
新卒採用市場において、「内定を得られなかった就活生がゼロから選考をやり直す」という非効率な仕組みが長年の課題とされてきました。
この問題に革新的なアプローチをもたらしたのが、株式会社ABABA(以下、ABABA)です。同社は、最終面接まで進んだ就活生の実績を活かし、新たな企業との出会いを創出するスカウトサービス「ABABA」を展開。さらに、AIを活用した自己分析・面接対策ツール「REALME」により、より公平かつ効率的な就職活動を支援しています。
本記事では、ABABAの事業内容や成長の軌跡、市場への影響について詳しく解説します。
事業内容①:就職活動の「過程」を評価する新卒向けスカウトサービス「ABABA」

株式会社ABABAは、新卒採用市場において「就職活動の過程」を評価する革新的なスカウトサービス「ABABA」を提供しています。
従来の新卒採用では、内定を得られなかった就活生がゼロから再挑戦する必要があり、非効率な仕組みが課題となっていました。
ABABAは、この問題を解決するために、最終面接まで進んだ経験を持つ就活生が、新たな企業からスカウトを受け取れる仕組みを構築。企業は他社の選考を勝ち抜いた優秀な候補者に直接アプローチでき、就活生も過去の実績を活かして一部選考をパスできるなど、効率的に就職活動を進めることができます。
ABABAの仕組みと特徴:精度の高いマッチング

ABABAの最大の強みは、精度の高いマッチングです。最終面接まで進んだ就活生のデータを活用し、企業ごとに最適な候補者リストを作成。これにより、不要なスカウトを削減し、スカウト承諾率や内定獲得率を向上させます。
また、不採用通知を「お祈りエール」として活用し、企業が不採用とした就活生をABABAに推薦できる仕組みを整備。これにより、就活生の心理的負担を軽減し、企業のブランドイメージ向上にも貢献しています。
さらに、企業は、最終面接まで進んだ就活生の能力や適性を客観的に判断できるため、従来の履歴書や学歴偏重の選考に比べて、より公平な採用が可能です。一方、就活生にとっても、過去の経験を評価され、より多くの企業からスカウトを受け取るチャンスが増えます。

事業内容②:AIを活用した自己分析・面接対策サービス「REALME」

ABABAはスカウトサービスに加え、就活生向けの自己分析・面接対策サービス「REALME」も提供しています。
REALMEでは、AIを活用した約20分の模擬面接を通じて、就活生の強みや弱みを定量化。志望企業の選考を突破できる可能性(内定判定)を算出し、具体的な対策を提示します。

REALMEの特徴と利点:最終面接まで進んだ就活生との能力比較が可能

REALMEの強みは、ABABAに蓄積された選考データを活用し、志望企業の最終面接に進んだ就活生と能力を比較できる点にあります。
一般的なAI面接サービスは汎用的なフィードバックを提供するのに対し、REALMEは志望企業ごとの具体的な内定判定や対策ポイントを提示することで、より実践的な就活支援を可能にしています。
さらに、AIによる分析を通じて就活生のスキルや適性を可視化し、適切なフィードバックを提供。これにより、就活生は自身の能力を適切に把握することができ、志望企業への最適なエントリータイミングを見極めることができます。
さらに、企業側もREALMEの利用データをもとに、求める人材の適性を精緻に判断し、より適切な候補者を採用することが可能です。ABABAはこのシステムによって、企業と就活生のミスマッチを大幅に低減し、新卒採用市場における課題解決を加速させています。

ABABAの創業背景:友人が就職活動で苦しんだ経験
ABABAの創業は、「新卒採用市場の構造的な問題を解決したい」という強い想いから始まりました。創業者の久保 駿貴氏は、友人が最終面接まで進んだにもかかわらず内定を得られず、ゼロから就職活動をやり直さなければならなかった経験を目の当たりにしました。
この経験をきっかけに、就職活動の「過程」を評価する仕組みを作れば、新卒採用市場をより効率的かつ公正にできるのではないかと考え、ABABAが誕生します。
従来の新卒採用市場では、最終面接まで進んだ実績が評価されず、就活生は同じプロセスを繰り返す必要がありました。企業側も、新たな応募者をゼロから集めなければならず、採用にかかる労力やコストが大きいという課題がありました。
こうした課題を解決するため、ABABAは「お祈りエール」という仕組みを導入。不採用になった就活生の努力を可視化し、他の企業からのスカウトを受ける機会を提供することで、就活生と企業双方にとって効率的な採用活動を実現するプラットフォームを構築しました。
ABABAの実績:25年卒の利用者数が4万人を突破

