
アートの世界は、いま新たな進化を遂げています。
デジタル(2次元)とフィジカル(3次元)の境界を超え、独自の表現手法を生み出すアートブランド「GAAAT」を展開する株式会社Raptors(以下、Raptors)。彼らは、金属製のキャンバスを活用したフィジカルアートの創造や、NFC技術を取り入れたデジタル連携によって、これまでにないアート体験を提供しています。
さらに、日本国内にとどまらず、シンガポールやドバイ、アメリカなど海外市場にも進出。東急プラザ原宿「ハラカド」での大規模アートイベント開催や、日本が誇るIPコンテンツとのコラボレーションを通じて、グローバルなプレゼンスを拡大しています。
この記事では、Raptorsが展開する「GAAAT」の事業内容や、市場における成長機会、そして今後の展望について詳しく解説。アートとテクノロジーが融合することで生まれる新たなビジネスの可能性について、その最前線に迫ります。
事業内容:2次元と3次元を横断するアートブランド「GAAAT」

Raptorsは、デジタル(2次元)とフィジカル(3次元)の境界を超え、新たなアート体験を生み出すブランド「GAAAT」を運営しています。単なるデジタルアートの枠に収まらず、メタルキャンバスを活用したフィジカル作品の制作や、Web3技術を取り入れたデジタル連携を推進。さらに、アーティスト支援のコミュニティ運営や、アパレルブランド・IPコンテンツホルダーとの協業を通じて、アートの新たな市場を開拓しています。
GAAATは、日本国内だけでなく、シンガポール、ドバイ、アメリカといった世界各地で展覧会を開催し、グローバルなアート市場にも進出。国内では、東急プラザ原宿「ハラカド」で定期的なアートイベントを開催し、数千人規模の来場者を記録しています。同社はリアルとデジタルを融合させることで、これまでにないアート体験を生み出してきました。
実際に、GAAATでは以下の3つの主要サービスを展開しています。
<GAAATが提供する3つのサービス>
- Metal Canvas Art (MCA) – 2.5次元アートの創造
- CREATOR Partnership – クリエイターと共創するアートプラットフォーム
- CORPORATE Partnership – 企業との協業で生まれる新たなアートビジネス
1. Metal Canvas Art (MCA) – 2.5次元アートの創造

GAAATの中核をなすのが、「Metal Canvas Art(MCA)」と呼ばれるオリジナルアートです。デジタルアートをメタル製のキャンバスに描くことで、2次元と3次元を融合した独自の表現が可能になります。
<Metal Canvas Artの特徴>
- デジタルアートをフィジカル作品へ
- 独自技術を活用し、デジタルコンテンツをメタルキャンバスに描写。さらに職人の手仕事を加えることで、立体感のあるアート作品へと昇華させています。
- 精密な32層データ設計とレリーフペインティング
- デジタルデータを32層に分解し、それぞれの層を微細にコントロールすることで、立体感や奥行きを表現。さらに、日本独自のレリーフペインティング技術を駆使し、細部まで緻密に仕上げています。
- アートディレクションとアートエンジニアリング
- オリジナルコンテンツをアート作品へと昇華させるアートディレクションと、デジタルデータの立体設計を行うアートエンジニアリングを活用。これにより、デジタルとフィジカルを融合した新たなアート体験を生み出しています。
- デジタルと連動するNFCチップ
- すべてのMCA作品には、NFCチップが額縁に埋め込まれています。スマートフォンをかざすことで、動画や鑑定書、特設サイトなどのコンテンツに即座にアクセス可能。フィジカルアートとデジタル体験が融合した新たな鑑賞スタイルを提供します。
- 美しさが長持ちするメタルキャンバス
- メタル素材を使用することで、湿気や紫外線の影響を受けにくく、長期間にわたって美しさを保つことが可能。メンテナンスフリーで扱いやすい点も特徴です。

