最終更新日 25/04/28
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【SigIQ】AI家庭教師システムで教育格差に挑むインド発EdTechスタートアップ

AIシステム開発
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(引用:Business Post Nigeria

インドでは毎年、何百万人もの学生が難関試験に挑みますが、優れた家庭教師による個別指導を受けられるのは一部の恵まれた層に限られているという教育格差が存在します。

その課題をAIで埋めようとしているのが、インド発のスタートアップSigIQ(シグアイキュー)です。同社のAI家庭教師システム「EverTutor(エバーチューター)」は、2024年6月にインドの国家公務員試験(UPSC)で人間受験者約130万人を上回る史上最高得点を7分足らずで記録し、大きな注目を集めました。この快挙はインド各紙で報じられ、AIによる教育革命の可能性を示す具体例となっています。

本記事ではSigIQの事業内容や資金調達、市場動向などについてわかりやすく紹介します。

事業内容:AI家庭教師プラットフォーム「EverTutor」「PadhAI」

(引用:note

SigIQが展開する主力事業は、AI家庭教師プラットフォーム「EverTutor」と「PadhAI」です。
これらは、従来の学習支援サービスとは一線を画し、AIが個別最適化されたリアルタイム指導を提供する点に大きな特徴があります。

「EverTutor」は、世界中の受験者向けに開発された学習プラットフォームで、特にアメリカの大学院入学試験であるGRE対策に特化しています。学習者はAI家庭教師との対話を通じて、自分の理解度や弱点に合わせたパーソナライズされた問題演習や解説指導を受けることが可能です。AIは単なるQ&A機能(よくある質問に対する回答のみのシステム)ではなく、生徒の間違いの傾向を分析し、より効果的な復習プランを提案することができるため、学習効率を30〜40%向上させたという実績も報告されています。

一方、インド国内向けに提供されている「PadhAI」は、同国の最難関国家公務員試験(UPSC)に特化したAI学習支援サービスです。特徴は、膨大な過去問データとリアルタイムAIフィードバックにより、生徒一人ひとりの学習進捗と苦手領域を瞬時に把握し、最適な演習メニューを組み立てる点です。また、1対1のクイズ対戦機能や、スコア可視化機能により、学習のモチベーション維持も図っています。開始からわずか半年で20万人超のユーザーを獲得し、Google Playストアではレビュー件数3,400件超平均評価4.9という高い満足度を得ています。

両プラットフォームとも、ユーザー体験(UX)にも細心の工夫が施されています。例えば、チャット型UIを採用し、LINEやWhatsAppのような直感的な操作感でストレスなく学習が続けられる設計になっています。さらに、通常は講師による指導が必須だったエッセイ添削や記述問題も、AIが即座にフィードバックできる機能を備え、短時間で弱点を補強できるのも大きな強みです。

SigIQのAIは、実際にUPSCの模擬試験において、7分間で最高得点を記録するなど、人間の家庭教師を超えるパフォーマンスを示しており、教育AIの可能性を実証しました。今後は対象試験を拡大し、さらなる言語対応や地域展開も計画しており、「誰もが最高の学びにアクセスできる世界」の実現を目指しています。

資金調達:2025年4月、シードラウンドにて約950万ドル(約13億円)を調達

(引用:Shutterstock.com

2025年4月、SigIQはシードラウンドで約950万ドル(約13億円)を資金調達しました。このシード投資はHouse FundとGSV Venturesがリードし、DuolingoやGeneral Catalyst India(Venture Highway)、Peak XV Partners(旧セコイア・インディア)、Calibrate Venturesなども参加しました。また、PerplexityやTurnitinの創業者、UCバークレーやMIT、プリンストンなど各国を代表する大学の教授陣といった著名なエンジェル投資家も名を連ねています。資金は主に人材採用やAIモデル高度化、プラットフォームのグローバル展開に投入される予定です。

House FundのマネージングディレクターであるJeremy Fiance氏も「SigIQ.aiは単なるEdTechスタートアップではなく、世界で最も難しい試験の一つで人間や既存AIを凌駕するAIシステムを構築した。この成果は個別教育の常識を塗り替える」と高く評価しています。

創業背景

(引用:SigIQ.ai

SigIQは2023年7月、UCバークレーの博士課程でAI研究に従事していたKarttikeya Mangalam氏(コンピュータビジョン分野の権威 Jitendra Malik教授に師事)と、同大学の著名教授Kurt Keutzer氏によって創業されました。

Mangalam氏は教育環境が限られたインド・ビハール州ムザファルプル市の出身で、自身の体験から地方とエリート教育機関との格差を痛感した過去を持ちます。IITカンプールとUCバークレーで学んだ同氏は「世界水準の教育を誰もが受けられるようにしたい」との思いで、このスタートアップを立ち上げました。

Keutzer氏はAI研究の第一人者で、6冊の著書と250本以上の論文を発表し、12社のスタートアップ立ち上げに関わってきた経験を持つ人物で、Mangalam氏と共に同社を起業しました。

市場規模:2025年には約7兆ドル(約700兆円)を超える見通し

(引用:openPR)

教育業界は世界で最大級のマーケットであり、2025年には約7兆ドル(約700兆円)を超えると予測されています。その中でもEdTech(教育テック)分野の成長は著しく、パンデミック以降のオンライン教育強化により、世界のオンライン教育市場は2025年に2,000億ドル超に達する見込みです。

とりわけ、個別指導(受験対策や補習)のマーケットは非常に大きく、世界では2024年時点で約880億ドル(約10兆円)の規模があるとされ、2034年には約1,900億ドルへと拡大する見通しです。インドでも、大学入試や公務員試験など難関試験向けの外部コーチング市場がここ数年で激増しています。実際に2024年のUPSC試験には130万人以上が受験しました。拡大を続けるオンライン教育市場の中で、インドのEdTech市場は2024年時点で28億ドルと算出され、2033年には約330億ドルへと成長する見通しが出ています。一方でEverTutorのようなAI家庭教師システムは、こうした市場の切実なニーズに応える存在です。

会社概要

  • 会社名: SigIQ
  • 所在地: 米国カリフォルニア州バークレー、インド・グルガオン
  • 設立: 2023年7月
  • 代表者: Karttikeya Mangalam(カルティケヤ・マンガラム)
  • 公式サイト: sigiq.ai

まとめ

今後、SigIQはGRE対策プラットフォームEverTutorの提供範囲を拡大し、教育テック分野の国際サミットであるASU+GSVでも最新の開発成果を披露する予定です。標準化試験以外の分野へも技術の応用を視野に入れ、地理や言語、経済状況に左右されない高品質な学びの提供を目指しています。「エリート教育は希少なものである必要はなく、誰もが享受できるべきだ」という理念の実現に向け、歩み始めたところです。教育へのAI活用という波は日本においても確実に訪れており、SigIQの挑戦はその可能性を示す先駆的な事例と言えるでしょう。

New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。

SigIQのように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。

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