最終更新日 25/04/19
注目企業海外スタートアップ

評価額1500億円、AIで情報漏洩を防ぐCyberhavenの次世代セキュリティ

AIシステム開発
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(引用:Cyberhaven公式)

多くの企業でChatGPTに代表される生成AIツールの活用が進む一方、従業員がこうしたAIに機密情報を入力してしまう「AIへの流出」リスクが新たな課題となっています。リモートワークの定着や人材の流動化も加わり、社内からのデータ漏洩リスクはこれまで以上に高まっている状況です。

こうした背景から、AIを駆使してデータ流出を未然に防ぐソリューションを提供するCyberhaven(サイバーヘイブン)が注目を集めています。

本記事では、Cyberhavenの事業内容やサービスの特長、市場規模など幅広く紹介します。

事業内容:データの流れを可視化するAIセキュリティプラットフォーム「Linea AI」

(引用:Forbes JAPAN 公式サイト)

Cyberhaven社の中核製品は「Linea AI」と呼ばれるAIプラットフォームで、独自開発のLarge Lineage Model(LLiM)を搭載しています。

LLiM:社内データの経路を可視化するグラフ技術

LLiMは社内のあらゆるデータの流れ(誰が・いつ・どこで・何を・なぜ扱ったか)をグラフ形式で記録し、「データの来歴」を把握します。これにより単発のイベントではなく一連のワークフローとしてデータの動きを理解し、機密データが社内からどのようにコピー・共有・変換されていくかをリアルタイムで追跡できるのが特徴です。

例えば、あるファイルを社員AがダウンロードしBに共有、さらにBから他の5人に…という「データの旅路」を余すところなく記録することで、通常の利用パターンから外れた異常を高精度に検知することができます。従来のセキュリティ製品がキーワード検出など部分的な分析に留まるのに対し、Linea AIは内容(コンテンツ)と文脈(コンテキスト)の両面からデータ利用を理解するため、見逃されがちな微妙な逸脱も捉えることが可能です。

Linea AI:画像やスクショの情報まで読み取るAIセキュリティ

Linea AIは最新のマルチモーダルAI技術を備え、テキストだけでなく画像やスクリーンショット、図面などに含まれる情報も解析することができます。

例えば、社員が画面キャプチャに写った機密資料をSNSに投稿しようとすれば、その画像内テキストまで読み取ってリスクを検知します。また、2025年冬のアップデートでは、AIが検知したポリシー違反について自律的に重要度を評価し対応を判断する「Let Linea AI Decide」という機能も追加されました。これによりセキュリティ担当者は膨大なアラートに疲弊することなく、AIが優先度の高いインシデントに絞って通知してくれます。実際、Linea AI導入企業では手動精査が必要なインシデントを90%削減し、データ漏洩関連インシデントの平均対応時間を80%短縮できたとの報告もあります。また、従来ツールでは発見できない重大リスクを毎月50件以上洗い出せたケースもあるとされ、精度と包括性の両立はすでに実証済みです。あるユーザー企業のCSOは「Cyberhavenにより社内データの利用状況が手に取るように分かるようになった。DLPやインサイダーリスク管理を一つのプラットフォームでカバーし、組織全体のデータ使用を理解できるようになった」と評価しています。

こうした高機能にもかかわらず、Linea AIはエンドポイント上では軽量に動作し、業務の妨げにならない点もメリットです。対象顧客は高度な知的財産や個人情報を扱う大企業が中心で、テクノロジー、製造、法律事務所、資産運用、医療など幅広い業界の企業が導入を進めています。Cyberhavenは自社ソリューションを単なるツールではなく、熟練のセキュリティアナリストが組織内に何百人もいるかのような“自律型AIエージェント”と位置付けています。人間の知見とAIのスケーラビリティを兼ね備えたLinea AIは、従来のルールベースでは対応しきれなかった最新の内部脅威から企業の大切なデータを守る革新的プラットフォームと言えるでしょう。