2. CREATOR Partnership – クリエイターと共創するアートプラットフォーム

GAAATでは、アーティストやデジタルクリエイターと連携し、新しいアート体験の創出を目指しています。CREATOR Partnershipでは、100人以上の著名クリエイターと提携し、作品制作から販売までをサポートしている点が特徴です。
<CREATOR Partnershipの特徴>
- デジタルアートの新たな可能性を引き出す
- クリエイターのデジタル作品をMCAの技術でフィジカル化し、アートとしての価値を向上。デジタルデータのままでは実現できなかった質感や奥行きを持たせることで、新たな表現の幅を広げています。
- 個展・アートイベントでの作品販売
- 提携クリエイターの作品は、国内外の展覧会や個展、アートイベントで展示・販売されます。シンガポールやドバイ、アメリカといった国際市場にも展開され、新たなファン層を獲得する機会となっています。
- クリエイター同士の交流の場を提供
- 提携アーティストが互いに刺激を受けながら、アイデアを共有できるネットワークを形成。これにより、個々のクリエイターがより自由で創造的な作品を生み出せる環境を整えています。

3. CORPORATE Partnership – 企業との協業で生まれる新たなアートビジネス

GAAATは、企業とのパートナーシップを通じて、アートの可能性を広げる取り組みも推進。IPホルダーや芸能事務所、アパレルブランドなど、多様な業界との協業を展開しています。
① IPホルダーとのコラボレーション
株式会社ゼノトゥーンと提携し、人気クリエイター「安田現象」の作品をMCA化。80万円、40万円、10万円といった価格帯の限定アートを販売し、総額250万円分が即完売しました。IPコンテンツとフィジカルアートを組み合わせることで、付加価値の高い作品を生み出しています。
② 芸能事務所とのアートプロジェクト
ホリプロと協力し、お笑い芸人・三村マサカズ氏のアート制作をサポート。NFTとMCAを組み合わせた作品を展開し、NFCチップを活用して限定コンテンツへのアクセスを提供しました。また、カラーリングを変更した100パターンのMCA作品を制作し、それぞれにナンバリングとサインを付与。すべてが世界に一点しかない作品として販売されました。
③ アパレルブランドとのコラボレーション
アパレルブランド「グラニフ」と提携し、これまでのデザイン資産をMCA作品として再構築。店舗内での限定展示・販売を実現し、ブランドの新たな展開を後押ししました。アートとの融合により、従来のアパレルビジネスに新しい価値を生み出しています。
資金調達:2025年3月シリーズBラウンドで2億円を調達

Raptorsは2025年3月18日、三井住友海上キャピタル株式会社をリードインベスターとした第三者割当増資を実施し、シリーズBラウンドのファーストクローズで2億円を調達したことを発表しました。
これにより、累計資金調達額は約4.7億円に到達。今回の資金調達を通じて、国内外におけるアート事業のさらなる拡大を図る方針です。
資金調達の背景:グローバル展開の本格化
Raptorsは、2025年を「日本発のアートブランドとしてのポジションを確立する一年」と位置付けています。その象徴的な取り組みとして、日本の著名なイラストレーターや大手IPコンテンツとのコラボレーションを強化し、海外市場への進出を本格化。これにより、GAAATの売上に占める海外比率も順調に増加しています。
特に、2025年3月にはニューヨークでGAAAT初となる海外単独個展を開催。日本を代表するIPコンテンツとコラボレーションしたオリジナルアートを展示し、4日間で1500名以上の予約を獲得しました。当初の予想を大幅に上回る反響を呼び、GAAATのグローバルプレゼンスを飛躍的に向上させる契機となっています。
こうした海外市場での成功をさらに拡大するため、国内でのアート企画・制作・販売の基盤を強化しつつ、ブランディング・マーケティングへの投資や新たなアート表現の研究開発を加速させる必要があると判断。こうした背景から、シリーズBラウンドでの資金調達を決定しました。
資金の活用用途
今回調達した2億円の資金は、主に以下の3つの領域に投資される予定です。
- 海外におけるアートイベントの展開
- 日本のIPコンテンツホルダーやイラストレーターとのコラボレーションを軸に、海外でのアートイベントを継続的に展開。グローバル市場でのブランド認知度を高めるとともに、販売機会の拡大を図ります。
- 作品販売チャネルの強化
- オフラインとオンラインを統合し、イベント開催地とECサイトを連携させたシームレスな販売体制を構築。売上最大化を目的としたマーケティング施策への投資を進め、国内外の顧客へのアプローチを強化します。
- 独自のアート製造技術・アート体験の研究開発
- Raptorsは、GAAATならではの独自技法を活かしたアート体験の創出に注力。デジタルテクノロジーの活用を進め、革新的なアート表現の開発を加速します。また、GAAAT独自の製造技術や販売方法に関する知的財産権の確立・保護を目的とした法務活動にも資金を投じ、競争力を強化する方針です。
今後の展望
今回の資金調達を契機に、Raptorsはさらなるグローバル市場への展開とアート事業の進化を加速させていきます。国内でのアート事業の基盤を固めつつ、世界中のアートファンに向けた独自の体験価値を提供することで、「日本発のグローバルアートブランド」としての地位を確立していく考えです。
市場トレンド:拡大を続けるキャラクタービジネス

