最終更新日 25/04/25
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自治体DXとマイナンバー活用の防災・行政を変革「ポケットサイン」

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(引用:公式HP

日本は災害大国であり、自治体には迅速かつ的確な情報提供が求められています。一方、行政サービスの多くは依然として紙や窓口対応が主流で、デジタル化の余地が大きく残されています。

今回紹介するのはポケットサイン株式会社(以下、ポケットサイン)です。同社はこうした背景の中、自治体公式アプリ「ポケットサイン」とマイナンバーカード対応の電子申請基盤「POCKETSIGN Verify」を通じて、住民の安全と利便性を同時に支えるソリューションを提供しています。

2022年創業の同社は、「信用の摩擦をゼロにする」を掲げ、本人確認と情報配信を軸に自治体DXと防災力強化を推進しています。本記事では、2つの主力サービスの特徴や導入事例、住民・自治体双方にもたらす価値、そして関連市場の展望について分かりやすく解説します。

事業内容①:自治体向け公式アプリ「ポケットサイン」

(引用:公式HP

自治体向けスーパーアプリ「ポケットサイン」は、防災情報から生活サービスまでさまざまな行政サービスを1つのアプリに集約できるプラットフォームです。

主な特徴

「ポケットサイン」には以下の2つの特徴があります。

マイナンバーカード連携による本人確認機能

「ポケットサイン」の特筆すべき機能の一つが、マイナンバーカード連携による本人確認です。利用者は初回登録時にスマートフォンでカードを読み取り、デジタル身分証を発行します。これにより住所や年齢といった属性情報が紐付き、自治体は特定の対象者にパーソナライズされた情報配信が可能です。たとえば、地区限定の避難勧告や子育て世帯向けの保育案内を必要な人にだけプッシュ通知できるため、情報の精度と到達率が向上。さらに、広報紙の一斉配布が不要になり郵送コストの削減にもつながります。

・「ミニアプリ」方式で便利なワンストップ窓口

もう一つの特徴は、多機能を柔軟に追加できる「ミニアプリ」方式を採用している点です。自治体は自前で大規模アプリを開発することなく、ポケットサイン上に必要な機能だけを選んで導入できます。これにより、住民は1つのアプリから緊急速報、防災マップ、イベント案内、ゴミ出しカレンダー、地域クーポンなど日常生活に役立つ情報サービスを一括で利用可能です。従来バラバラに提供されていた情報が集約され、便利なワンストップ窓口として機能します。さらに、他社サービスとのAPI連携やOEM提供にも対応し、既存の自治体システムとの統合運用もスムーズに行えます。

宮城県の全域導入事例と防災効果

「ポケットサイン防災」は、宮城県内全35市町村で公式アプリとして導入され、県民の3人に1人以上が利用する規模に達しています。住民は避難所に掲示されたQRコードを読み取るだけでチェックインが完了し、避難者名簿作成の大幅な効率化が可能です。Lアラートとの連携により、自治体が一度発信した災害情報が自動でアプリに同期・通知される仕組みも整備されています。さらに、アンケート機能を使って避難所ごとのニーズ(物資・要介護者情報など)をリアルタイムで把握できるなど、避難所運営のデジタル化にも寄与しています。

高齢者にもやさしい設計と普及効果

アプリのUIはシンプルで視認性が高く、利用者の約6割は50代以上という実績も。高齢者を含む幅広い世代が安心して使える設計となっており、デジタルデバイドの解消にも貢献しています。「ポケットサイン」は、防災と日常生活サービスを統合した地域密着型スーパーアプリとして、住民と自治体の双方に実用的な価値を提供するソリューションです。

事業内容②:本人確認・電子申請基盤「POCKETSIGN Verify」

(引用:公式HP

「POCKETSIGN Verify(ポケットサイン・ベリファイ)」は、マイナンバーカードを活用してオンライン本人確認と電子申請を実現するプラットフォームです。公的個人認証(JPKI)を利用し、スマートフォンでマイナンバーカードを読み取るだけで電子署名付き申請が可能になります。

機能概要

POCKETSIGN Verifyには以下のような機能が備わっています。

厳格な本人確認マイナンバーカードに基づく電子証明書で、紙の申請書における対面確認や押印に相当する本人確認をオンラインで実施。

電子署名の自動付与:申請内容に住民本人の電子署名を加えることで、改ざん防止と本人性担保を両立

自治体業務の効率化申請書類の郵送や目視確認が不要になり、人的ミスと業務負担を削減。

API連携で柔軟に導入可能民間企業や他サービスとも接続できる汎用性の高い設計。

利用メリット

利用する上でのメリットは大きく分けて2つあります。

1.住民側の利便性向上

住民にとっても、POCKETSIGN Verifyによる電子申請は大きなメリットがあります。これまで平日に役所へ出向いたり郵送手続きをしたりする必要があった行政手続きが、スマホひとつでの完結が可能です。例えば子育て関連の給付申請なども自宅から行えれば育児中の負担軽減になりますし、引越し時の住所変更手続きもオンラインで一括処理できれば転居者の負担は大いに減ります。また、マイナンバーカードによるログイン一つで複数の手続きを連携処理できるため、「ワンストップサービス」の実現にもつながります。

