【Musca】イエバエで持続可能な食糧生産を実現

株式会社ムスカ(以下、ムスカ)は、串間充崇(くしまみつたか)氏が創業した、バイオテック企業だ。同社は「イエバエ」というハエを活用して、有機廃棄物を肥料や飼料へとリサイクルする事業を運営している。

世界では人口増加による食糧不足が続いており、この解決には肉や魚、野菜を育てるための肥料や飼料が欠かせない。一方フードロスも世界各国で大きな課題であり、消費者庁によると日本だけで約500万トンもの食品廃棄物が発生している。

本記事では、こうした社会問題を解決して、持続可能な食糧生産を目指すムスカについて紹介する。

事業内容:イエバエを活用した肥料や飼料の生産・販売

ムスカはさまざまな事業者から集めた有機廃棄物を、イエバエを活用して飼料・肥料に変え、商社に販売している。同社が処理する形で有機廃棄物を受け入れているため、本来ならコストが発生する仕入れ部分が手数料として利益を創出しているのは特筆すべき点だ。

またイエバエの卵を管理する工場は自社で保有する一方で、肥料と飼料を生産する幼虫育成工場はオーナーに購入してもらうスタイルを取っている。卵の供給や幼虫飼育、肥料・飼料の販売といった業務は、ムスカがオーナーに代わって運営する。

工場で生産した飼料・肥料に対して買い取り保証を行うことで、オーナーも安定的な利益が得られる仕組みを作り上げている点が、同ビジネスモデルのさらなる特徴といえるだろう。

イエバエを用いたバイオマスリサイクリングシステム

引用:https://musca.info/solution/

ムスカの最大の特徴は、やはりイエバエを用いたバイオマスリサイクリングシステムである。畜産の排泄物や生ゴミ等の有機廃棄物にイエバエの卵をまき、孵化した幼虫を1週間放置するだけで、廃棄物を分解して有機肥料を作ることが可能だ。

食品ロスの問題を解決できるのはもちろん、焼却処分などの必要がないため、CO2の排出を抑えることができ、環境に優しい処理方法といえる。

また同プロセスの中で発生するフンは有機肥料に、増えた幼虫は動物性たんぱく質飼料に活用されるので、非常に無駄のないサイクルとなっている。

50年間の研究の中で生まれたサラブレッドのイエバエを活用

引用:https://musca.info/

ムスカの技術は旧ソ連にルーツを持つ。実は火星への有人宇宙飛行に向けて、食糧の確保と排泄物の処理を解決するため、旧ソ連がイエバエを使った肥料と食糧の自給にチャレンジしたことがきっかけだ。

ムスカは崩壊した旧ソ連の研究を引き継ぎ、現在に至るまで約50年間1200世代にわたる選別交配を行い、サラブレッド化されたイエバエを開発した。同社のイエバエは過密空間でのストレスに強く、生産能力が高いという特性を持つそうだ。

丸紅や伊藤忠と2019年に業務提携

ムスカは丸紅や伊藤忠といった大手総合商社と、2019年に戦略的パートナーシップを締結した。特に伊藤忠商事は、ムスカへの出資に加えて、国内初となるバイオマスリサイクル設備の第1号プラントへの参画を検討すると発表。

大手総合商社2社が同じ企業と戦略的パートナーシップを締結する事例はあまりなく、サステナビリティの推進が求められる総合商社にとって、期待値が非常に高い事業であることが伺える。

フードテック市場は2050年に280兆円まで成長

引用:https://www.mri.co.jp/knowledge/column/20240215_2.html

三菱総合研究所は、2020年時点で24兆円だったフードテックの世界市場規模が、2050年にはその12倍の約280兆円まで成長する可能性があると予測している。特に昆虫飼料の市場規模については、2019年の0.1兆円から2050年には24.2兆円まで拡大する可能性があるそうだ。

世界的な人口増加・経済発展によりタンパク質需要が高まる中、それに比例して畜産が急拡大するため、農地への過度な負担・地下水の枯渇など、さまざまな悪影響が懸念されている。このようにサステナビリティへの配慮の観点から、畜産の生産性を向上させる昆虫飼料の市場は拡大していくだろう。

一方で市場規模をいっそう伸ばすためには、「新規技術を食品へ適用することに対する安全性への懸念」といった問題を払拭する必要がある。

会社概要

会社名:株式会社ムスカ (MUSCA Inc.)

代表取締役:串間 充崇

設立:2016年12月5日

所在地:〒103-0023 東京都中央区日本橋本町3-8-3-8F

公式HP:https://musca.info/

まとめ

本記事では、イエバエを活用して飼料や肥料を生産しているムスカについて紹介してきた。

New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介している。

ムスカのように、バイオテクノロジー事業を展開する企業についてもまとめているため、関連記事もご覧いただきたい。

目次に戻る

コメント

タイトルとURLをコピーしました