Terra Drone株式会社は、測量や点検、農業をはじめとした幅広い分野でドローンソリューションと運航管理システム(UTM)を提供する、日本の代表企業です。2024年11月29日には東京証券取引所グロース市場に上場し、国内外でのさらなる事業拡大を目指しています。
本記事では、Terra Drone株式会社の事業内容や資金調達、市場規模について詳しく解説します。
事業内容::多岐にわたるドローン活用分野
Terra Droneは、以下の5つの事業を中心に展開。測量や点検、農業などの分野でドローンソリューションと運航管理システムを提供しています。
<測量事業>
Terra Droneの測量事業では、自社開発のレーザードローン「Terra Lidarシリーズ」を活用し、以下のサービスを提供しています。
- 高精度な3次元測量データの取得
- 図面作成や3Dモデル構築(BIM/CIM対応)
- 専用ソフトウェアによる画像処理
- この技術により、従来の測量プロセスを効率化し、土木や建設プロジェクトにおけるデジタル化を推進しています。
<点検事業>
石油化学プラントやFPSO(浮体式石油生産貯蔵設備)など、過酷な環境での点検を可能にしています。超音波板厚検査を行う「Terra UTドローン」を活用し、効率的かつ安全な点検ソリューションを提供しています。
<運航管理事業(UTM)>
Terra Droneは、空の交通を管理するための運航管理システム「Terra UTM」を開発。ドローンや空飛ぶクルマの運航を効率化・安全化し、物流や都市交通におけるドローン活用を支えています。
<農業事業>
インドネシアやマレーシアを中心に、ドローンを用いた農薬散布サービスを展開。高精度な散布が可能で、農業の効率化を支援しています。
<海外事業>
同社は、アジア、欧州、中東などに複数の拠点を設け、それぞれの地域でのドローン技術活用や事業開発を積極的に行っています。
上場後の展望:海外展開と収益性向上を目指す
Terra Droneは、上場を「スタート地点」として位置付け、次なる大きな成長ステージを見据えています。具体的には、同社はこれから国内市場だけでなく、グローバル市場でのさらなる拡大を積極的に推進する計画です。その野心的な目標と戦略がいま注目を集めています。
目指すは「海外売上50%超」:世界を舞台に事業拡大
現在、Terra Droneの海外売上比率は39%ですが、徳重徹社長は「5年、10年かからず、すぐに50%を超える」と明言しています。この目標の達成は、単に売上構成の転換にとどまらず、同社が世界市場で確固たる地位を築き、ドローン産業のリーダーシップを発揮することを意味しています。
特に注力しているのは、欧州や中東、アジアといった急成長中の地域。例えば、インドネシアでの農業ドローンサービスや、欧州・カナダでの運航管理システム「UTM」の展開はすでに軌道に乗っています。こうした成功事例をもとに、同社はさらに多くの国・地域でのビジネス展開を加速させる計画です。
グローバル市場を見据えた長期的な成長戦略
世界のドローン市場は、インフラ点検や農業、災害対応といった分野で急速に成長しています。Terra Droneは、こうした市場環境の変化を捉えた上で、以下のような長期的なビジョンを掲げています。
- グローバル展開の深化:海外での事業拠点を増やし、各地域のニーズに応じたサービスを提供。
- 技術革新の加速:ドローン運航管理システム(UTM)や高精度測量技術の開発をさらに進める。
- 収益構造の強化:既存事業の拡大とともに、出資先企業との連携を深め、新たな収益源を創出。
Terra Droneは、上場による資金調達を成長エンジンとして、世界市場での存在感をさらに高めていく方針です。「空から、世界を進化させる」というビジョンを掲げる同社が、次にどのような成果を生み出すのか、今後の活躍に注目です。
資金調達の実績
<シリーズA(2021年2月)>
- 調達額:15.1億円
- 引受先:国際石油開発帝石株式会社、南都キャピタルパートナーズ
- 目的:測量やインフラ点検における技術開発に活用
<シリーズB(2022年3月)>
- 調達額:80億円
- 引受先:三井物産、SBIインベストメント、東急不動産HD、九州電力送配電、西華産業、JOIN(海外交通・都市開発事業支援機構)
- 目的:ドローン運航管理システムや国際展開の強化
市場規模:急成長するドローン市場
ドローン技術は急速に進化しており、その市場規模も年々拡大しています。特に「ドローンソリューション市場」と「UTM(運航管理システム)市場」の成長は注目されており、今後、商用ドローンの活用が拡大する見込みです。以下では、これらの市場規模と成長率について、同社公式サイトをもとに詳しく解説します。