2.セキュリティの万全化

セキュリティ面でも、公的個人認証の電子署名は改ざん耐性が高く第三者によるなりすましを防げるため、利用者は安心して個人情報を送信可能です。ポケットサイン社自体も情報セキュリティマネジメントの国際規格ISO/IEC 27001認証を取得しており、プライバシー保護に万全を期しています。

導入実績

POCKETSIGN Verifyは自治体向けだけでなく、民間企業向けのeKYC(オンライン本人確認)にも活用できる汎用的なプラットフォームです。実際、開発者向けサービス「PocketSign Platform」上で提供されており、外部のサービス提供者がAPIを通じてこの本人確認機能を組み込むことが可能です。その利便性と信頼性から、マッチングアプリ「Pairs」(年齢確認等に利用)やカラオケチェーン「まねきねこ」(会員登録)、法人カードサービス、官民さまざまな分野の企業で採用が進んでいます。公的個人認証を活用した本人確認インフラとしては国内でも先進的な事例であり、「次世代の信頼インフラ」を目指す取り組みとして注目されています。

このように「POCKETSIGN Verify」は、行政DXに不可欠な本人確認インフラとして、信頼性・利便性・柔軟性の3要素を兼ね備えた基盤です。自治体だけでなく民間企業でも採用が進んでおり、マイナンバーカードを活かした“次世代の信頼インフラ”として期待が高まっています。

資金調達:シリーズBラウンドで5.8億円を調達、累計額は約13億円に

(引用:公式HP

ポケットサインは、2025年4月22日にシリーズBラウンドで5.8億円を調達し、累計資金調達額は約13億円(デットファイナンス含む)に達しました。Cygames Capitalや自治体向け事業に実績のある株式会社ホープなどが出資し、特にホープ社とは資本業務提携を結んで全国自治体への展開力を強化しています。

こうした資金とパートナーシップを得てポケットサイン社は、全国の自治体への導入支援体制を拡充するとともに、民間企業向けの本人確認サービス展開地域企業との共創によるサービス開発を加速させる計画です。

【資金調達概要】

シリーズ: Bラウンド

調達額: 5.8億円

引受先:

  • ジャフコ グループ株式会社(リード)
  • 株式会社Cygames Capital
  • 株式会社ホープ
  • 山口キャピタル株式会社

市場規模:自治体アプリ普及とマイナンバー活用が進める行政DXの市場動向

(引用:株式会社G-Place

現在、全国の自治体では公式アプリの導入が急速に進んでいます。株式会社G-Placeの調査によると2022年末時点で全体の約88.8%(1,747自治体中1,551自治体)が何らかのスマホアプリを提供しています。この5年間で公式アプリ数は倍増し、総務省の自治体DX推進も後押しして、防災や子育て分野での新規導入が特に増加しています。いまや、自治体が防災アプリを持つのは“当たり前”になりつつあり、今後はサービスの高度化や複数機能の統合による「スーパーアプリ化」が進むと予想されます。こうした中、ポケットサインのような統合型プラットフォームは、そのニーズに合致する存在です。

(引用:PR TIMES

また、NTTドコモ子会社株式会社DearOneの調査では、自治体提供アプリの利用者のうち約63%が50代以上で、60代以上が41.7%を占めています。利用目的の最多は「防災情報」(約45%)であり、ITに不慣れとされるシニア層も、必要性の高い情報には積極的にアクセスしていることが分かります。これは、適切な設計と有用な機能があれば、高齢者層にもデジタルサービスが広く浸透させることが可能です。

一方、マイナンバーカードの活用市場も大きく広がりつつあります。2023年度末にはカードの交付枚数が約9,695万枚に達し、人口比で8割近くとなりました。政府は2025年度末までに行政手続きの完全オンライン化を目指しており、マイナンバーカードの公的個人認証は、本人確認や電子署名の基盤として今後さらに重要な役割を担います。民間でもeKYC(オンライン本人確認)や通信契約、銀行口座開設などで活用が進んでおり、デジタルID市場は今後の成長が有望視されています。

ただし、制度の拡大には信頼性の確保が不可欠です。2023年には一部で情報の誤紐付け問題が報じられたことで、国民の不安が高まりました。今後の市場成長には、安心して利用できる仕組みの構築が求められます。ポケットサインのように、公的認証基盤を活用しながら、ユーザーが情報提供の範囲を制御できる設計や、ISO/IEC 27001認証を取得した堅牢な情報管理体制は、行政DXを支えるモデルとして今後さらに注目されていくでしょう。

会社概要

  • 社名: ポケットサイン株式会社 (PocketSign Inc.)
  • 所在地: 東京都新宿区大京町22-1 グランファースト新宿御苑1F
  • 設立: 2022年8月
  • 代表者: 代表取締役 CEO 梅本 滉嗣(うめもと こうじ)
  • 公式サイト: https://pocketsign.co.jp

まとめ

本記事では、防災情報の一元化と行政手続きのオンライン化を支えるソリューションを通じて、自治体と住民をデジタルでつなぐ社会インフラを構築しているポケットサイン株式会社について紹介しました。同社は今後、地域防災と行政DXの中核として、行政・企業・市民をつなぐ次世代サービスの創出に挑戦していきます。

New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。

ポケットサイン株式会社のように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。

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