【Stralis Aircraft】水素航空機でカーボンニュートラル社会を実現!

(引用:https://www.stralis.aero/)

Stralis Aircraft(以下、Stralis)は、水素航空機*を開発するスタートアップです。

水素航空機とは、水素を燃料として使用する航空機のことです。水素燃料は燃焼後に水しか排出しないため、環境への影響を大幅に軽減できると期待されています。

同社は汚染物質を排出しない航空機の開発を通して、カーボンニュートラル社会の実現を目指しています。

本記事では、同社の事業内容・市場規模等について詳しく説明していきます。

事業内容:水素燃料電池を用いた航空機の開発

Australia's Skytrans Moving Into 19-Seat Segment With Stralis Aircraft's  Hydrogen Electric Propulsion System – Smart Aviation Asia-Pacific
(引用:https://smartaviation-apac.com/australias-skytrans-partners-stralis-aircraft-to-develop-hydrogen-electric-propulsion-aircraft/

Stralisは、HEP(Hydrogen-electric propulsion)と呼ばれる、水素燃料電池を用いた電気推進システムを開発しています。

<Stralisの代表的な製品>
・B1900D-HE
・SA-1-HE

製品①:B1900D-HE

(引用:https://www.stralis.aero/products)

ビーチクラフト1900D (B1900D-HE)は、15席の水素航空機です。

この機体は、当社独自の水素電気推進システム(HEP)と、既存の給油システムに適合した液体水素貯蔵システムで改造されています。

B1900D-HEは、19席の従来型ターボプロップ機と利用可能座席あたりのコスト(CASK)で競争しつつ、ゼロエミッション目標を達成します。

機体、アビオニクス(航空機に搭載される電子機器)、および内装は最適化され、オーストラリア民間航空安全局(CASA)と米国連邦航空局(FAA)から追加型式設計承認(STC)を取得する予定です。

*追加型式設計承認(STC):ある事業者が製造して型式証明を取得した航空機について、その事業者以外(航空会社や航空機整備会社)による設計の一部変更を国が承認する制度

推進方式水素電気推進
燃料タイプ液体水素
最大乗客数15名
有効搭載量1500 kg (3300 lb)
最大航続距離800 km (432 nm)
巡航速度500 km/h (270 kts)

製品②:SA-1-HE

(引用:https://www.stralis.aero/products)

SA-1-HEは、世界初の50席水素航空機です。

この機体は、環境に優しい旅行の需要を満たしつつ、高い収益性を維持し、乗客に素晴らしい体験を提供することを目的に設計されました。

航空機は水素電気技術と大規模製造に最適化されています。

SA-1-HEは全体的な運用コストを50%削減するだけでなく、ボーイング737を性能面で上回ります。

推進方式水素電気推進
燃料タイプ液体水素
最大乗客数50名
有効搭載量5000 kg (11,000 lb)
最大航続距離3000 km (1620 nm)
巡航速度580 km/h (313 kts)

政府からの資金援助

(引用:https://newsroom.bne.com.au/bne-company-secures-funding-for-zero-emission-flight/ )

Stralisは、オーストラリア政府の「Emerging Aviation Technology Partnerships」プログラムから資金援助を受けました。

具体的な日時や金額は明らかにされていませんが、今回の資金は水素航空機の開発や、テスト飛行、商業運航に向けた準備に使用される予定です。

BNE company secures funding for zero-emission flight
Brisbane Airport congratulates the Stralis Aircraft team for receiving Australian Government funding to push ahead with ...

なぜ水素燃料電池が注目されているのか

以下3つの理由から、Stralisの水素燃料電池(HEP)が航空業界にとって革新的な解決策であると期待されています。

1.高温PEM燃料電池の進歩

水素と酸素を使って電気を生成することのできる高温PEM燃料電池の技術革新により、水素航空機の航続距離と寿命を伸ばすことができます。

2.他の持続可能な飛行ソリューションの限界

これまで検討されてきた飛行ソリューションには限界があります。

持続可能な航空燃料(SAF)は、環境に配慮した代替燃料として注目を集めていますが、高価かつ排気ガスから二酸化炭素等を排出します。

また、電気と燃料のハイブリッドシステムは複雑でコストが高く、800kmの航続距離での排気ガス排出削減率は約7%にとどまります。

3.経済性と環境性の両立

高温PEM燃料電池システムは、自動車用燃料電池システムと比較して6倍軽量化されており、航空機の運用コストを50%削減できる可能性があります。

Hydrogen-electric flight at scale — Stralis Aircraft
High-performance, low-operating cost, no emission, hydrogen-electric flight at scale.

市場規模:水素インフラ市場は2050年に160兆円に

(引用:https://power-ids-solutions.com/energy/ind-thermalpgf/ind-thermalpgf-12/)

日経 BP クリーンテック研究所によると、世界の水素インフラの市場規模は、2030 年には 40 兆円弱、2040 年には 80 兆円、2050 年には 160 兆円になると予測されています。

そのため同市場は、カーボンニュートラル社会の実現に向けて特に注目されていることがわかります。

水素は再生可能エネルギーではない?カーボンニュートラル社会の実現に向けて注目される理由とは | 【Power of Solution】三菱重工パワーインダストリー ソリューションサイト
カーボンニュートラル社会の実現に向けて再生可能エネルギーが注目されています。その中の一つに「水素発電」がありますが、厳密にいうと水素は再生可能エネルギーではありません。いったいそれはなぜなのか?ご紹介します。

将来展望:2025年に初飛行を予定

(引用:https://www.businessnewsaustralia.com/articles/stralis-aircraft-plans-maiden-flight-in-2024-for-first-aircraft-retrofitted-with-hydrogen-system.html)

Stralisは、2025年にオーストラリア初の水素電気推進システムを搭載した航空機の初飛行を予定しています。

このプロジェクトは、クイーンズランド工科大学(QUT)と連邦政府が支援するiMOVE協同研究センターとの協力により進められています。

初飛行には、改造されたビーチクラフト ボナンザA36*が使用され、技術実証プログラムの一環として行われます。

将来的には、15席のビーチクラフト1900D機や50席の新型機SA-1-HEの改造も計画されており、2026年にはスカイトランス社*との連携で商業運航を目指しています。

今回の初飛行は、オーストラリアの航空産業における水素航空機の実現を象徴する重要なイベントとなるでしょう。

※ビーチクラフト ボナンザA36は、ビーチ・エアクラフト社が開発した単発レシプロ軽飛行機のこと。

※スカイトランス社は、オーストラリアのクイーンズランド州を拠点とする航空会社。

会社概要

会社名:Stralis Aircraft

所在地:Brisbane, Australia

設立年:2021年

代表:Bob Criner, Stuart Johnstone

HP:https://www.stralis.aero/

まとめ

本記事では、水素航空機を開発するStralis Aircraftについて紹介してきました。

New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。

Stralisのように、オーストラリア発のスタートアップ企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。

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