この記事ではオーストラリア発のスタートアップ企業4社について紹介します。
以下の、近年注目の企業をまとめましたのでぜひご覧ください!
- 【JigSpace】3Dのパワポが作れる!ARスタートアップ
- 【Skykraft】人工衛星で飛行機を管理する時代に?
- 【Stralis Aircraft】水素航空機でカーボンニュートラル社会を実現?
- 【Songtradr】音楽ライセンス市場のリーダー
【JigSpace】3Dのパワポが作れる!ARスタートアップ
JigSpace Inc(以下、JigSpace)は、拡張現実(AR)技術を中心にした事業を展開するオーストラリア発のスタートアップです。
同社の技術を用いることで、誰でも3Dでプレゼンテーションを作ることができます。
事業内容:CADモデルを3Dプレゼンテーションに変換
JigSpaceでは、CADモデル*を「Jjgs」と呼ばれる3Dプレゼンテーションに変換することができます。
iOS向けの無料アプリの他、CADファイルのインポート機能を備えた「Jig Pro」も提供されています。
JigSpaceを使えば、CADモデルだけでは伝わりづらい構造や完成イメージを直感的に3Dで見せることができます。
無料アプリはは世界中のApple Storeで「iPad」や「Vision Pro」にプリインストールされており、今まさに注目されているアプリです。
※CADモデルとはComputer Aided Designの略で、コンピュータ上で設計や製図を行うツールです。
CADモデルのイメージ
JigSpaceの主な特徴
- CADモデルを簡単に3Dに変換
- CADデータをJigSpaceにインポートするだけで3Dに変換可能です。(Jig Proのみ)
- 変換後の編集も可能
- 変換後、色の変更や注釈やアニメーション等をつけることができます。
- 簡単に共有
- 完成したプレゼンテーションをリンクもしくはQRコードに変換して共有できます。
会社概要
会社名:JigSpace Inc
所在地:Melbourne, VIC
設立年月日:2015年7月21日
代表:co-founders:Zac Duff, Numa Bertron
【Skykraft】人工衛星で飛行機を管理する時代に?
Skykraftは、オーストラリア拠点の航空宇宙技術企業であり、主に衛星技術の開発と運用を行うスタートアップです。
同社は、特に人工衛星を用いた次世代の航空管制システムの提供を目指しています。
このシステムは、従来の地上ベースの管制システムを補完または置き換えることを目的としており、航空交通管理の効率と安全性を向上させることが期待されています。
事業内容①:航空交通管理(ATM)サービス
Skykraftは、主に宇宙からの航空交通監視(ATM*)サービスを提供しています。
*Air Traffic Management:航空交通管理のこと。航空機が空港から離陸し、空域を飛行して目的地に着陸するのを支援するすべてのシステムを指します。
航空交通管理(ATM)サービスとは?
Skykraftの航空交通管理(ATM)サービスは、地上のレーダーシステムに依存せず、宇宙の衛星を利用して航空機の位置情報をリアルタイムで把握するシステムです。
従来の地上レーダーシステムは、山岳地帯や海上などの広範囲をカバーすることが難しいという制約がありました。
しかし、Skykraftの衛星システムはこれらの制約を克服し、地球上のどこにいる航空機でも正確に追跡することが可能です。
このサービスにより、航空機の運航効率が向上し、飛行の安全性が大幅に強化されます。特に、遠隔地や海上を飛行する航空機にとっては、重要な安全対策となります。
事業内容②:通信サービス
Skykraftは、航空業界向けに高品質な通信サービスも提供しています。
このサービスは、航空機と地上の管制官との間の通信を円滑に行うことを目的としています。
従来の通信システムでは、地上のインフラに依存しているため、通信が途切れることがありましたが、Skykraftの衛星通信システムはこれを解決します。
この通信サービスにより、航空機のパイロットと地上の管制官が常に連絡を取り合うことができ、飛行中の状況や緊急事態にも迅速に対応することが可能です。これにより、航空機の運航がさらに安全で効率的になります。
事業内容③:衛星ネットワークの開発
Skykraftは、航空交通管理サービスを提供するための衛星ネットワーク(コンステレーション)の開発も行なっています。
2023年時点で、Skykraftは10機の衛星を運用しており、これらの衛星が連携して航空交通管理のデータを収集・提供しています。
この衛星コンステレーションは、地球の周りを回りながら、航空機の位置情報や通信データをリアルタイムで収集し、地上の管制システムに送信します。
これにより、地上の管制官は常に最新の情報を基に航空機の運航を管理することができます。
会社概要
会社名:Skykraft Pty Ltd
所在地:Building J, UNSW Canberra City, 37 Constitution Ave, Reid ACT 2612.
