
ホテルや飲食店など予約制サービス業界では、予約客が連絡なしに来店しない「ノーショー」による損失が深刻です。経済産業省の報告によれば、飲食業界だけでも無断キャンセル被害額は年間約2,000億円にのぼり、事業者にとって見過ごせない社会課題となっています。実際、ある調査では飲食店の約4割で無断キャンセルが発生しているにも関わらず、7割の店舗は具体的な対策を講じていないとの結果もあります。
さらにキャンセル料の請求業務自体が手間やトラブルを伴うため十分に行われず、結果として「払わなくてもよいなら簡単にキャンセルしてしまう」という悪循環を生んでいるのが現状です。なお、従来の対策としては予約時の事前決済義務化、専門の回収代行サービスの利用などがありますが、利用者への心理的負担や導入のハードルが高さが問題です。
こうしたキャンセル問題を解決するため、2022年3月にPayn株式会社(以下、ペイン)が創業され、同年10月にキャンセル料請求・回収業務を自動化するクラウドサービス『Payn』がリリースされました。従来アナログな方法に依存していたキャンセル料対応をデジタル化し、予約管理のDX(デジタルトランスフォーメーション)によってノーショー問題に挑んでいます。
本記事ではそのPaynの特徴や資金調達について紹介していきます。
事業内容:キャンセル料請求・回収業務を自動化するクラウドサービス『Payn』

『Payn』は、宿泊施設やレストランなど予約時にキャンセルポリシーを定める事業者向けの、キャンセル料請求・回収業務を自動化するSaaS型ツールです。煩雑な電話・メールでの督促対応をシステム化し、自動でSMS・メールによる請求通知を送信、オンライン上で決済まで完結させます。また、予約管理システムと連携し、担当者による請求書発行などの手間を省きます。キャンセル料回収にかかっていた工数と心理的負担を大幅に削減できます。
【サービス特徴】
- 予約情報をもとに請求通知、自動リマインド、支払い管理まで一括自動化
- 予約管理システムやサイトコントローラーとAPI連携
- 現地支払いの予約にも後続で対応可能
- 自動クーポン発行や多言語対応、複数支払手段の提供
【実用性と効果】
- 程度は分かりやすく、1分ほどの操作で請求編集や送信が可能
- ノーショーの抑止効果、工数や心理的負担の削減
- 首名なホテルチェーンや小型店舗での実績あり
- 大企業のJTBとの提携で引合力と信頼性を磨く
- ISMS認証取得やSSL化など、セキュリティ面でも高い基準
【違いと優位性】
- 成果報酬型で、使用料は回収成立時のみ
- クレームや不対応な通知を避ける配慮範でのコミュニケーション
- 多言語、複数デバイスに対応、小型業者も同じ機能を利用可
現在はホテル・旅館を中心に利用されており、飲食店やクリニック、美容サロン、レンタル業など幅広い業種への展開も見込まれます。さらに2024年には旅行大手JTBグループとの業務提携も発表され、業界横断でキャンセル問題を解決する取り組みが広がっています。
資金調達:プレシリーズAラウンドで1.4億円の資金調達を実施
ペインは2024年4月8日にプレシリーズAラウンドで総額1.4億円の資金調達を実施しました。コロナ禍以降顕在化したキャンセル問題をテクノロジーで解決するビジネスモデルの成長性が評価されての調達であり、調達資金はプロダクト機能拡充や人材採用など事業拡大に充てられる計画です。本調達によりサービス開発の加速と市場シェア拡大が期待されています。
同社は2022年に実施したシードラウンドでも既存投資家のガゼルキャピタルなどが出資しており、今回もフォローオン投資となりました。リード投資家のジェネシア・ベンチャーズからは「本領域のデファクト・スタンダードをPaynが担う未来への視界がかなりクリアになってきた」と、サービスが業界標準となり得る成長性に期待するコメントが寄せられています。
資金調達概要(2024年7月実施)
- シリーズ:シリーズAラウンド
- 調達額:約1.4億円
- 引受先:
- リード投資家:ジェネシア・ベンチャーズ
- 既存投資家:ガゼルキャピタル
- 新規投資家:
- GxPartners
- SMBCベンチャーキャピタル
- 山口キャピタル
- ヨシックスキャピタル
市場規模
キャンセル料請求に関する市場は、未開拓の領域です。予約キャンセルによる未収金は実質的な「潜在市場規模」と捉えられ、経済産業省によると飲食業界だけでも年間2,000億円規模の売上機会損失が発生しているほか、宿泊業界でも繁忙期の無断キャンセルは大きな経済損失を招いています。当日や前日キャンセルも含めれば、その損失規模は推計1.6兆円にも達するとされ、キャンセル料回収サービスが切り拓ける市場ポテンシャルは極めて大きいことがわかります。

また、店舗運営のDXニーズ拡大も追い風です。富士キメラ総研の調査では国内DX市場は2023年時点で約4兆円、2030年には約8兆円規模に倍増すると予測されており、予約管理や決済のデジタル化サービスへの需要は今後ますます高まるでしょう。ノーショー対策や業務効率化への意識が高まる中、キャンセル料請求の自動化という新領域は、関連する店舗DX市場において今後大きな成長余地を秘めています。
国内では予約サービス側でデポジット機能を設ける例もありますが、キャンセル料回収に特化したSaaSはPaynが先駆けです。なお、海外のレストラン業界では予約時にクレジットカード情報を預かり、無断キャンセル時にノーショーチャージを請求する仕組みが既に一般化しています。日本でも飲食店へのデポジット(事前金)導入が検討されていますが、現状では普及が進んでおらず、こうした背景もPaynのようなツールの必要性を高めています。
会社概要
- 会社名: Payn株式会社
- 所在地: 東京都中央区日本橋兜町5-1
- 設立: 2022年3月
- 代表者: 代表取締役CEO 山下 恭平
- 公式HP: https://payn.io
まとめ
無断キャンセル問題という社会課題に真正面から取り組むPayn株式会社の挑戦は、事業者と利用者双方にメリットをもたらす点に大きな意義があります。予約文化が変わりつつある今、同社の取り組みは多くの事業者の共感を呼び、持続可能なビジネス環境づくりに貢献していくことでしょう。
New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。
Payn株式会社のように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。