引用:LIFESHOT公式HP
海外旅行者から「写真を撮ってほしい」と頼まれた経験はありませんか?実は、日本は海外から非常に人気のある旅行先であり、2023年10月には米国の旅行雑誌『Condé Nast Traveler(コンデナスト・トラベラー)』が発表した「世界で最も魅力的な国」ランキングで1位を獲得しています。
一方で、オーバーツーリズムといった課題も顕在化。特に、観光客からお金を集められるコンテンツをうまく設計できず、収益の最大化に繋げられていないという問題が指摘されています。
こうした状況の中、「旅行中に素敵な写真を撮りたい」という訪日外国人のニーズに応える新たなビジネスを展開しているのが、「株式会社LIFESHOT」(以下、LIFESHOT)です。同社は、韓国出身の梁東珍(ヤン・ドンジン)氏によって創業され、旅行の予約から写真撮影、写真のダウンロードまでを1つのアプリで完結できるサービス「Cheiz」を提供しています。
この記事では、神戸市のスタートアップビザ制度*を活用して創業されるなど、注目を集めるLIFESHOTについて紹介していきます。
*スタートアップビザ制度:外国人起業家の受け入れを拡大するため、自治体が起業準備活動の管理・支援を行うことを条件に、在留資格「経営・管理」の取得を目指す外国人を対象に、起業準備期間として最長1年間の入国・在留を認める制度。 |
事業内容:観光写真に特化した旅行サービス「Cheiz」を運営
LIFESHOTは、訪日外国人向けに観光写真に特化したOTA*サービス「Cheiz」を提供しています。
*OTA:Online Travel Agentの略で、オンライン上にのみ存在する旅行代理店のことを指す。「じゃらん」「楽天トラベル」などがOTAに該当する。 |
「Cheiz」では旅行の予約ができ、旅行者には現地カメラマンによる記念撮影チケットが付与されます。これにより、旅行者は各地の観光名所でプロのカメラマンによる撮影を楽しむことが可能です。
さらに、撮影された写真は「Cheiz」上でダウンロードできるだけでなく、LIFESHOTと提携するインフルエンサーやカメラマンに修正・加工を依頼できます。そのため、「せっかく日本に来たのにSNS映えする写真を撮れない」という外国人観光客の課題を解決することが可能です。
また、LIFESHOTは観光事業者向けにB2Bサービスも展開しており、観光プランに写真撮影を追加することで、他社との差別化を支援しています。加えて、プロモーション用の高品質な写真を提供してくれるので、観光客の増加も見込めるでしょう。
さらに、同社は韓国のインフルエンサーとの強力なネットワークを活用して、韓国人観光客向けに効果的なインフルエンサーマーケティングも行っています。
資金調達:2024年10月にシードラウンドでの調達に成功
LIFESHOTは、ライトアップベンチャーズ株式会社が無限責任組合員を務める「ライトアップベンチャーズ1号投資事業有限責任組合」を引受先とした第三者割当増資により、2024年10月1日付で資金調達を行ったと発表しました。
この資金調達をもとに、LIFESHOTは訪日韓国人観光客を対象としたOTAプラットフォーム「Cheiz」を正式にリリースし、ユーザー数・提携する観光事業者の拡大を目指します。具体的には、まずは韓国人観光客向けのサービス展開を進め、次に東アジアや中華圏からの観光客にも対応していく予定です。
さらに、LIFESHOTは撮影した写真や映像を活用し、大規模なインフルエンサーマーケティングを今後も継続して実施していくと明らかにしています。
創業エピソード:日本の観光にチャンスを見出した
LIFESHOT代表取締役の梁東珍(ヤン・ドンジン)氏は、鳥取大学を卒業後、新卒で横浜の商社に入社しました。しかし、コロナ禍による観光業界の急激な変化に大きなビジネスチャンスを見出し、わずか6ヶ月で退職。日本での事業展開を目指し、韓国に帰国しました。
その後、海外旅行での写真撮影に関する課題を解決するアイデアを考え、韓国仁川市の観光スタートアッププログラムに採択されます。さらに、仁川デモデイでは投資先企業に選ばれ、2023年に韓国人として初めてKOBE START UP VISA*を取得し、株式会社LIFESHOTを設立しました。
現在LIFESHOTは、訪日外国人観光客向けに写真撮影に特化したグローバルOTAサービス「Cheiz」を提供しており、東アジアを中心に次世代のOTAサービスの構築を目指しています。
*KOBE START UP VISA:世界中から起業家・スタートアップを受け入れる神戸市の取り組み。神戸市では経済の持続的な成長を目指し、スタートアップの育成・集積・定着支援を行っている。 |
市場規模:トラベルテックの世界市場は2032年に178億ドルへ
グローバルインフォメーションによると、トラベルテクノロジーの世界市場規模は2023年に100億米ドルを記録し、2032年までに178億米ドルに達するという予測です。
また、JETRO(ジェトロ)によれば、政府のDX推進や観光産業の回復を背景に、トラベルテック市場が注目を集めています。特に、オンライン旅行予約サイト(OTA)市場が急成長しており、2022年度には前年比68.0%増の155.4億米ドル(約2.4兆円)の規模に達しました。訪日外国人の多くがウェブサイトで航空券や宿泊を手配しているため、今後もOTAの需要が高まると予測されています。
さらに、外国企業と日本の自治体・企業との協業が進んでおり、観光MaaSやビッグデータ活用による観光業の効率化が進展中です。地方の観光課題解決に向けたMaaSプロジェクトや、訪日外国人の集客支援を目的としたデータプラットフォームの活用など、多様な分野で連携が広がっています。
トラベルテックの活用は、航空券やホテルの予約、モビリティサービス、データによるプロモーション支援など多岐にわたり、今後もDXの進展とともに市場の成長が期待されています。
企業概要
- 企業名:株式会社LIFESHOT
- 代表者:代表取締役 梁東珍(ヤン・ドンジン)
- 設立:2023年5月1日
- 所在地:〒650-8660 兵庫県神戸市中央区浪花町56,KIP内
- 公式HP:https://cheiz.co/company
まとめ
本記事では、訪日外国人向けに観光写真に特化したOTAサービス「Cheiz」を提供する、株式会社LIFESHOTについて紹介しました。
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