人口が減少している日本において、デジタルシフトによるコスト削減や効率化は喫緊の課題となっています。その中でも特に注目されているのが株式会社xID(以下、xID)。
xIDは「信用コストの低いデジタル社会を実現する」をミッションとして掲げ、マイナンバーカード・デジタルIDを活用した自治体や企業の課題解決・新規事業創出を総合的に支援するGovtech *スタートアップです。
※Govtechは、国や地方公共団体といった行政がデジタル技術を用いてさまざまな課題を解決すること |
同社はデジタル国家を下支えする、唯一無二のインフラを作ることを目標に掲げています。
本記事では、同社の事業内容・市場規模等について詳しく説明していきます。あなたの会社にも役立つヒントが見つかるかもしれません。
事業内容:マイナンバーカード・デジタルIDを活用したサービスを展開
xIDは、マイナンバーカードとデジタルIDを活用した事業を展開しています。
以下に具体的なサービスについて紹介していきます。
xIDアプリ:デジタル時代のIDアプリ
xIDアプリとは、プライバシーやセキュリティに配慮しながら、デジタル社会で必要なことを便利に・簡単に実現できる、デジタル時代の「身分証」「カギ」「ハンコ」がオールインワンになったデジタルIDアプリです。
本アプリはマイナンバーカードをかざして本人確認することで無料で利用可能です。
面倒な本人確認、情報入力を簡単に
マイナンバーカードで公的個人認証をすることで、身分証や顔写真撮影不要な最も安全かつ簡単なオンライン本人確認を実現できます。
名前、性別、生年月日や住所など、毎回の面倒な入力も自動入力で完結します。
パスワードレスで安全にログイン
xIDアプリを使ってあらゆるサービスにログインすれば、サービス毎に個別にパスワードを設定することも不要になります。
フィッシング詐欺、なりすましや不正ログインの不安を低減し、生体認証を活用して安心してオンラインサービスにアクセスいただけます。
アクセスログは専用のxIDポータルからご自身でも簡単に確認可能です。
デジタル社会の実印-電子署名-
電子契約や金融機関・行政サービスなどのオンライン取引において、本人が手続きしたのか、承認したのかの証明が容易になります。
これにより改ざん・否認防止を実現することが可能です。
xID for Developers:開発者向けIDプラットフォームサービス
xID for Developersは、開発者向けのIDプラットフォームサービスです。
本サービスでは、xIDのAPIソリューションを活用することで、面倒な手続きなしにマイナンバーカードの公的個人認証の仕組みを導入することができます。
詳細な仕組みは以下の通りです。
【正確な4情報の受け取り】
マイナンバーカードから取得された正確な4情報にxIDユーザーの認可に基づきアクセス可能。
利用者に自己情報を手入力させる手間や誤入力・不正入力を防ぎ、顧客体験を改善できます。
【身分証撮影・目視確認も不要なeKYC】
身分証の写真撮影も、画像データの保管もいらない改正犯罪収益移転防止法第6条1項のワに準拠にした最も安全かつ確実なオンライン本人確認を実現できます。
【電子署名法準拠の当事者型電子署名】
マイナンバーカードの公的個人認証により生成したxID電子証明書で当事者型の電子署名ができます。
なりすましや不正取引・承認を防止。ワークフローに組み込んで決裁承認の証跡確認にも利用できます。
【パスワードレス認証】
ユーザーのスマホ端末をマイナンバーカードで認証することでパスワードレス認証ためのセキュアな認証器に。
多要素認証でなりすましや、リスト型攻撃対策のセキュリティリスクを低減します。
【マイナンバー提出要求】
本人確認がされたxIDアプリから安全かつ確実に当人のマイナンバーの提供を受けることができるAPIです。
公開鍵暗号の仕組みを使い、利用者から事業者にエンドツーエンドで暗号化された状態でマイナンバーが提供されます。
SmartPOST:デジタル郵便サービス
SmartPOST(スマートポスト)は、マイナンバーカードを活用した、確実に住民本人に届くデジタル郵便受けと、自治体向けデジタル郵便(通知)管理サービスです。
なぜSmartPOST?
