最終更新日 25/04/22
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補助金DXで中小企業の生産性向上・地方創生に挑むStayway

DXIT金融
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(引用:公式HP

日本の中小企業は全企業の99.7%就業者の約7割を支える存在ですが、人手不足生産性の低さDXの遅れ資金調達の難しさといった複数の課題を抱えています。特に地方では人口減少と若年層の都市部流出により人材不足が深刻で、国や自治体が整備する補助金制度も、情報の分散や申請の煩雑さから十分に活用されていないのが実情です。

こうした課題に対し、株式会社Stayway(以下、Stayway)は補助金申請支援に特化したDXサービスを展開しています。

創業者の佐藤淳氏は、コロナ禍で自社の旅行事業が打撃を受ける中、補助金活用で危機を乗り越えた経験をもとに、中小企業の資金繰り支援に可能性を見出しました。申請の複雑さに悩む経営者の声に応える形で、補助金DX支援という新たな事業を立ち上げたのです。

本記事では補助金申請支援をはじめとするStaywayの事業内容などについて解説していきます。

事業内容①:補助金申請支援サービス「補助金クラウド」

(引用:公式HP

Staywayの中核事業である中小企業DX補助金支援サービスは、クラウド型プラットフォーム「補助金クラウド」を通じて中小企業の補助金活用を包括的に支援するものです。補助金クラウドは国や自治体の膨大な補助金・助成金情報を一元管理し、企業ごとに最適な制度をマッチングするとともに、オンライン上で申請書類の作成から提出までをサポートします。

その最大の特徴は、補助金申請プロセスのDX(デジタル化)により従来アナログだった作業を効率化し、申請ハードルを下げている点です。例えば同社は、生成AI(GPT-4)を活用した申請書作成補助機能を提供しており、専門知識がなくとも短時間で質の高い申請書類が作成可能です。また、採択後の資金受取まで1〜2年かかる補助金特有の課題に対応するため、補助金債権の早期資金化サービス「前ほじょくん」も展開しており、採択企業が補助金交付を待たずに資金調達できるようにしています。

Staywayの補助金DXサービスにより、中小企業は複雑な補助金申請から解放され、資金繰りとDX推進の両面で支援を受けられます。申請採択率は80%以上、書類作成時間は平均20時間から約10分に短縮されるなど、高い効率化が実現されました。2024年度上半期には、提携先を通じて約650億円相当の補助金を企業にもたらし、同社の社会的インパクトの大きさが浮き彫りになっています。

補助金クラウドは直接提供だけでなく、金融機関や士業、商工団体などが自社顧客支援のために導入する間接支援モデルを採用しています。この仕組みにより全国への拡大が加速し、リリースから2年弱で導入した金融機関は全国35社以上です。地域金融機関が融資先支援に活用するなど、補助金支援の新たなエコシステムとして機能しています。こうした広がりは、補助金DXサービスに対する実需と社会的ニーズの高さを物語っています。

事業内容②:中堅企業向け「プロフェッショナル×DX事業」


(引用:公式HP

Staywayは中小企業だけでなく、中堅〜大企業に対してもDX支援サービスを提供しています。それが第二の柱であるプロフェッショナル×DX事業で、戦略コンサルタントや公認会計士、M&Aアドバイザーといった各分野のプロフェッショナル人材が参画し、企業の成長課題を伴走支援する事業です。具体的には、以下のような領域で専門性の高いコンサルティングサービスを展開しています。

  • テクノロジー×DX支援: 新規事業のMVP(実用最小限製品)開発からUI/UXデザイン、システム開発、データ分析に至るまで、デジタル技術を活用した事業変革を総合的に支援。特に生成AI(Generative AI)の活用ノウハウを有し、金融機関や一般事業会社へのAI導入をサポートするといった先進的取り組みも行っています。
  • 会計×DX支援: 公認会計士の知見を生かし、企業の財務・会計分野の高度化を推進。決算早期化や管理会計体制の構築、IFRS(国際会計基準)導入支援、IPO準備、税務戦略立案、さらには設備投資の特別償却の活用支援まで、経営基盤強化につながる幅広いサービスを提供しています。
  • M&A×DX支援: 企業のM&Aや事業承継に関するコンサルティングサービスです。具体的にはM&A仲介、財務デューデリジェンス、株式価値評価(バリュエーション)、PMI支援など、M&Aの計画策定から実行・統合まで一貫してサポートします。デジタル技術の活用により、従来属人的になりがちなM&Aプロセスの効率化・透明化も図っています。

プロフェッショナル×DX事業の特徴は、単なる助言にとどまらず、課題解決から実行支援まで一貫して並走する実務支援型コンサルティングである点です。Staywayは社内に多様な専門家チームを擁し、クライアント企業のプロジェクトに深く関与することで、具体的な成果を生み出しています。例えば、ある製造業では業務プロセスのDXを通じてコスト削減と新規事業立ち上げを同時に実現するなど、高い付加価値を提供しています。こうした取り組みにより、同事業は中堅企業の成長戦略を支える推進力として機能しています。

