最終更新日 24/10/10
国内スタートアップ

【株式会社CULTA】気候変動に対応した品種開発を10倍速で行う、東大発のスタートアップを紹介!

サステナブル農業食品
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株式会社CULTA | Cultivate Future Agriculture

近年、気候変動の影響で農業環境が大きく変わりつつあります。実際に猛暑や異常気象の影響で、これまで当たり前に育てられていた作物が育たなくなることも少なくありません。

そんな中、農業の未来を変える「ディープテック×クライメートテック」として注目を集めているのが、東京大学発のスタートアップ「株式会社CULTA」です。同社は気候変動に対応できる作物を、従来の10分の1の期間で開発する「高速育種技術」を武器に、耐暑性のあるイチゴや酸性土壌でも育つサツマイモなど、未来の食卓を支える品種を世界中に届けようとしています。

今回は、株式会社CULTAの事業内容や具体的なプロジェクト、創業の経緯、資金調達などについて紹介していきます。

事業内容:従来より10倍も早い品種開発に強み

株式会社CULTAの事業は、農業分野における「ディープテック×クライメートテック」スタートアップとして、気候変動に適応した品種開発です。

同社は、2017年11月に東京大学発のベンチャー企業として創業され、農学生命科学研究科のメンバーが中心となっています。特に、通常10年以上かかる品種開発を約2年に短縮する「高速育種技術」が最大の強みです。

たとえば、耐暑性の高いイチゴ品種や酸性土壌でも育つサツマイモの品種開発を進めており、世界中で気候変動に適応した農業生産を実現しようとしています。また、自社品種の開発に加え、大手食品企業と協力し、農産物の耐暑性向上に関する共同研究も実施中です。

キリンとビールの原料の共同研究

ビールの原材料「ホップ」の屋内栽培技術を、CULTA社と共同で確立 | 2024年 | キリンホールディングス
(出典:https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2024/0809_02.html

株式会社CULTAは、キリンホールディングスと共同で「ホップの育種・栽培技術」に関する研究を進めています。

**ホップとは、ビールの主原料で、特に冷涼な気候を好む植物です。しかし、気候変動の影響でその生産性が低下しつつあり、世界中のホップ産業が危機に直面しています。

同社は、この状況に対応するため、暑さや乾燥などの環境ストレスに強い新品種を開発中です。今後、育種・栽培技術の研究を加速させるとしています。

キリンホールディングスとの気候変動に適応した「ホップの育種・栽培技術」に関する共同研究のお知らせ

**スペインを拠点にLEDライトを利用してホップを生産するスタートアップ、ekonokeも当サイトで紹介しています。合わせてご覧ください。

アジアに向けたイチゴの生産

(出典:https://culta.jp/service

現在、株式会社CULTAはアジア市場に向けた独自品種の*イチゴを開発し、マレーシアでの現地生産を進めています。2024年には試験生産を開始し、9月から香港やシンガポールでの試験販売を予定しています。

この成功を足がかりに、ASEAN地域や世界へ生産と販売を拡大していく計画です。

*ニューヨークを拠点に植物工場で日本のイチゴを生産するスタートアップ、Oishii Farmも当サイトで紹介しています。合わせてご覧ください。

創業の経緯:フィリピン留学中に芽生えた「食」への関心

(出典:https://forbesjapan.com/articles/detail/73979

株式会社CULTAが創業されたのは、野秋 収平(のあき しゅうへい)氏が東京大学大学院の農学生命科学研究科に在学中の2017年でした。ここでは、彼が同社を立ち上げた経緯等を紹介していきます。

農業への関心はフィリピンに留学中に芽生えたそう。現地で口にした果物が美味しくなく、「日本の食は世界でも強みになるのでは」と考え、「食」の分野で日本の新しいブランドをつくり、グローバルに展開したいという思いを持つようになったと言います。

その農業への関心から、東京大学大学院の農学生命科学研究科に進学。大学院にてスマート農業の研究に携わります。その後、「品種に関する技術を活用して、世界に勝てる日本の食のブランドをつくりたい」と考え、起業を決意したそうです。

J-POWER | 電源開発株式会社 | GLOBAL EDGE(グローバルエッジ) │ Opinion File 最先端技術で挑む日本発の農作物ブランド野秋 収平

資金調達:更なる品種開発に向けて着実に調達か

株式会社CULTAは、これまで2度の資金調達が発表されているいますが、どちらも調達額に関しては公表されていません。ここでは、その2度の調達について、公表情報をまとめています。

<2023年6月>

調達額:不明
出資元:リアルテックファンドおよびFIRST DOMINO株式会社
目的:高速育種技術の研究開発、イチゴ新品種の開発、グローバルな生産に向けた日本・東南アジア地域での実証実験のため

<2024年6月>
調達額:不明
出資元:Archetype Ventures、UntroD Capital Japan(旧・リアルテックホールディングス)、SMBCベンチャーキャピタル
目的:アジアでの事業展開の加速、イチゴ独自新品種の開発、気候変動に適応した品種に関する企業との共同研究のため

将来展望:日本から世界に通用するブランドを目指す

(出典:https://culta.jp/service

株式会社CULTAが目指すのは、日本から世界に通用する「プレミアム農作物ブランド」を作り上げることだそう。たとえば、「あまおう」や「シャインマスカット」のような日本生まれの品種は世界中で人気ですが、品質が一定でないという課題がありました。

そこで、同社は「品種」と「品質保証」の2つに力を入れ、ブランド価値を高めていきます。まず「品種」において、日本は優れた品種開発の実績を持ちます。その強みを活かし、高速育種技術などで気候変動に対応した作物を開発していくとのこと。

次に「品質保証」では、契約している農家で作られた農作物をすべて買い取り、品質管理から販売まで一貫して行う仕組み(End-to-End Model)を築いています。この「End-to-End Model」により、消費者は常に高品質な農作物を手にすることが可能です。

同社は、上記の「品種」と「品質保証」の2つを軸に、「プレミアム農作物ブランド」を作り上げることを目指しているようです。

参照:東大発農業スタートアップCULTAは、何をする会社?

会社概要

会社名:株式会社CULTA (CULTA Inc.)

代表取締役CEO:野秋 収平

所在地:〒184-0012 東京都小金井市中町2-24-16 農工大・多摩小金井ベンチャーポート303

WEBサイト:https://culta.jp/

まとめ

本記事では、東京大学発のスタートアップで、「ディープテック×クライメートテック」として注目を集めている株式会社CULTAついて紹介してきました。

New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。

ニューヨークを拠点に植物工場で日本のイチゴを生産するOishii Farmや、スペインを拠点にLEDライトを利用してホップを生産するekonoke等、国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。

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