【自治体が抱える課題】
住民から自治体への手続きのデジタル化は少しずつ進んでいる一方で、自治体から住民へのコミュニケーションは未だに郵送と電話だよりのままです。
そのため自治体と住民のやりとりを双方向的にデジタル化する仕組みが求められています。
また、従来の大量の郵送物の発送業務は作業負担や郵送コストが大きく改善の余地があります。
【解決策としてのSmartPOST】
自治体はSmartPOSTで住民のデジタル郵便受け(xIDアプリ上)に直接通知を送ることができます。
自治体が能動的に住民とコミュニケーションをとることで、本当に必要な人に対して本当に必要な行政サービスを、きめ細かに提供できるようになります。
創業の経緯:エストニアで受けた衝撃
xIDの共同創業者/代表取締役CEOの日下氏によると、2017年にエストニアに移住したことがxIDの創業のきっかけになったそうです。
当時日下氏は、電子政府の仕組みが整備されていたエストニアへの興味をから移住を決断したそうです。以下はインタビュー記事の抜粋です。
エストニアでは水道、ガス、電気と同じようにデジタルがインフラ化されていて、Wi-Fiは至るところで使えます。でも町並みは中世そのものでデジタル感はゼロ。週末は森にキャンプに行って、むしろ市民はデジタルとは程遠い生活をしています。
なぜデジタルに注力するかを聞いたら「人間がやらなくてもいいことをデジタルに任せていけるから」と話してくれました。その中核にあるのが、国民全員に付与されたデジタルIDです。それを使って官民のあらゆるサービスがスマホで完結する仕組みがあり、選挙で投票もできます。できないのは離婚申請のみです。
一方で、あらゆるインフラをデジタル化したら何よりも信頼が大事になってきます。経済活動は人間が動くことで生まれるからです。そもそも私が起業したきっかけが「どうやったらネット上でリアルな信用・信頼を築くことができるのか」にあったので、エストニアでの経験は大きな糧になりました。
資金調達:総額約6億円の資金調達を実施
xIDは2024年12月にりそなキャピタル株式会社(以下「りそなキャピタル」)を引受先とした総額約6億円の資金調達を実施しました。
同社は今回の資金調達を通じて、自治体の郵送業務の課題を解決するデジタル郵便サービス「SmartPOST」の更なる拡大に加え、民間分野への展開を加速していきます。
本ラウンドでは、Hamagin DG Innovation Fundをリードとして、三井住友銀行には銀行本体からの出資が行われました。
今後のマイナンバーカード・デジタルID活用、SmartPOSTの金融分野での展開強化に向け、りそなキャピタル株式会社からの支援を受けることになりました。
市場規模:国内デジタルID/認証ソリューション市場は2029年に約1兆5000億円へ
富士キメラ総研プレスリリース:『デジタルID/認証ソリューションビジネス市場調査要覧 2022』まとまるによると、国内デジタルID/認証ソリューション市場は2023年に9,238億円で、2029年には1兆5,248億円まで拡大することが予想されています。
中でもxIDが行っているマイナンバーカードや、IC運転免許証などの読み取りにより本人確認を行う「ICカード/コード認証ソリューション市場」は注目されており、2023年の市場規模は52億円で、2029年には67億円まで成長すると予測されています。
会社概要
会社名:xID株式会社
所在地:〒100-0011 東京都千代田区内幸町2丁目1−6 日比谷パークフロント19F
設立年:2012年5月
代表:日下 光
まとめ
本記事では、マイナンバーカード・デジタルIDを活用した自治体や企業の課題解決・新規事業創出を総合的に支援するxID株式会社について紹介してきました。
New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。
xIDのように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。