事業内容③:自治体・観光業へのコンサルティング支援「地方創生事業」


(引用:公式HP

Staywayの三つ目の柱は地方創生事業です。こちらでは、創業当初からの観光領域の知見と補助金支援で得たノウハウを融合し、地域経済の活性化に貢献しています。具体的には、地方自治体や観光事業者に対する業務デジタル化支援観光プロモーション支援を展開しています。

自治体向けには、補助金クラウドの技術を応用し、申請受付から審査・交付までの業務プロセスのデジタル化・効率化を行っています。実際に導入された自治体では、補助金の処理期間が大幅に短縮され、制度の活用率も向上しました。

観光プロモーションでは、SNSマーケティング動画制作、ウェブメディア「Stayway Media」を活用した情報発信、現地イベント支援など多様な施策を実施しており、山形県では「東北DC」に連動したセミナーを開催するなど、観光DX支援も積極的に行っています。加えて、宿泊業者へのIT導入補助金申請や集客支援も提供し、コロナ後の観光需要回復を後押ししています。

こうした取り組みを通じてStaywayは、「地域に人を呼び込み、地域で稼ぐ」仕組みを構築、また補助金データと観光ノウハウを掛け合わせた独自の地方創生モデルを展開し、2025年時点で全国20以上の自治体や多数の観光事業者がその支援を受けています。

資金調達:シリーズBラウンドで2.5億円の資金調達を実施

(引用:公式HP

Staywayは近年、事業成長に合わせて積極的な資金調達を進めており、2024年7月にはシリーズBラウンド総額約2.5億円の資金調達を実施しました。これにより、累計調達額は約4億円規模(ベンチャーデット含む、公表ベース)に達しています。

今回の調達では、エクイティ(株式による増資)に加えてベンチャーデット(融資)も活用しており、特に金融機関系の投資家が多数参画している点が特徴的です。これは、Staywayの「金融機関を通じて中小企業支援を実現するモデル」が、資本市場から高く評価されたことを示しています。実際に、あるVC担当者は「補助金・助成金の情報は投資先支援において非常に重要」と語っており、同社の事業価値の高さを裏付けています。

今回調達した資金は、人材採用の強化新戦略「中小企業のデータプラットフォーム構想」の推進に充てられる予定です。補助金DXサービスのさらなる拡充と、新たな開発体制の構築が計画されており、あわせて全方位的な採用活動の強化も表明されています。出資者からも「補助金クラウドが中小企業支援のインフラとなることを期待している」といった声が上がっており、今後の事業拡大に大きな期待が寄せられています。

資金調達概要(2024年7月実施)

  • シリーズ: シリーズBラウンド
  • 調達額: 約2.5億円
  • 引受先:
    • 日本ベンチャーキャピタル(NVCC)
    • みずほキャピタルが運営する投資ファンド
    • 東大創業者の会ファンド
    • さくらインターネット 田中邦裕氏(個人投資)
    • 日本政策金融公庫(新株予約権付融資)

市場規模と成長性:中小企業支援市場の展望

(引用:ノークリサーチ

Staywayが展開する中小企業支援市場は、日本経済において非常に大きな成長余地を持つ分野です。ノークリサーチの調査によれば、中堅・中小企業によるDX・ITソリューション支出の潜在市場規模約1兆2,300億円とされ、その過半を年商5億円未満の小規模企業が占めています。これは、DXが十分に浸透していない中小企業層に大きな底上げの可能性があることを示しており、「日本のDXは中小企業抜きには語れない」と言える状況です。

あわせて、補助金申請支援市場も注目すべき成長領域です。政府はDXや事業承継、地方創生をテーマに、年間数千億円規模の補助金制度を展開しており、これを活用するには専門的なサポートが不可欠です。従来の士業ベースの支援は分散的で、効率面に課題がありましたが、Staywayは補助金支援をデジタルプラットフォーム化することで、業界の構造を変革しています。

すでに同社は35行以上の金融機関と連携し、圧倒的な実績を築いており、補助金DX分野におけるトップランナーといえます。今後は中小企業の世代交代やデジタル化の進展に伴い、「オンラインで使える経営支援サービス」へのニーズが一層高まる見通しです。補助金活用から財務改善IT導入販路支援までをワンストップで提供するStaywayは、急成長する市場の中で確かな優位性を築いています。

会社概要

  • 会社名: 株式会社Stayway(ステイウェイ)
  • 所在地: 大阪本社・大阪市中央区本町4-2-12 野村不動産御堂筋本町ビル8F/東京本社・東京都中央区日本橋茅場町2-8-1(他、仙台・名古屋・福岡に拠点あり)
  • 設立: 2017年7月
  • 代表者: 代表取締役 CEO 佐藤 淳(さとう・じゅん)
  • 公式HP: https://stayway.co.jp/

まとめ

Staywayは補助金申請支援やDX支援などを起点に日本の中小企業が抱える構造的課題に挑んでいます。今後、中小企業支援市場とDX需要の拡大に伴い成長を加速させることが期待されます。

New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。

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