コーヒーは現代の都市生活に欠かせない存在となり、世界中で愛されています。特にスターバックスはその象徴的存在であり、日本ではドトール、ヨーロッパではコスタコーヒーなど、各国ごとに人気のブランドが存在します。
このように成長を続けるコーヒー市場の中で、インドネシアを中心に、東南アジアにて急速に台頭している新興ブランドが「Kopi Kenangan」(コピ・クナンガン)です。なお海外では「Kenangan Coffee」(クナンガン・コーヒー)として知られています。
Kopi Kenanganは、地元の嗜好に合った本格的な味わいと手頃な価格を武器に、独自のコーヒー文化を築き上げているそうです。実際にスターバックスやドトールと異なるアプローチで、東南アジア市場に特化した戦略を展開した同社は、東南アジアの食品・飲料分野で初のユニコーン企業になりました。
この記事では、大手VCであるセコイア・キャピタルから資金調達を受けるなど、業界でも注目を集めているKopi Kenanganについて詳しくご紹介します。
事業内容:東南アジアを中心に展開するコーヒーチェーン
Kopi Kenanganはインドネシアを中心に、東南アジアにてコーヒーチェーンを展開しています。インドネシアでは最大のコーヒーチェーンである同社は月間600万杯近くを販売しており、2024年の売り上げは前年比32%増の1億4000万ドルにのぼると見られています。
同社のコーヒーは価格が安く、利便性も高いと人気を博しており、インドネシアにて非常に高い評価を受けているそうです。実際に英国の調査会社YouGovが2024年に実施した調査によると、同社はJanji Jiwaやスターバックス、J.Co Donuts & Coffeeを抑え、インドネシアで最も認知度の高いコーヒーチェーンだったとのこと。
テイクアウト専門店だから店舗拡大・手頃な価格設定が可能
Kopi Kenanganの最大の特徴として、店舗のほとんどがテイクアウト専門店です。具体的にはインドネシアにある同社の店舗の80%は、座席やWi-Fiが用意されておらず、テイクアウトしか対応していません。
これはCEOであるEdward Tirtanata(エドワード・ティルタナタ)の戦略であり、席などを設けないことで家賃といった固定費を抑え、店舗数の拡大・手頃な価格設定を可能にしているのだそう。
実際に同社で最も人気の高いパームシュガーラテの価格は2万2000ルピア(約205円)であり、一般的なカフェが提供するコーヒーの価格が4万ルピア(約378円)であることからも、その安さがうかがえます。
なお将来的にはカフェとテイクアウト専門店の割合を半々にするつもりだと、Edward Tirtanataは述べています。
現在2カ国に進出!今後はより多くの国に進出予定
Kopi Kenanganは、2023年時点でシンガポールとマレーシアにのみ海外進出しています。その数は合計約30店舗であり、スターバックス等と比較するとその規模はまだまだ小さいです。
今後はより多くの国に進出することを目指しており、2028年までに販売拠点を現在の1000カ所から3000カ所に増やすとのこと。さらに、2028年までに少なくとも1億ドル(約146億円)を調達し、2029年までにIPO(新規株式公開)を目指しているそう。いつか日本に進出する日が来るかもしれません。
創業の歴史:コロナで倒産の危機を迎えるも打開
Kopi KenanganのCEOであるEdward Tirtanataは、CNBCからのインタビューにおいて創業の歴史を語っています。
高校時代から起業家志望だった彼は、2007年に渡米し、ボストンのノースイースタン大学で財務と会計を専攻したそう。しかし、両親が経済的に困窮していると聞いて2年半で卒業し、帰国することになります。
故郷に戻ったEdward Tirtanataは、父親が石炭取引会社を立ち上げるのを手伝うが、2015年に起きた石炭価格の暴落を受け、廃業に追い込まれたそう。彼はその経験を踏まえ、「どのようなビジネスをするにしても、価格は自分が決めるようにしたい」と述べています。
そして彼は、2015年に超高級紅茶チェーンである「Lewis and Carroll」を立ち上げました。しかし、最初の3カ月はほとんど客が入らず、新型コロナの影響で7店舗のうち4店舗の閉店を余儀なくされます。しかし、彼はそこで諦めずに事業を続けました。
Edward Tirtanataはその後、高校時代の友人であるJames Pranantoと、店舗拡大がより容易なテイクアウト専門のコーヒーチェーンの立ち上げについて話し合ったそう。そして2017年に、彼ら全員でKopi Kenanganを設立しました。
資金調達:2021年に9600万ドルを調達してユニコーンに
Kopi Kenanganは、2021年12月にシリーズCラウンドで9600万ドルを調達し、この時点で評価額が10億ドルを突破。これにより、東南アジアの食品・飲料分野における初のユニコーン企業が誕生しました。
なお創業から2021年までの間に累計2億3000万ドル以上を、セコイアキャピタルのインド・東南アジア部門であるPeak XV PartnersやTybourne Capital Management、B Capitalなどから調達しています。
市場規模:コーヒーの世界市場は2032年に約7500億ドルに
Fortune Business Insightによると、2023年における世界のコーヒー市場規模は4,587億7,000万米ドルに達しました。2024年には4,858億米ドルに拡大し、2032年までには7,481億4,000万米ドルに成長する見込みです。
企業概要
- 企業名:Kopi Kenangan (海外名称:Kenangan Coffee)
- 代表者:CEO Edward Tirtanata
- 設立:2017年
- 本社所在地: Menara Sentraya, Lantai 15, Jl. Iskandarsyah Raya No.1A, RT.3/RW.1, Kel. Melawai, Kec. Kby. Baru, Kota Jakarta Selatan, DKI Jakarta – 12160
- 公式HP:https://kopikenangan.com/
まとめ
本記事では、東南アジアを中心に展開するコーヒーチェーン「Kopi Kenangan」について紹介しました。
New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。
Kopi Kenanganのように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。