資金調達:2025年4月にシリーズDラウンドにて1億ドルを調達し、評価額は10億ドルへ

(引用:シリコンバレー・インベストクラブ)

Cyberhavenは近年急速に資金調達を進め、事業を拡大しています。2024年6月にはシリーズCラウンドで8,800万ドル(約128億円)を調達し、時点での企業評価額は4億ドルに達しました。さらに2025年4月にはプライベートエクイティ大手のStepStone Group(ステップストーン・グループ)をリード投資家とするシリーズDラウンドにて1億ドル(約146億円)を調達し、評価額は10億ドル(約1500億円)と“ユニコーン企業”の仲間入りを果たしています。今回のシリーズDには既存投資家のKhosla Ventures(コースラ・ベンチャーズ)やRedpoint Ventures(レッドポイント・ベンチャーズ)も参加しており、累計調達額は約2億5千万ドル(約375億円)に上ります。

創業者らは調達資金を活用して製品開発をさらに加速するとともに、M&Aによる事業拡大やグローバル市場へのさらなる浸透を図る計画です。

わずか創業から数年で大手ベンチャーキャピタルやPEファンドから厚い支持を受けユニコーンとなった背景には、同社の技術がデータセキュリティ分野で画期的かつ必要不可欠だと評価されていることがうかがえます。

市場規模:日本国内のサイバーセキュリティ市場、2030年には約39.8億ドルの見込み

(引用:グローバルインフォメーション)

グローバルで見たAI×セキュリティ市場は、今後も非常に高い成長が見込まれます。ある調査によれば、この市場は2024年時点で約250億ドル規模に達しており、年平均20%以上で拡大し続けて2029年には780億ドル規模に達する見通しです。脅威の高度化やゼロトラストセキュリティの浸透、内部不正やデータ漏洩の増加などがこの成長を後押ししており、AIを活用した高度な防御ソリューションへの需要が世界的に高まっています。

一方、日本国内のサイバーセキュリティ市場も拡大傾向にあります。2025年に約22.7億ドルだった国内市場規模は年平均成長率11.9%で成長し、2030年には約39.8億ドルに達する見込みです。政府や企業によるセキュリティ投資が加速し、特にクラウドサービスの普及やDXの進展に伴い、AIを含む先進的なセキュリティ対策の重要性が増しています。

この急成長する市場において、Cyberhavenは「AI駆動型データセキュリティ」という新領域で先行者優位を築いています。同社が提唱する「データ検知と対応(Data Detection and Response, DDR)」のアプローチは、10年前にエンドポイント検知と対応(EDR)が登場し従来型アンチウイルスに代わったのと同様に、データセキュリティ分野のパラダイムシフトになるとの声もあります。実際、著名企業(AppleやGoogleなど)との提携やMicrosoft・IBMからの技術支援を受けるなど、業界内でもその革新性が注目されている状況です。今後、企業の重要データがクラウドやAI上を行き交う時代において、Cyberhavenのようなアプローチがデータ保護の新たなスタンダードになっていく可能性は十分にあるでしょう。

会社概要

  • 会社名:Cyberhaven, Inc.
  • 所在地:米国カリフォルニア州パロアルト
  • 設立:2016年
  • 代表者名:Howard Ting(ハワード・ティン、CEO)
  • 公式HPhttps://www.cyberhaven.com

まとめ

Cyberhavenは、膨大なデータの“流れ”を丸ごと理解するというユニークな発想で、企業の知的財産や機密情報を守るソリューションを実現しました。その革新的技術力と市場からの期待の高さは、わずか数年でユニコーン企業となった事実や世界的投資家からの支持に表れています。今後、生成AIのさらなる普及やサイバー攻撃の巧妙化に伴い、「データを追跡して守る」という同社のアプローチはますます価値を増すでしょう。

New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。

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