ABABAは、2020年の創業以来、新卒採用市場で急成長を遂げています。2024年時点で、登録ユーザー数は4万人に達し、前年比3倍に増加。累計利用企業数は2000社を超え、新卒採用領域のスタートアップとして国内有数の規模に成長しました。
ABABAのスカウトサービスは、多くの企業にとって有効な採用手段として定着しつつあり、スカウトの承諾率や内定獲得率を向上させています。従来の母集団形成型の採用手法と比べ、ターゲットを絞った効率的なアプローチが可能となり、多くの企業が採用プロセスの改善を実感しています。
今後、ABABAはAIを活用したマッチング精度の向上や、企業ごとの採用課題に応じたカスタマイズ機能を強化し、公正かつ効率的な採用プロセスの確立を目指していくとしています。
資金調達:2025年3月シリーズBラウンドで12.5億円を調達

2024年、ABABAはシリーズBラウンドで総額12.5億円の資金調達を実施しました。これにより、累計調達額は18.2億円に達し、新卒採用領域のスタートアップとしては国内最大級の調達額を記録しました。
今回の資金調達では、DBJキャピタルがリード投資家を務め、新たにJPインベストメントが参画。加えて、既存投資家であるSMBCベンチャーキャピタル、三菱UFJキャピタル、デライト・ベンチャーズなども追加出資を行いました。
また、日本政策金融公庫や三井住友銀行、中国銀行からの融資、さらにはSiiibo証券による私募社債発行を活用することで、多角的な資金調達を実現しています。
ABABAは今回の資金を活用し、2026年春卒業予定の学生への支援拡充、AIを活用したマッチング精度向上、新たな採用支援機能の開発を進める予定です。
市場規模:新卒採用支援サービスの市場規模は2022年に約1312億円を記録

矢野経済研究所の調査によると、2022年度の新卒採用支援サービス市場は、サービス提供事業者の売上高ベースで1312億4000万円に達し、前年から7.1%の成長を遂げました。
この成長の背景には、企業の新卒採用意欲の回復に加え、コロナ禍で停滞していた対面式の採用活動が本格的に再開されたことがあります。特に、IT・製造業・コンサルティング業界では、新卒採用の競争が激化し、企業がより多様な採用手法を導入する動きが加速しています。
採用直結型インターンシップが市場に与える影響
2023年4月から、新卒採用のインターンシップ制度が変更され、企業がインターンで得た学生の情報を選考に活用できるようになりました。これにより、企業はインターンシップを通じて、学生のスキルや適性をより深く理解し、効率的な採用プロセスを実現できるようになります。
その結果、就職情報サイトや採用イベントでインターンシップ向け特設ページの開設が増加し、インターンシップを活用する企業も拡大しています。企業側は、優秀な学生と早期に接点を持つことを目的に、インターンシップの活用をますます強化している状況です。
今後、採用直結型インターンシップが本格的に導入されることで、2026年3月卒業生以降の採用市場にはさらなる変化が予想されます。これに伴い、新たな採用支援サービスの開発や市場拡大も進んでいくでしょう。
今後の市場成長予測
2023年度の新卒採用支援サービス市場規模は1385億6000万円に達し、前年比5.6%の成長が見込まれています。さらに、2024年度には1459億7000万円に達し、前年比5.3%の成長が予測されています。
この市場の成長を牽引しているのは、企業の新卒採用意欲の高まりと採用手法の多様化です。特に、AIを活用した適性検査や動画面接、チャットボットによる採用支援など、新技術の導入が進んでいます。企業はこれらのデジタルツールを活用し、より高度なマッチング機能を備えたサービスを導入することで、採用活動の効率化を図っています。
このように、新卒採用支援市場は今後も拡大を続け、企業と学生双方にとって最適な採用環境を提供する基盤として成長していくでしょう。
企業概要
- 企業名:株式会社ABABA
- 代表者:代表取締役社長 久保駿貴
- 設立:2020年10月19日
- 所在地: 〒153-0061 東京都目黒区中目黒一丁目1番71号 KN代官山ビル7階 B号室
- 公式HP:https://hr.ababa.co.jp/ababa
まとめ
本記事では、「就職活動の過程」を評価する革新的なスカウトサービス「ABABA」を提供する株式会社ABABAについて紹介しました。
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