
英語がビジネスで不可欠なスキルとなる中、日本の英語教育では「話す」力の育成と評価方法が長年の課題でした。従来は筆記中心の試験や高額な対面テストに頼らざるを得ず、効果的なスピーキング指導が十分に行われてこなか
こうした状況を背景に登場したのが、早稲田大学発のスタートアップ株式会社エキュメノポリス(以下、エキュメノポリス)です。
同社は最先端のAI技術を活用し、英語スピーキング力を手軽かつ的確に診断・向上できるサービス「LANGX Speaking」を提供しています。これにより、日本の学習者やビジネスパーソンが抱える「英語で話すことへの不安」を解消し、グローバル人材育成に貢献しようとしています。
事業内容:AI英会話「LANGX Speaking」

LANGX Speaking(ラングエックス・スピーキング)は、AI会話エージェントとの対話を通じて英会話力を診断・トレーニングするオンラインサービスです。利用者はパソコンやタブレットからいつでも受験でき、事前予約も不要でAIキャラクターが即座に会話練習の相手を務めます。テスト時間はわずか10~20分程度で、受験者の現在の英語力を手軽にチェック可能です。
会話はインタビューやロールプレイ形式で進み、受験者が緊張しないよう雑談でリラックスさせるところから始まります。対話中、AIが相槌を打ったり沈黙を待ったりと人間さながらの応答を行い、回答に詰まれば別の話題に切り替えて会話を促します。受験者の発話内容に応じて質問の難易度も自動調整され、まるでリアルな面接官との対話のような臨場感を実現しています。

こうした自然な対話を通じて収集した音声データをAIが解析し、英語のスピーキング力を6つの観点(語彙の豊富さ・文法の正確さ・流暢さ・発音の良さ・インタラクティブ性・一貫性)で自動評価します。評価結果は国際基準CEFRに照らしたレベル(A1~C2相当の7段階)で示されるうえ、各観点ごとの強み・弱みが詳細なレポートとしてフィードバックされます。
例えば総合評価に加え、「文法的正しさ」「やり取り(対話の双方向性)」などの項目別スコアがレーダーチャートで提示され、どの分野を強化すべきか一目で分かります。さらに評価の根拠となる受験者の発話傾向や、次に取り組むべき学習課題のアドバイスまで提供されるため、テスト受験自体が学習につながる設計です。採点アルゴリズムの精度も極めて高く、専門家による面接テストの判定精度を上回る性能を達成しています。このように「診断」と「トレーニング」が一体化したサービスとなっており、従来は年に一度程度だったスピーキング力診断を低コストで継続的に実施できる点が大きな特徴です。
他にも同社は、英文ライティング力を鍛える「LANGX Writing」や、自社の対話型AIプラットフォーム「EQU AI」を活用した新サービスの開発も視野に入れています。現在は英語学習者向けのサービスに注力していますが、将来的には来日外国人向けの日本語学習版や、企業の人材育成・研修への応用など、他言語・他領域への展開も進行中です。実際、早稲田大学の英語授業「Tutorial English」で正式採用された実績を皮切りに、千葉県・岐阜市の中高でも実証実験が始まるなど教育現場で成果を上げています。さらに企業研修向けには人材育成企業との提携を通じ提供が開始されており、英語初級者からビジネスパーソンまで幅広い層が自分のペースでスピーキング練習と能力伸長に取り組める環境を整えています。
資金調達:Pre-Aラウンドの2ndクローズにて総額約2.5億円の資金を調達

エキュメノポリスは、2025年3月10日Pre-Aラウンドの2ndクローズにて総額約2.5億円の調達を実施しました。今回の資金調達をもとに、LANGX事業とプラットフォーム事業のさらなる成長加速に取り組んで参りますと発表しています。
この資金により同社は、「LANGX」事業の販路拡大と研究開発体制の強化、そしてプラットフォーム事業の開発強化に注力する計画です。創業期から早稲田大学や政府系機関の支援を受けており、研究開発力の高さが投資家から評価されています。今後も調達資金を活用して人材採用やR&Dを加速し、事業成長を一層推進していく構えです。
【本資金調達概要】
・シリーズ
Pre-Aラウンドの2ndクローズ
・調達方法
第三者割当増資
・調達額
2.5億円
・引受先(順不同)
- QBキャピタル合同会社・株式会社NCBベンチャーキャピタルが運営するQB第二号投資事業有限責任組合、
- 静岡キャピタル株式会社が運営する静岡キャピタル9号投資事業有限責任組合
市場規模:オンライン英会話ビジネス2030年には3,500億円規模に達するとの予測

英語教育・EdTech分野の市場は世界的に拡大を続けています。国内では語学ビジネス市場全体の規模が2023年度で約7,841億円に達したと推計され、コロナ禍後の需要回復やオンライン化の進展で今後も堅調な成長が見込まれます。こちらのグラフは2017年に1,100億円規模だったオンライン英会話ビジネスの市場が2021年には2,450億円規模へと倍増したことを表すグラフです。これは英会話ビジネスの中でオンライン英会話分野の伸びが特に著しいことを表しています。このオンライン領域は年平均10%以上の成長率でさらに拡大すると予想され、2030年には子ども~大人向けを含めた国内語学クラス市場が3,500億円規模に達するとの予測もあります。
一方、世界の英語学習市場を見ると2023年時点で約399.8億ドル(約5兆4千億円)と巨大で、2034年には779億ドル規模まで成長する見通しです。この背景にはグローバルビジネスにおける英語需要の高まりや、低コストで学習できるAI英会話アプリの普及などが挙げられます。また技術面でもAIや音声認識の進化により、双方向の英会話練習や自動評価が容易になったことが市場を後押ししています。
こうした中、会話AI技術で差別化を図るエキュメノポリスは、有望なEdTech企業の一つとして国内外から注目される存在です。同社サービスは教育機関のみならず企業の研修・人材育成分野への導入も期待されており、英語人材ニーズが高い日本市場において大きな成長ポテンシャルを秘めています。
会社概要
- 会社名: 株式会社エキュメノポリス
- 所在地: 〒162-0042 東京都新宿区早稲田町27 早稲田大学グリーン・コンピューティング・システム研究センター301
- 設立: 2022年5月2日
- 代表者: 代表取締役 松山 洋一
- 公式サイト: https://www.equ.ai
まとめ
本記事では、AIを活用した革新的な英語スピーキング診断・トレーニングサービス「LANGX Speaking」を提供する株式会社エキュメノポリスについて紹介しました。
「LANGX Speaking」は、早稲田大学をはじめとする教育機関での採用実績や国際的評価を受けています。今後は多言語対応や海外展開も見据え、「人とAIが共に進化する社会」の実現を目指しており、ビジネスパーソンにとっても、効率的に英語力を伸ばせるツールとして、人材育成や競争力強化に貢献するサービスです。今後ますます進化を遂げるLANGXシリーズに注目しつつ、AI時代のスマートな語学学習でグローバルに活躍できる人材育成を目指してみてはいかがでしょうか。
New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。
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