ドローンソリューション市場:年平均成長率33%で急成長
「ドローンソリューション市場」とは、商業や産業分野でドローンを活用するためのさまざまなソリューションを指します。具体的には、インフラ点検、測量、物流、農業、災害対応など多岐にわたる分野で利用されています。
市場規模の予測
- 2020年には約4億米ドルの市場規模でスタート。
- 2023年には13億米ドルに成長。
- 2033年には240億米ドルに達する見込みで、年平均成長率(CAGR)は+33%と非常に高い伸びを見せています。
成長要因
- 目視外飛行の規制緩和: ドローンの目視外飛行(BVLOS)が可能になることで、商業利用の幅が広がっています。
- 技術革新: 高精度な測量データ取得や自動飛行技術の進展により、効率的な運用が可能に。
- 需要の多様化: 災害対応や物流、農薬散布といった新たな分野での採用が加速。
UTM市場:年平均成長率25%と予測
「UTM(Unmanned Traffic Management)」市場は、ドローン運航の安全性や効率性を確保するための運航管理システムを提供する市場です。特にEUをはじめとする諸国での導入が進み、商業ドローンの普及とともに市場規模が拡大しています。
市場規模の予測
- 2020年には約3億5000万米ドル規模。
- 2024年には約10億米ドルを突破。
- 2033年には60億8200万米ドルに到達すると予測され、年平均成長率(CAGR)は+25%。
成長要因
- EUでのUTM導入義務化: 2023年にEU加盟国でUTM導入が義務化され、他地域にも波及。
- 物流や都市交通への適用: ドローン物流や都市部での交通ソリューションへの活用が本格化。
- 規制整備の進展: ドローン運航管理における法整備や国際基準の確立が市場拡大を後押し。
市場全体の見通し
ドローンソリューション市場とUTM市場の成長は、次世代の空のインフラを構築するうえで重要な要素です。目視外飛行の規制緩和や技術革新が進む中、両市場とも急速な拡大を遂げています。
特に、ドローンソリューション市場はCAGR+33%と高い成長率を記録しており、2033年には240億米ドル規模に達する見込みです。一方、UTM市場も年平均成長率+25%で拡大しており、60億8200万米ドル規模に成長することが期待されています。
これらの市場拡大により、物流、農業、災害対応など多様な分野でのドローン活用が進み、商業利用の幅がますます広がると考えられます。日本国内でも、国土交通省が推進する「i-Construction」や「スマート農業」などの取り組みを通じて、ドローン技術の活用がさらに進展するでしょう。
今後の技術進化や規制整備に注目しながら、ドローン市場の動向を追い続けることが重要です。
会社沿革
2016年:設立と初期展開
- 2月:Terra Drone株式会社を設立。
- 9月:九州拠点を開設。
- 11月:ベルギーのUTM開発企業Unifly NVへ初出資。
2017年~2019年:国内外での拡大
- 2017年
- 5月:北海道拠点を開設。
- 8月:画像処理ソフト「Terra Mapper」販売開始。
- 2018年
- 9月:「Terra Roofer」サービス開始。
- 2019年
- 1月:測量用レーザードローン「Terra Lidar」販売開始。
- 7月:オランダのRoNik Inspectioneering B.V.を子会社化。
2020年~2022年:世界的な評価と進化
- 2020年:Drone Industry Insightsでドローンサービス企業世界ランキング1位を獲得。
- 2022年:オランダ子会社が国際的表彰「Tank Storage Awards」で金賞受賞。
2023年~2024年:技術革新と国際展開
- 2023年
- サウジアラビアに「Terra Drone Arabia」を設立。
- マレーシアで農薬散布事業を拡大。
- 2024年
- 1月:ISMS認証(ISO27001)取得。
- 5月:SLAM技術搭載の「Terra SLAM RTK」など、最新製品を販売開始。
会社概要
- 会社名:Terra Drone株式会社
- 設立年:2016年2月
- 創業者:徳重 徹
- 拠点:東京都渋谷区渋谷2丁目12-19 東建インターナショナルビル3階
- URL:https://terra-drone.net/
まとめ
本記事では、幅広い分野でドローンソリューションと運航管理システム(UTM)を提供するTerra Drone株式会社について紹介しました。
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