
近年、キャンピングカー市場は急速に拡大し、新たなライフスタイルとして注目を集めています。
その流れの中で、Carstay株式会社(以下、Carstay)は国内最大級のキャンピングカーシェアリングサービスを展開し、個人の移動と宿泊の概念を大きく変えつつあります。さらに、自社ブランドのキャンピングカー開発や製造事業にも進出し、持続可能なモビリティの実現に向けて事業を拡大中です。
本記事では、Carstayの事業内容や資金調達状況、市場の成長性について詳しく解説し、キャンピングカー業界の今後の展望を探ります。
事業①:「Carstay」国内最大のキャンピングカーシェアリングサービス

Carstay株式会社が提供する「Carstay」は、日本国内最大のキャンピングカーのカーシェアリングサービスです。このプラットフォームでは、キャンピングカーのレンタルやカーシェアだけでなく、車中泊が可能なスペースやキャンプ場のシェアリングサービスも提供されています。
これにより、旅行者(ゲスト)は手軽にキャンピングカーを借り、宿泊と移動を一体化した自由な旅を楽しむことができます。一方、キャンピングカーのオーナー(ホルダー)や、駐車場・キャンプ場を持つホストは、遊休資産を活用して副収入を得ることが可能です。
「Carstay」の特徴と仕組み

Carstayでは、全国各地に約340か所の車中泊スポットが登録され、500台以上のキャンピングカーがシェアリングの対象となっています。利用者(ゲスト)は、ホテルや飛行機・新幹線を使うよりもリーズナブルに旅を楽しむことができ、オーナー(ホルダー・ホスト)は、使っていないキャンピングカーや駐車スペースを貸し出すことで収益を得ることが可能です。加えて、事故や盗難時の保険が付帯されており、安心して利用できる点も大きな魅力です。
特にオーナーにとっては、貸し出しによって得た収益を駐車場代や車検代、ガソリン代といった維持費に充てることができるため、キャンピングカー所有の経済的負担を軽減できます。さらに、車両購入やローン返済に活用することも可能であり、初期費用や掲載料が無料であるため、低リスクでシェアビジネスに参入できる点も大きな利点です。利用があった際には決済手数料が発生しますが、それ以外の固定費は不要なため、オーナーにとってはコストをかけずに収益化を目指せる仕組みとなっています。
事業②:「Mobi Lab.」自社ブランドのキャンピングカーを開発・設計

Carstay株式会社は、2022年10月にキャンピングカーの開発・設計を手掛ける「Mobi Lab.(モビラボ)」事業を開始しました。
神奈川県横浜市にあるこのファクトリーは、キャンピングカー愛好者向けのバンライフガレージとして機能し、キャンピングカーの販売・リノベーション、カスタム、修理、さらには見学やレンタルサービスまで提供しています。また、個人が車を持ち込み、自分好みに改造できるDIYスペースも用意されており、ユーザーの多様なニーズに対応しています。
Carstayの独自ブランド①:手軽にバンライフを楽しめる「SAny.」

Carstayが展開するキャンピングカーブランド「SAny.(サニー)」は、手軽にバンライフを楽しめるよう、車中泊に必要な設備を標準装備したキャンピングカーシリーズです。
「SAny.VAN」は、業界内でも価格が手頃で、洗練されたデザインを備えているのが特徴。基本装備として、スライド式で収納にもなる2人用ベッド、デスク&キッチン、シンク、バッテリー、照明などが搭載されており、購入後すぐに車中泊が可能です。さらに、ヒーターやソーラーパネルなどをオプションで追加でき、ユーザーのライフスタイルに合わせたカスタマイズが可能となっています。
また、「SAny.」シリーズは、新車購入だけでなく、中古車や旧式キャンピングカーの持ち込み改装にも対応。Carstayが車両を仕入れ、「SAny.」ブランドのデザインで内装・外装をフルリノベーションするサービスや、ユーザーの持ち込み車両をキャンピングカー仕様に完全改造する「フルカスタム」も提供しています。
価格は新車で約445万円~、中古車の場合は約280万円~、持ち込み車両の内装架装のみなら約195万円~となっており、相場に比べてリーズナブルな価格でキャンピングカーを手に入れることができます。特に、一般的なキャンピングカーの新車は納車まで1〜2年かかることが多い中、Carstayでは最短1か月で納車可能な点も大きな魅力です。

