核融合エネルギーとは、CO2の排出をゼロにする革新的な発電システムです。核融合エネルギーによる発電が実現化されれば、脱炭素社会に大きく貢献します。
EX-Fusionは、核融合エネルギーの実用化を目指す国内唯一の民間企業です。同社は、核融合エネルギーによる発電を可能にする装置を、光産業創生大学院大学と共同開発しました。
核融合エネルギーによる発電は、原子力発電より非常に安全性の高い方法となっています。法規制の整備や発電技術の向上が必要ですが、将来を支える発電システムとなるでしょう。
核融合エネルギーを使う3つのメリット
核融合エネルギーとは、水素の同位体の核を反応させたときに得られるエネルギーです。
CO2を排出しないため、脱炭素社会の重要性が再認識されている現在、将来性が高く評価されています。
以下で、核融合エネルギーのメリットについてみていきましょう。
- 化石燃料に依存せず環境に優しい
- 無尽蔵の燃料を確保できる
- 高い安全性が担保されている
化石燃料に依存せず環境に優しい
核融合エネルギーは、水素の同位体である重水素と三重水素とで、核融合を起こしたときに得られます。重水素と三重水素を燃料とするため、化石燃料に依存しません。
また、1グラムの燃料から、石油8トンにも相当する莫大なエネルギーを発生できる点も、核融合エネルギーの特徴です。
EX-Fusionは、「磁場閉じ込め式」や「レーザー方式」という、核融合エネルギーで得た大電力を供給する方法についても研究を進めています。
無尽蔵の燃料を確保できる
核融合エネルギーの燃料は、重水素と三重水素の2つです。重水素は海水中に豊富に存在しており、燃料がつきる心配は要りません。
もう1つの燃料である三重水素は、天然にはごく少量しか存在しませんが、反応後の物質で作ることができます。
ただし、反応の最初に必要な三重水素は、自然から確保しなければなりません。その採取方法についてEX-Fusionで研究が進められており、実用化までの課題の1つです。
三重水素の発生原理：重水素と三重水素の核融合反応中に発生した中性子に、リチウムを当てることでできる。
高い安全性が担保されている
同じ核を扱うエネルギーでも、核融合反応は原子力発電にくらべて、非常に安全性が高くなっています。
原子力発電では燃料がウランであるのに対し、核融合反応では自然にも多い水素が燃料です。また、原子力発電では事故発生時に暴走が起きやすい一方、核融合反応では装置を停止するだけで暴走を防げます。
発電所から廃棄物が漏洩したときも、核融合反応であれば放射性レベルが低く問題が起こりにくい点も最大の特徴です。現在、核融合エネルギーの実用化にむけて、安全面に関する法規制が整備されています。
研究概要：核融合反応を可能にする装置の開発
核融合反応で安定して発電を持続するには、燃料の重水素と三重水素をレーザーで圧縮・加熱する行程を繰り替すことが必要です。
この行程を実現するためにEX-Fusionは、燃料を一定周期で供給する装置・動いている燃料にレーザーを当てる装置の2つを作りました(図1)。1秒間に10回の頻度で燃料を落下させ、その軌道をセンサーで追跡、レーザーで照射します。
この装置により、少なくとも2時間の安定した核融合反応が可能になりました。今後は、燃料をより高速で供給する点や、より長時間安定にシステムを作動させる点を改良していく予定です。
資金調達：2023年シードラウンドで18億円を達成
EX-Fusionは2023年にシードラウンドで、総額18億円の資金調達を達成しました。主な株主は、三菱UFJキャピタルやSMBCベンチャーキャピタルなどです。
同社は、2023年に大阪大学と東京工業大学との協同研究所を設立しました。自然エネルギーを使った発電の需要性が高まっている現在、今後も発展していくでしょう。
市場規模：2030年に核融合の世界市場は20億米ドルに成長
アミュターゼ社の予想では、2030年に核融合の世界市場が20億米ドルまで成長するとしています。
というのも、核融合エネルギーはCO2を排出しないため、温暖化問題を解決できるからです。また、少ない燃料で膨大なエネルギーを生み出すため、人口爆発によるエネルギー需要に対応できるとされています。
核融合エネルギーによる発電は大掛かりな装置が必要になるため、国家間の協力が不可欠です。国際的な研究により実用化が進むにつれて、核融合エネルギーの需要は高まっていくでしょう。
核融合エネルギーはまだ実用化にいたっておりません。
安全面に関する法規制の整備や、スケールアップのための技術向上、反応初期の三重水素の確保などが必要です。
EX-Fusionは、核融合エネルギーが新しい発電システムとして認定されるよう、装置の性能向上に努めています。研究内容は、発電の精度や安全性の確保、生産キャパシティへの対応などです。
現在、核融合エネルギーの開発は全世界でおこなわれています。国際研究が必要とされており、日本唯一の核融合反応の研究所である同社は、海外展開も視野に入れているでしょう。
沿革・会社概要