設立年:2017年
代表:James Prior, Doug Griffin
HP:https://www.skykraft.com.au/
【Stralis Aircraft】水素航空機でカーボンニュートラル社会を実現?
Stralis Aircraft(以下、Stralis)は、水素航空機*を開発するスタートアップです。
※水素航空機とは、水素を燃料として使用する航空機のことです。水素燃料は燃焼後に水しか排出しないため、環境への影響を大幅に軽減できると期待されています。
同社は汚染物質を排出しない航空機の開発を通して、カーボンニュートラル社会の実現を目指しています。
事業内容:水素航空機の開発
Stralisは、HEP(Hydrogen-electric propulsion)と呼ばれる、水素燃料電池を用いた電気推進システムを開発しています。
HEPが3つの理由から、航空業界にとって革新的な解決策であると期待されています。
1.高温PEM燃料電池の進歩
水素と酸素を使って電気を生成することのできる高温PEM燃料電池の技術革新により、水素航空機の航続距離と寿命を伸ばすことができます。
2.他の持続可能な飛行ソリューションの限界
これまで検討されてきた飛行ソリューションには限界があります。
たとえば持続可能な航空燃料(SAF)は、環境に配慮した代替燃料として注目を集めている一方で、高価かつ排気ガスから二酸化炭素等を排出します。
また、電気と燃料のハイブリッドシステムは複雑でコストが高く、800kmの航続距離での排気ガス排出削減率は約7%にとどまります。
3.経済性と環境性の両立
高温PEM燃料電池システムは、自動車用燃料電池システムと比較して6倍軽量化されており、航空機の運用コストを50%削減できる可能性があります。
製品1:B1900D-HE
ビーチクラフト1900D (B1900D-HE)は、15席の水素航空機です。
この機体は、当社独自の水素電気推進システム(HEP)と、既存の給油システムに適合した液体水素貯蔵システムで改造されています。
B1900D-HEは、19席の従来型ターボプロップ機と利用可能座席あたりのコスト(CASK)で競争しつつ、ゼロエミッション目標を達成します。
機体、アビオニクス(航空機に搭載される電子機器)、および内装は最適化され、オーストラリア民間航空安全局(CASA)と米国連邦航空局(FAA)から追加型式設計承認(STC)を取得する予定です。
*追加型式設計承認(STC):ある事業者が製造して型式証明を取得した航空機について、その事業者以外(航空会社や航空機整備会社)による設計の一部変更を国が承認する制度
推進方式 | 水素電気推進 |
燃料タイプ | 液体水素 |
最大乗客数 | 15名 |
有効搭載量 | 1500 kg (3300 lb) |
最大航続距離 | 800 km (432 nm) |
巡航速度 | 500 km/h (270 kts) |
製品2:SA-1-HE
SA-1-HEは、世界初の50席水素航空機です。
この機体は、環境に優しい旅行の需要を満たしつつ、高い収益性を維持し、乗客に素晴らしい体験を提供することを目的に設計されました。
航空機は水素電気技術と大規模製造に最適化されています。
SA-1-HEは全体的な運用コストを50%削減するだけでなく、ボーイング737を性能面で上回ります。
推進方式 | 水素電気推進 |
燃料タイプ | 液体水素 |
最大乗客数 | 50名 |
有効搭載量 | 5000 kg (11,000 lb) |
最大航続距離 | 3000 km (1620 nm) |
巡航速度 | 580 km/h (313 kts) |
会社概要
会社名:Stralis Aircraft
所在地:Brisbane, Australia
設立年:2021年
代表:Bob Criner, Stuart Johnstone
【Songtradr】音楽ライセンス市場のリーダー
Songtradrは2015年にPaul Wiltshire氏によって設立された、音楽ライセンス市場のリーディングカンパニーです。
同社は世界最大の音楽ライセンスプラットフォームを運営しており、音楽クリエイターが自分の作品を簡単に有償提供(ライセンシング)できる環境を用意してます。
他にもSongtradrの音楽を利用しているブランドや企業が、そのマーケティング効果を検証することができるよう「分析機能」を搭載するなど、機能は盛りだくさんです。
