリーントランスフォーメーションとは、温室効果ガスの排出量削減を目的に、温室効果ガスを生み出す化石燃料から、クリーンな太陽光発電や風力発電などが中心の、産業構造へ転換する取り組みのことで、「EFポリマー」の応用がその支援につながるとEF Polymer は考えています。
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その応用例の一つとして挙げられるのが、土に返せるオーガニック保冷剤「サイクール」です。
従来の保冷剤は石油由来のポリマーが使用されていますが、廃棄する際に多くのエネルギーを要することから、環境負荷の高さが課題となっていました。
しかし「EFポリマー」を原料として使うことで、完全生分解性を有する保冷材の中身を製造することができるため、保冷剤として使用した後は観葉植物の土などに撒くことが可能です。このように土の保水性を向上させることができるサイクールは、資源循環型の新しい形の保冷剤であり、既に国内の大手流通企業に採用され、実店舗で配布されています。
また、食品に粘度をつけるために使用される食品添加物である増粘剤も、人や環境にやさしい、完全生分解性のものが開発されており、今後も「EFポリマー」の応用によってグリーントランスフォーメーションを支援していくことが期待されます。
EF Polymerの公式HPはこちらから
EF ポリマーの公式オンラインストアはこちらから
気になった方は是非チェックしてみてください。
資金調達:シリーズAラウンドで5.5億円の資金調達を実施
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100%オーガニックの超吸水性ポリマーの開発を手がけるEF Polymerは2023年5月10日、シリーズAラウンドとして5.5億円の資金調達を完了しました。EFポリマーは今後、事業の成長を加速させ、エコフレンドリー・ポリマーの普及を通し「持続可能な農業の実現」を目指します。
EF Polymerは、今回の資金調達の目的を、企業の成長拡大を見据えた事業の土台構築としています。EFポリマーの生産能力の拡大とR&Dの強化に主軸を置き、今後大幅に拡大が見込まれるグローバル需要に応える体制を整理する見込みです。また、昨今農業以外のセクターにおいても、環境に優しい自然由来のポリマーへの注目が高まっていることから、他分野での応用を想定した研究開発力確立することを目指しています。
EFポリマーの創業兼CEOのナラヤン・ラル・ガルジャールは、
「EFポリマー創業から3年が経ち、今まででポリマー総販売が100トンを超え、約1.2万人にポリマーを届けるというマイルストーンを達成することができました。こうした実績を重ねる度に、世界中の農家の方々が抱える干ばつ、水や肥料代の高騰などの課題解決に貢献ができているという事に喜びを感じます。今回の資金調達を経て、EFポリマーはインド・ラージャスターンと沖縄のメンバーが一丸となり、今後さらに農家の方々に寄り添う製品開発とサービスの提供を心掛けたいと思います。」
と述べています。
市場規模:高吸水性ポリマー市場、2036 年に市場収益約340億米ドルに
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Research Nester の市場調査分析によると、高吸水性ポリマー市場の市場規模は 2023 年に約 120 億米ドルと記録されており、2036 年までに市場の収益は約 340 億米ドルに達すると予測されています。 さらに、市場は予測期間中に最大 9% の CAGR で成長すると見られています。
また、市場拡大の原因としてが挙げられるのが、高齢者人口の増加です。また尿失禁に悩む人の数も市場の成長に大きく寄与すると予測されています。実際、米国の男女 25 ~ 30%が尿失禁を発症しており、日本でも少子高齢化に伴い、使い捨ておむつの需要が増加していることから、高吸水性ポリマーの需要は世界的にも高まっています。さらに、高吸水性ポリマー市場に関する洞察によると、アジア太平洋地域は、農業生産と農業の実践の拡大により成長する予想です。
「EFポリマー」は現在農業へのアプローチが中心ですが、紙おむつなどの他の製品への応用にも積極的な態度を見せているため今後さらに事業を拡大していくことが期待されます。
企業概要
- 企業名:EF Polymer 株式会社
- 代表者:ナラヤン・ラル・ガルジャール
- 設立:2020年3月30日
- 所在地: 〒904-0495 沖縄県国頭郡恩納村谷茶1919-1 Innovation Square Incubator
- 公式HP:https://efpolymer.jp/
まとめ
本記事では、EF Polymer 株式会社について紹介しました。
New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。
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