私たちの生活は、今やデータなしでは考えられないほど密接に結びついています。スマートフォンの地図アプリがリアルタイムで渋滞情報を更新したり、ECサイトがユーザーの行動履歴をもとにオススメの商品を表示したりするのも、すべてデータの恩恵によるものです。
その中でも、特に注目されているのが「人流データ」や「物流データ」です。これらは人々や物の移動を捉えるデータで、企業が資源を最適に配置したり、マーケティング戦略を立てる際に欠かせない要素となっています。
そして、この分野で急速に注目を集めているのが、東京大学発のスタートアップ「LocationMind株式会社」(以下、LocationMind)です。LocationMindは位置情報データをAIで解析し、「いつ、何が、なぜ起きたのか、そして何をすべきか」という貴重なインサイトを提供しています。
さらに、LocationMindは東洋経済の「すごいベンチャー100 2024年最新版」にも選ばれ、今後の成長が大いに期待されています。今大注目のLocationMindについて詳しく見ていきましょう。
事業内容:人流データ解析を軸にAI事業・宇宙事業の2つを展開
LocationMindは世界最大の位置情報銀行を目指し、人流データの解析を軸にAI事業・宇宙事業の2つを展開しています。
1つ目のAI事業では、人・自動車・船舶・衛星画像など、複数様式の位置情報ビッグデータを取り扱い、世界規模の高度な分析を行なっています。現在では、80か国を超える位置情報を取り扱うまでに成長しており、多くの企業に事業機会・リスクといったインサイトを提供しているそう。
2つ目の宇宙事業では、「測位信号自体にセキュリティ対策を施す」という特許技術を開発し、次世代のGNSS*セキュリティサービスを提供しています。
GNSS*:「Global Navigation Satellite System」の略称、日本語では「全球測位衛星システム」と呼ぶ。GPSと異なり、複数の測位衛星から信号を受信できるため、GPSよりも高精度の測位が可能。 |
GPSなどの測位信号は、我々が位置情報を知る代表的な手段です。ただし、測位信号は無防備な状態で放送されており、さまざまな不正や攻撃を受けるリスクがあります。そこで同社は、測位信号自体にセキュリティ施策を付与する特許技術を開発して、サービス化を行っています。
AI事業の代表製品①「LocationMind xPop」人流データを自社向けに分析可能
LocationMindが手がける「LocationMind xPop」は、GPSデータを活用し、人の流れを可視化することで、業務判断に必要なインサイトの取得、業務課題解決に向けた分析を可能にするサービスです。
人口密度や移動データ、交通手段など、さまざまなデータを確認することができ、ダッシュボード形式またはCSV形式にて提供してくれます。また要望に合わせて集計・分析方法をカスタマイズしてくれるほか、自社で保有するデータなども取り込むことが可能です。
AI事業の代表製品②「Mobmap」時系列で人流データを分析
LocationMindが手がける「Mobmap」は、データを動的に可視化・解析することに特化したツールです。最大の特徴は人流をはじめとした移動データを動画調で可視化する点で、可視化した動画をレポーティングや、データサイエンティストによる直感的なデータ評価に利用できます。
またGoogle Maps版にて非商用に作成されてきた従来のバージョンと異なり、新リリース版はLeaflet版が基調になっており、対外公表・商用に利用することが可能です。
資金調達:シリーズB総額31.7億円を獲得
LocationMindは2024年9月13日に、シリーズB 2ndクローズ完了で総額31.7億円の資金調達に成功したと発表しました。これにより創業からの累計資金調達額は約49.1億円となります。なお、今回のシリーズB 2ndクローズの内訳は、エクイティ約9.3億円、デット約4.5億円の総額13.7億円です。
既存事業の拡大、および新規事業のさらなる成長のために、今回の資金を活用すると発表しています。
<シリーズBの資金調達の目的>
- 既存事業における分析ソリューションの拡張と、展開地域・領域の更なる拡大
- 次の世代の位置情報データを「不正がないと認証されたGPS測位」にすべて置き換えるべく宇宙事業を加速
- チャット1つで世界中の人や自動車、船などの動態に関する高度な分析を可能にする空間情報生成AIの開発を加速
市場規模:屋外測位ソリューション市場は2027年に約650億円へ
デロイトトーマツミック研経済究所によると、2022年度の屋外測位ソリューション市場は264.8億円だったそう。2027年度までのCAGRは20%増で、約650億度まで成長すると推測しています。
また2022年度の分析プラットフォーム市場は271.1億円で、2027年度までのCAGRは11%増。「マーケティング・販促」「業務効率化」領域で利用が広がっていた位置情報データが、現在は「インフラ保全・監視」といった安全管理の用途にも利用されていることがよく表れています。
企業概要
- 企業名:LocationMind株式会社
- 代表者:代表取締役 / 桐谷 直毅
- 設立:2019年2月
- 所在地: 東京都千代田区神田司町2-8-1 PMO神田司町4F
- 公式HP:https://locationmind.com/
まとめ
本記事では、人流データ解析を軸にAI事業・宇宙事業を展開するLocationMind株式会社について紹介しました。
New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。
LocationMind株式会社のように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。