Raptorsが展開するアートビジネスは、キャラクタービジネス市場の成長と密接に関連しています。近年、アニメやゲームなどのIP(知的財産)を活用した商品化ビジネスが拡大しており、2023年度のキャラクタービジネス市場規模は2兆6969億円に達すると推計されています。
市場の成長をけん引しているのは、「鬼滅の刃」「進撃の巨人」「推しの子」などのアニメ作品のヒットに加え、「ポケモン」「ONE PIECE」「スーパーマリオ」といった長年人気を誇るIPの安定した商品展開です。さらに、「ちいかわ」「おぱんちゅうさぎ」など、SNSを起点とした新たなキャラクターブランドが市場を押し上げる要因となっています。
モノ消費からコト消費へ:キャラクター体験型ビジネスの拡大
従来のキャラクタービジネスは、フィギュアやアパレル、文房具といった物販(モノ消費)を中心に成長してきました。しかし近年は、キャラクターの世界観を体験すること自体に価値を見出す流れが強まり、体験型の消費(コト消費)が拡大しています。カフェや展示会、体験型イベントの増加によって、キャラクターファンが直接その世界観に触れられる場が増え、市場の成長が後押しされました。
この流れは、アートビジネスにも新たな可能性をもたらしています。Raptorsが展開する「GAAAT」は、アートとキャラクターIPを組み合わせることで、キャラクタービジネス市場における体験価値の創出に寄与することが可能です。特に、アート作品のフィジカル化(メタルキャンバスアートなど)や、NFC技術を活用したデジタル連携は、IPホルダーにとって新たなライセンス活用の手段となる可能性があります。
キャラクタービジネス市場の今後とRaptorsの展望
矢野経済研究所の予測によると、2024年度には市場規模が2兆7464億円に拡大する見込みです。特に、SNS発のキャラクター人気の拡大や、中高年層向けのリバイバルコンテンツ(シティハンター、キン肉マンなど)の需要が市場成長を支える要因となると考えられています。
こうした市場の拡大が続く中で、Raptorsは「アート×キャラクターIP」という新たなビジネスモデルを確立し、キャラクター市場におけるアートの価値を高めることが期待されます。アートを通じてキャラクターIPの世界観を広げ、ファンの没入感を高める体験を提供することで、従来にはない形で市場の発展に貢献していく考えです。
企業概要
- 企業名:株式会社Raptors
- 代表者:代表取締役 徳橋 佑輔
- 設立:2021年10月29日
- 所在地: 〒108-0014 東京都港区芝4丁目7−5 芝ビルディング 704
- 事業内容:アート制作、イベント企画・運営
- 公式HP:https://raptors.co.jp/
まとめ
本記事では、デジタル(2次元)とフィジカル(3次元)の境界を超え、新たなアート体験を生み出すブランド「GAAAT」を運営する株式会社Raptorsについて紹介しました。
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