チーズタルトで有名なBAKEを創業した長沼真太郎氏が、新たに代表取締役として参画した株式会社UTOPIA AGRICULTURE。(以下、ユートピアアグリカルチャー)
ユートピアアグリカルチャーでは、人・動物・環境に負荷がない持続可能なビジネスを目指して、 放牧による乳卵製品やお菓子の製造販売を行っています。 昨今、環境負荷の観点で酪農の問題点があげられていますが、ユートピアアグリカルチャーは動物と共生しながら地球を回復させる「再生農業:リジェネイティブアグリカルチャー」に注目し、実証実験をこなうなど放牧の可能性を追求しています。
今回は、そんなユートピアアグリカルチャーの事業内容について詳しく紹介していきます。
事業内容:持続可能な酪農で届けるこだわりが詰まった乳製品
ユートピアアグリカルチャーは、持続可能な酪農を通して乳卵製品やお菓子作りを行う企業です。
初めにユートピアアグリカルチャーが行う「持続可能な酪農」について解説していきます。
ユートピアアグリカルチャーは酪農の課題として、
- 3Kによる労働人口減少
- 牛や酪農で発声するCO²の問題
- 飼料購入のコスト高の問題
- 牧舎への入れっぱなしによる動物の健康問題
などをあげており、これらの課題と向き合う中で放牧という手法に出会いました。
ユートピアアグリカルチャーは、上図の放牧モデルを実践することで、人・動物・環境に負荷がかからないをビジネスを達成します。 放牧で自由に牛が動き回れることで、糞尿が牧草の肥料になるため、土壌の栄養や微生物が増えます。土壌が豊かになることで、さらに多くの温室効果ガスが吸収されるようになります。
このように、のびのびと動物が育ち、土壌が回復し、おいしいお菓子が生まれる循環型の仕組みが作られています。CO²の削減は実証実験中ですが、カーボンオフセットを超え、カーボンマイナスを実現する構想が発表されています。
次に、ユートピアアグリカルチャーが提供しているサービスや実証実験について紹介していきます。
「GRAZE GATHERING」美味しさと情報を届ける体験型サブスク
GRAZE GATHERINGは、自社放牧で育てた牛乳や卵をサブスクで販売するサービスです。
4週間に一度、「放牧牛乳800ml・放牧ヨーグルト800ml・平飼いの卵8個入り×2パック・リジェネイティブアグリカルチャーのコンテンツ記事」がセットで2,280円で届きます。
「CHEESE WONDER」放牧牛乳と卵を使用した風味豊かなチーズケーキ
ユートピアアグリカルチャーが自社放牧で育てた牛乳と卵が、CHEESE WONDERの生チーズスフレやクッキーに使われており、風味豊かなチーズケーキになっています。一時期には即完売し、入手しにくいなどの声が上がり予約販売を行うなどしていた、人気のチーズケーキです。
北海道大学との共同研究:放牧酪農のハードルを下げる挑戦
ユートピアアグリカルチャーは、北海道大学と共同で放牧運営において数値化できるものの記録を蓄積し、ビジネスとしてどう効率よく運営すればよいかを研究しています。放牧酪農でどのくらいCO²を削減することができるのか、どのような草でどのような質の乳が取れるのかなどを研究し、放牧の導入のハードルを下げようと奮闘しています。
お菓子作りに人生をかける長沼代表のストーリー
ここでは、さまざまな経歴を持つ、ユートピアアグリカルチャー代表の長沼真太郎氏の経歴とともに、放牧牧場を運営する理由について紹介していきます。
長沼氏は、北海道の洋菓子屋「きのとや」の家に生まれ、「将来もずっとお菓子に関係するしごとをしたい!」という想いを抱いていたそうです。
慶応義塾大学商学部を卒業後に、商社の中で最も製菓部門のシェアが大きい丸紅に新卒入社をします。第一希望だった食品流通部の菓子食品課に配属されましたが、洋菓子店を上海で開くために1年で退職したそうです。しかし上海での事業は失敗し、北海道の実家に戻ってお菓子作りの勉強を0から始めます。その後、2013年に株式会社BAKEを立ち上げ、焼きたてチーズタルトで有名になります。 BAKEでの放牧を実践する酪農家の人々との出会いがターニングポイントとなり、2017年には株式会社BAKE株式の大半をファンドに売却し、代表取締役を退任します。
その後、スタンフォード大学の客員研究員として1年ほどシリコンバレーに滞在し、アグリテックやフードテックについて学んだそう。そこで、放牧の可能性を掴み、帰国後にユートピアアグリカルチャーに参画しました。
長沼氏が創業した株式会社BAKEについても紹介しているので、気になる方はこちらのリンクからご覧ください。
市場規模:2030年には218憶ドルの世界市場へ
グローバルインフォメーションの調査によると、リジェネラティブ農業の世界市場は、2022年に81億ドルを記録し、2030年には218億ドルに達すると予測されています。 予測期間2023-2030年のCAGRは13.2%と、高い水準で推移していく予想です。
生態系の持続可能性や土壌の健全性が問題視される中で、リジェネラティブ農業はますます重要視されていくでしょう。
将来展望:企業投資と放牧設備の共有で循環型酪農を広げていく
ユートピアアグリカルチャーは、循環型酪農を広げていくために、アグリテック企業への投資とシェアミルカー制度という取り組みを行っています。
アグリテック企業への投資では、Agersensという放牧で育てている牛をGPSで管理することができるテクノロジーを開発している企業への投資を行っています。
シェアミルカー制度では、ユートピアアグリカルチャーが土地と設備の購入を行い、酪農運営を行う人へのリスクを抑えた形で放牧を広げています。
このようなユートピアアグリカルチャの取り組みによって、循環型酪農へのハードルがさがっていくことが期待されています。
企業情報
会社名 株式会社ユートピアアグリカルチャー
代表者 長沼 真太郎
本社所在地 北海道沙流郡日高町字豊郷916-6
設立年月日 1990年10月12日
資本金 1000万円
まとめ
本記事では、日本の酪農を変える株式会社ユートピアアグリカルチャーについて紹介してきました。
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