今回紹介するのは、シンガポールに本社を置くスタートアップ「SEADLING」だ。
SEADLING は、イノベーションとテクノロジーを通じて海藻の潜在能力を引き出すことに注力する、業界をリードする海藻バイオテクノロジー企業だ。
本記事では、このようなSEADLINGの事業内容や企業沿革、資金調達、将来展望などについて紹介していく。
事業内容:海藻の栄養で農業食品分野に革命を起こす
SEADLINGは「海藻の栄養の力で農業食品分野に革命を起こす」という使命を掲げ、人間だけではなく動物や植物の健康を高める機能性成分を開発している。
ここでは、実際にSEADLINGが提供している商品について紹介していく。
発酵海藻を活かした健康ペットフードの原材料「PhycoBio」
SEADLINGは、発酵海藻機能成分であるPhycoBioを活用したペット用のフードの原材料を提供している。
発酵海藻機能成分には、代謝機能の向上、ミネラルやビタミンなどの栄養価を高める効果、腸の健康強化、免疫力の向上などの効果がある。
中でも、SEADLINGが提供するPhycoBioには4つの特徴がある。
①製造の互換性
PhycoBioは、全てのペットフードメーカーの製造方法に対応することができる。
SEADLINGが推奨するPhycoBioの分量に従えば、すべてのフード製造機でPhycoBio入りのフードを製造可能で、本来のフードの機能性を損なうこともない。
②保水力
PhycoBio には食物繊維が豊富に含まれており、優れた保水力を発揮する。
保水力があることで、ペットフードの質感や形状を維持するのに役立つ。
③美味しさ
PhycoBioは海藻が原料であるため、ペットに新鮮な海の風味を届けることができる。
植物育成ブースター「Plant Health」
Plant Healthは、海藻の発酵を利用した植物の育成を支える栄養剤だ。
Plant Healthには、カリウムとオリゴ糖が豊富に含まれた発酵海藻エキスが入っている。 カリウムは代謝や酵素活性化などの重要な植物機能をサポートし、オリゴ糖は葉や根の病気に対する植物の防御力を高めることができる。 また、発酵海藻エキスマグネシウムや鉄、ホウ素などの栄養素も含まれており、植物と土壌の健康を促進する効果がある。
企業沿革
SEADLINGの取り組みは、2018年に東南アジアのボルネオ島で始まった。ボルネオ島周辺では、以前は海藻産業が活発であったが、近年は遅れをとっていることから、海藻産業を再び最前線に戻る手助けを行い始めた。
2022年には、TBN HYBRID CONFERENCEといった、特にインドネシアに焦点を当てて東南アジアの社会的企業を支援する会議にスピーカーとして参加し、インドネシアのエコシステムについて提言した。
2023年には、シンガポールにある本社に加えて、マレーシアのセンポルナに支店を設立し、販路を拡大した。また、アジア太平洋農業食品イノベーション サミットの一環として開催されたBlue Food Pitch Hourにおいて、取り組みが評価され、ベストピッチ賞を受賞した。
2024年には、東洋製罐グループホールディングスから200万ドルの資金調達を行った。
創業ストーリー
ブリーズボルネオマガジンの2021年11月に掲載された、創設者であるサイモン・デイビス氏へのインタビューから、創業ストーリーを紹介していく。
サイモン氏は、インドネシアで海洋保護に関わるなど、海洋保護に長らく取り組んできた。 この取り組みをきっかけにサイモン氏は、海を大切にするだけではなく現地のコミュニティを巻き込み、海で生計を立てられるようにする方法を模索し始める。
最終的に、サイモン氏は、マレーシアのサバ州において、海藻を原料とした製品開発を行い始めた。サバ州の海藻養殖コミュニティと密接に協力しながら、現地のコミュニティに安定した収入の機械を創出することとなった。
資金調達
2021年 GROWアグリフードテックアクセラレーターから資金調達を実施。(金額非公開)
2023年 SPACE-Fから資金調達を実施。(金額非公開)
2024年 東洋製罐グループホールディングスから200万ドルの資金調達を実施。
東洋製罐グループホールディングスの支援については、同社のOPEN UP! PROJECTの一環で行われた。このプロジェクトを通して、次の100年を創造するべく、大衆にとどまらない細かなニーズと一人ひとりが抱える課題に向き合うことでイノベーションを起こし、より豊かな社会の実現を目指している。
将来展望
SEADLINGは今後のプランとして、SDGsの5「ジェンダー平等を実現しよう」8「働きがいも経済成長も」13「気候変動に具体的な対策を」14「海の豊かさを守ろう」を推進していくことを公表している。
5「ジェンダー平等を実現しよう」について、SEADLINGは、女性の採用を積極的に行っており、組織内での管理職にもっと多くの女性が就くように社内制度を改革している。
8「働きがいも経済成長も」について、SEADLINGは、製品の種類や用途を拡大することで、組織内に新たな雇用機会を創出することを目指している。また、海藻農家を支援し、農家の活動拡大をサポートすることで、新たな収入源を生み出すことも考えている。
13「気候変動に具体的な対策を」について、SEADLINGは、海藻養殖業界内での持続可能性を積極的に推進することを表明している。今後、水温の上昇が予想されるため、高温耐性のある種苗の選定に向けた取り組みを強化すると述べている。
14「海の豊かさを守ろう」について、海洋資源や環境への影響について、農家の意識を高めるための教育プログラムを開始するとのことだ。さらに、環境意識の高い利害関係者、特に保護協議会のメンバーとパートナーシップを築き、事業を行っていきたいと述べている。
SEADLINGは今後、このような持続可能な社会に向けた取り組みを強化していくようだ。
企業情報
会社名 Seadling Pte. Ltd.
代表者 Simon Davis
本社所在地 150 CECIL STREET, #15-01, Singapore 069543
設立年月日 2018年
まとめ
今回は、海藻の潜在能力を引き出し、海洋環境や海藻農業コミュニティをサポートしているSEADLINGについて紹介してきた。
New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介している。
SEADLINGのように、さまざまな先端技術を活用する企業についてもまとめているため、関連記事もご覧いただきたい。