近年、サイバーリスクは企業にとって重要な課題となっています。2024年6月には、KADOKAWAグループがデータセンターでランサムウェア被害を受けたことも記憶に新しいでしょう。また、クラウドセキュリティに特化したサイバーセキュリティ企業Wizは、2023年夏にGoogleから230億ドルでの買収提案を受けるなど、大きな注目を集めました【詳細: New Venture Voice】。
欧州でもサイバーセキュリティの重要性は高まっており、多くの企業がリスクの回避・軽減に取り組んでいます。
そんな中、フランスのサイバー保険スタートアップStoïk(ストイク)は2024年10月に2700万ドルの資金調達を実施し、さらに注目が集まっています。Stoïkは中小企業向けに特化したサイバーセキュリティ保険を提供し、セキュリティ強化もサポートしているスタートアップです。
本記事では、Stoïkの事業内容、資金調達の詳細、将来の展望について詳しく解説します。
事業内容:中小企業に向けたサーバー保険の提供
Stoïkの事業内容は、中小企業に向けたサーバー保険の提供です。
主に年間売上高が7億5000万ユーロ以下の中小企業を対象にサイバー保険を提供。同社の保険の内容は、「サイバー攻撃によって事業停止が発生した際、休業期間中の営業利益を補償する」、というもの。例えば、サイバー攻撃によって500万ユーロの損出が計算できた時、500万ユーロが対象の企業に保証されます。
さらに、同社は保険の提供だけに留まらず、Stoïkは保険を契約した顧客のサイバーセキュリティ対策を強化するサービスも提供しています。たとえば、*DNSの監視やパスワード漏洩の検出、クラウドやディレクトリ設定の改善提案を含むセキュリティ強化サポートも行っています。
*DNS(Domain Name System)とは、IPアドレスとドメイン名を紐づけし、IPネットワーク上で管理するシステムです。
現在、同社のサービスはフランス、ドイツ、オーストリアへと拡大しており、2024年末までに契約数5,000件を目指し、さらにヨーロッパ全体へ拡大する予定です。
資金調達:2024年10月、シリーズBにて2500万ユーロ調達完了
シードラウンド(2022年1月)
出資額:380万ユーロ
調達元:Alven Capital、Anthemis Group、Kima Venturesなど
シリーズA(2022年6月、2023年9月)
出資額:2100万ユーロ(1100万+1000万)
調達元:
- 1回目;Andreessen Horowitz(a16z)
- 2回目;Munich Re VenturesとOpera Tech Ventures
目的:
- ドイツ市場での展開。
- Stoïkはケルンにオフィスを開設。ドイツ保険市場で10年の経験を持つFranziska Geier氏を現地責任者に任命。
シリーズB(2024年10月)
出資額:2500万ユーロ
調達元:
- Alven主導、
- 新たな投資家:Cyber Integrity Capital(CYBICA)、Tokio Marine HCC International(TMHCCI)
目的:
- フランスやドイツを中心に欧州全域での展開を加速
将来展望:欧州全体へのサービス拡大を目指す
Stoïkは、欧州での展開を加速し、サイバー保険とセキュリティサポートを通じて企業の防御力強化を支援する方針です。
CEOのJules Veyrat氏は、これにより顧客満足度を高めると同時に、リスクが軽減された保険契約者によって保険金支払いの抑制が期待できると述べています。さらに、2024年末までに5000件の契約を目指し、ドイツ市場を皮切りにオーストリア、モナコなど欧州全域に拡大予定です。また、Stoïkは、 *MDR(Managed Detection and Response)など新たなプロフェッショナル向け保険商品も提供予定で、技術者や開発者の採用を進め、製品の充実を図っています。
*MDR:MDR(Managed Detection and Response)とは、24時間365日体制で組織のセキュリティ監視を行う、運用サービス。
会社概要
- 企業名:Stoïk
- 代表者:Jules Veyrat
- 設立:2021年
- 所在地:パリ、フランス
- 公式HP:https://www.stoik.com/en-us
まとめ
本記事では、フランスのサイバー保険スタートアップStoïkについて紹介しました。
New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。
Stoïkのように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。