事業内容:音楽ライセンスプラットフォームを運営
Songtradrは、世界最大の音楽ライセンスプラットフォームを運営しています。音楽クリエイターが作成した楽曲を、ストリーマーや広告会社など、さまざまなプレイヤーに提供することで、利用料を稼いでいるのが大きな特徴です。
なお企業に対してはコンサルティングサービスも提供しており、オリジナルの楽曲制作や、マーケティングにおける音楽のROI分析など、その支援は多岐に渡ります。
特徴①:多種多様な音楽のライセンスを提供
Songtradrの主要な事業は、音楽ライセンスの提供です。
音楽クリエイターはプラットフォームを通じて自分の楽曲をアップロードし、映画やテレビ、広告など、さまざまなメディアと自由にライセンス契約を結ぶことができます。世界中のさまざまなプレイヤーに自分の音楽を届けることができるので、多くの収益機会を得ることが可能です。
またSongtradrはライセンス契約の詳細を明確にし、クリエイターがどのような条件で報酬を得られるかを明らかにしています。この透明性の高さから、多くのクリエイターが安心して利用しているそうです。
特徴②:AIで音楽データを管理・最適化
Songtradrは、AI技術を活用して音楽のメタデータを管理・最適化するサービスを提供しています。
同サービスは2022年に買収したMusicubeによるもので、音楽の自動タグ付けやメタデータが強化されたため、楽曲を効率的に管理・検索することが可能とのことです。
特徴③:音楽の効果についてデータ分析が可能
Songtradrは、音楽の利用状況やリスニングデータを分析し、ブランドや企業が音楽を効率的に使えるようインサイトを提供してくれます。たとえば再生回数や視聴時間、リスナーの反応といったリスニングデータを収集することが可能です。
そのため「狙いたい顧客層に対してどの音楽が最も効果的か」「どの音楽スタイル・ジャンルがブランドイメージと合致するか」など、マーケティングに有益な情報を得ることができます。
特徴④:ライブストリーミング向け音楽を提供
Songtradrはライブストリーマー向けに、*DMCA対応の音楽を提供するサービスを展開しています。Pretzelを買収したことで、本サービスはさらに改善され、TwitchやYouTubeでも合法的に音楽を使用できる環境が整ってきたそうです。
昨今TwitchやYouTubeが人気を集め配信が増える中、BGMとして音楽が利用される場面も多くなりました。同社がライブストリーミング向けに音楽を用意しているのは大きな強みといえます。
*DMCA:Digital Millennium Copyright Act の略。「デジタルミレニアム著作権法」のことを意味し、Web上のあらゆる著作物に対するアメリカの法律。
特徴⑤:カスタマイズされた音楽ソリューションを提供
Songtradrはブランドや広告代理店、スタジオなど、企業向けにカスタマイズされた音楽ソリューションを提供しています。
1.戦略的音楽ブランディング: ブランドのイメージに合った音楽を選定し、戦略的に活用するための支援 2.オリジナル音楽制作: 特定のプロジェクトやキャンペーンに合わせたオリジナル楽曲の作成 3.音楽管理: ライセンスの管理やメタデータの最適化、使用状況の追跡など、音楽の全般的な管理をサポート |
本サービスはMassiveMusicを2021年に買収したことがきっかけです。MassiveMusicはブランド向けの音楽ソリューションを提供する世界的な音楽エージェンシーであり、NikeやHeineken、Appleなど大手ブランドと協力しています。
会社概要
会社名:Songtradr Inc.
代表取締役:Paul Wiltshire
設立:2014年
所在地:Santa Monica, California
公式HP:https://www.songtradr.com/
まとめ
今回は、オーストラリア発の注目スタートアップ企業4社を紹介してきました。
- 【JigSpace】3Dのパワポが作れる!ARスタートアップ
- 【Skykraft】人工衛星で飛行機を管理する時代に?
- 【Stralis Aircraft】水素航空機でカーボンニュートラル社会を実現?
- 【Songtradr】音楽ライセンス市場のリーダー
New Venture Voiceでは、これらの企業ごとに、さらに詳しい記事を紹介しているので、ぜひご覧ください。