Carstayの独自ブランド②:日本初のEVキャンピングカー「moonn.」

「moonn.(ムーン)」は日本初のEVキャンピングカーブランドで、未来感・上質さ・持続可能性の3つの要素を兼ね備えた次世代キャンピングカーを提供しています。電気自動車(EV)をベースに開発されているため、従来のガソリン車と異なり、エンジンの騒音や排出ガスを気にせずに静かで快適な車中泊を楽しめるのが特徴です。
「moonn. T-01」は、EVのメインバッテリーと大型ソーラーパネル、さらには外部充電による3種類の充電方式を採用しており、電子レンジや冷蔵庫などの家庭用電化製品を車内で使用できます。シングルベッドはセミダブルサイズに拡張可能で、快適な2人旅を実現。乗車定員は2人で、1回の充電で約270kmの走行が可能なほか、全国2万か所以上のEV充電スポットで充電ができるため、移動時の利便性も高いです。さらに、車両の高さが2,045mmと抑えられており、立体駐車場や地下駐車場にも駐車可能な設計になっています。
車中泊時には、EVの大容量バッテリーを活用し、エンジンをかけずに家庭用エアコンやヒーターを使用できるため、夏の暑さや冬の寒さ対策も万全。従来のガソリン車ベースのキャンピングカーでは、アイドリングによる騒音や排出ガスが課題となっていましたが、「moonn.」はこれらの問題を解消する設計が施されています。現在販売されている「moonn. T-01」の車両本体価格は税込1150万円となっており、最先端のEVキャンピングカー市場をリードする存在となっています。

資金調達:プレシリーズAラウンドで累計4.8億円を調達

Carstayは、2025年3月10日にプレシリーズAラウンドの追加資金調達を実施し、約1.1億円の資金を新たに確保しました。これにより、金融機関からの融資を含めた累計調達額は約4.8億円に達しています。
本ラウンドでは、株式会社識学やCPAエクセレントパートナーズ株式会社、複数の個人投資家が第三者割当増資を通じて出資を行いました。なお、年内には同ラウンドでの追加資金調達も計画されており、同社のさらなる成長に向けた資本強化が進められています。
今回の資金調達により、Carstayは既存事業であるキャンピングカーおよび車中泊スポットのシェアリングサービス「Carstay」の顧客満足度向上を目指し、サービスの充実を図る方針です。また、新規事業として展開するキャンピングカーの開発・販売を行う「Mobi Lab.」の生産および営業体制の強化に向けて、エンジニアやセールス担当者の新規採用も開始しました。
同社は、キャンピングカーを中心としたモビリティ事業の可能性を広げ、移動と滞在の新しい形を提案することで、業界の発展に貢献することを目指しています。資金調達を通じて成長基盤を強化し、ユーザーにとってより快適で利便性の高いサービスを提供することで、Carstayは引き続きミッションの達成に向けた事業展開を進めていく考えです。
市場規模:2024年キャンピングカー販売総額は1126.5億円

一般社団法人日本RV協会によると、日本国内のキャンピングカー市場は急速に拡大しており、2024年の販売総額は過去最高の1,126.5億円(前年比107%)に達しました。この10年間で市場規模は約4倍に成長し、需要は今も増え続けている状況です。
特に、キャンピングカーは単なる移動手段にとどまらず、新たなレジャースタイルや災害時の仮住まい、さらにはテレワーク用の移動オフィスとしての活用が広がっています。こうした多様なニーズの高まりを受け、市場のさらなる拡大が期待されています。
国内キャンピングカー累積保有台数が増加、過去最高の「165,000台」到達

国内のキャンピングカー保有台数も増加を続けており、2024年には16万5000台に到達。前年から1万台増加し、過去最高を記録しました。日本市場ではまだ発展途上といえますが、例えばドイツでは約160万台のキャンピングカーが保有されており、日本の約10倍もの規模があります。このことからも、日本におけるキャンピングカーの普及余地は大きく、さらなる市場拡大の可能性を秘めています。
キャンピングカーがプライベートな空間を確保した自由な旅を実現

キャンピングカーの最大の魅力は「プライベートな空間を確保しながら自由に旅行できること」です。ユーザーの調査によると、「リラックスして過ごせる」「時間を気にせず出かけられる」といった点が特に評価されています。
また、キャンピングカーを所有することで外出の機会が増えたという回答が多く、旅行のハードルが下がり、よりアクティブなライフスタイルに変化したと感じるオーナーも少なくありません。その結果、日常に新たな楽しみや生きがいが生まれるなど、精神的な充足感を得ることにもつながっています。

主な利用用途は「旅行」、長期滞在にも対応

(引用:PR Times)
キャンピングカーを購入した人の約8割が「旅行」を目的として活用しており、2泊3日以上の長期旅行をするオーナーが全体の7割を占めています。キャンピングカーの強みは、宿泊施設の予約なしに自由な旅程を組めること。金曜日の仕事終わりにすぐ出発し、週末をフル活用して旅を楽しむといったライフスタイルも定着しつつあります。
このように、日本のキャンピングカー市場は堅調に成長を続けており、その用途も多様化しています。市場拡大の背景には、アウトドアブームの継続、ワーケーションやテレワークの普及、災害時の避難手段としての活用といった社会的要因が影響しており、今後もさらなる発展が見込まれます。
企業概要
- 企業名:Carstay株式会社 / Carstay, Inc.
- 代表者:代表取締役 宮下 晃樹 / Koki Miyashita
- 設立:2018年6月1日
- 所在地: 〒241-0825 神奈川県横浜市旭区中希望が丘102番地 ジョイビル301号室
- 公式HP:https://carstay.jp/ja/
まとめ
本記事では、国内最大のキャンピングカーシェアリングサービスを提供するCarstay株式会社について紹介しました。
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