【Signapse AI】音声やテキストを手話に自動翻訳

引用:https://www.f6s.com/company/signapse#about

WHO(世界保健機構)は、現在難聴に苛まれている人が4.3億人(世界人口の約5%)存在し、2050年までに7億人以上に増加すると予測している。

またWFD(世界ろう連盟)によると、日常的に手話を使用するろう者は世界中に7000万人以上存在し、300種類以上の異なる手話が利用されているそう。

このように身近に聴覚障害者が存在するにもかかわらず、聴者が大多数を占める現代においては、その存在は「見えない化」されている。SDGsの目標3「全ての人に健康と福祉を」・目標10「人や国の不平等をなくそう」と謳われているように、彼らが生きやすい社会をつくっていく義務が私たちにはあるだろう。

この課題に対して、イギリスのスタートアップSignapse AIは、テキストや動画、WEBサイトの情報から即座に手話のビデオを作成するサービスを提供している。

新たなサービスのローンチも発表して注目を集めるSignapse AIについて紹介しよう。

事業内容:生成AIを用いた手話翻訳ソフトウェアの提供

引用:https://www.signapse.ai/

Signapse AIの事業内容は、生成AIを用いた手話翻訳ソフトウェアの開発・販売だ。ウェブサイトや動画、交通機関の音声アナウンスを、BSL(イギリス手話)またはASL(アメリカ手話)に翻訳し、わずか2秒で手話のビデオを自動生成する。

従来の技術でよく見られる簡素化されたアバターとは異なり、実際の人間が手話をしているような、自然でリアルな動画を生成するのが大きな特徴だ。またAPI連携が可能なため、最新のスマホやパソコンはもちろん、交通機関に存在する古いディスプレイにも対応可能で、活用できる範囲が非常に広い。

加えて同社は緊急時の対応も優れており、状況の変化や予期せぬ混乱に備えて、手話通訳チームが待機している。必要な際には手話情報をカスタマイズし、1時間以内に動画をアップロードできるようにしているそうだ。

現在はイギリスにて毎日5000以上の電車のアナウンスを手話動画に翻訳しているほか、アメリカの空港を中心に50以上もの航空会社で利用されている。手話は世界共通言語でなく、各国で異なるため、今後は世界各国の手話に対応してくれることを期待しよう。

アメリカのシンシナティ・ノーザンケンタッキー国際空港でSignapse AIが活躍する様子

AI技術「GAN」を活用して高解像度の動画を生成

引用:https://ai-kenkyujo.com/artificial-intelligence/algorithm/gan/

Signapseで使用しているAI技術は、「敵対的生成ネットワーク(Generative Adversarial Networks:GAN)」と呼ばれるもの。

GANは、生成ネットワーク(Generator)と、識別ネットワーク(Discriminator)の2つから構成される。Generatorは本物のデータをもとに偽のデータを作り出し、Discriminatorはその偽のデータと本物のデータを比較して本物か偽物かを判定する。この一連のプロセスを繰り返し、学習を深めていくことで、「本物と見分けがつかない偽物」を生成するのだ。

低解像度の画像を高解像度にするイメージ (引用:https://ai-kenkyujo.com/artificial-intelligence/algorithm/gan/)

このようにGANは、正解のデータを与えずとも自ら学習の精度を高めることができるため、実在しないデータの生成や、実在するデータの特徴に沿ったデータ変換を行うことができるつまり、高度な画像生成が可能になり、正確でよりリアルな手話動画を生成できるというわけだ。

2024年9月からビデオ翻訳プラットフォームをローンチ予定

引用:https://www.signapse.ai/

Signapse AIは、2024年9月までにビデオ翻訳プラットフォームをローンチすると公表している。

従来はユーザーが動画を手話に翻訳したい場合、Signapse AIと細かい要件について相談した後、同社が手話のビデオを納品してくれるまで待つ必要があった。

しかし、今回のビデオ翻訳プラットフォームを活用すれば、ユーザー側が自由に手話のビデオを設計できるため、より手軽かつ迅速に手話へ翻訳することができるようだ。

資金調達:シードラウンドにて約4億円を獲得

引用:https://www.setsquared.co.uk/signapse-secures-2m-seed-funding-to-deliver-generative-ai-technology-to-more-communities/

Signapse AIは、2024年6月にシードラウンドにて投資家から150万ポンド、英国政府から50万ポンド、合計200万ポンドの資金を調達したと発表。日本円にしておよそ3.8億円の資金調達である。

今回の資金調達について、Signapse AIの創業者であるSally Chalk, Ben Saundersは、それぞれ次のようにコメントしている。

「我が社が次の段階まで成長できたことに、これ以上ないほど興奮し、誇りに思っています。今回の資金調達は、世の中を変える製品を開発するための重要な機会であり、一生に一度のことだと思います。」

「今回の資金調達は、Signapse AIにとって重要な場面です。交通機関におけるアナウンスといった限られた領域から、ウェブサイトやビデオ翻訳などのより自由な市場へと、我々のAI翻訳を拡大することができます。」

<目的>

  • 聴覚障害者のアクセシビリティを世界的に向上させるため、ビデオ翻訳市場へ進出する
  • AIを使ってあらゆる英語の文章をBSLに翻訳できるようにする
  • Signapse AIが生成する手話ビデオの品質を向上させる

<投資家>

  • Soulmates Ventures
  • Deeptech Seed Fund
  • 王立ろう者協会
  • Empirical Ventures
  • CEAS Investments
  • FSE Group

企業概要

企業名:Signapse AI

創業者:Sally Chalk(CEO), Ben Saunders(CTO)

設立:2021年

所在地:イギリス サリー州 ギルフォード サリー・テクノロジー・センター

公式HP:https://www.signapse.ai/

まとめ

本記事では、テキストや動画、WEBサイトの情報から即座に手話のビデオを作成するSignapse AIについて紹介した。

New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介している。

Signapse AIのように、国内外の面白い企業についてまとめているため、関連記事もご覧いただきたい。

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