エイターリンク株式会社は、ワイヤレス給電技術を駆使して、配線のないデジタル世界を実現することを目指すスタートアップです。
本記事では、同社の主力事業3つや、創業の経緯等について詳細に説明しています。
ワイヤレス給電技術を用いた3つの事業
エイターリンク株式会社の事業内容は以下の3点です。
- 工場オートメーション(FA):
日本の工場内ではすでに多くのセンサーが使用されていますが、配線が切れやすい部分や頻繁に交換が必要な部分があります。これを完全にワイヤレス化し、メンテナンスが不要な状態にしています。 - ビルマネジメント:
オフィス内にセンサーを網の目のように配置し、居る人が暑いと感じたときだけ空調を最適に調整します。温度や湿度、照明の明るさ、CO2濃度などの環境センサーや、ドアの開閉、漏水を検知するセンサーも全てワイヤレスで動かしています。 - メディカルインプラント:
薬では治療が難しい病気をインプラントデバイスで解決します。心臓のペースメーカーなどをワイヤレス給電で動かしています。
代表製品「AirPlug™」
エイターリンクの代表的な製品として、「AirPlug™」があります。AirPlug™とは、「電波を用いて人の居住環境にワイヤレス給電空間を創る」空間伝送型ワイヤレス給電ソリューションです。
最大で17メートル以上の距離で給電できるほか、移動する物体に対しても給電できる独自の送受電技術を備えています。特にビルマネジメントの分野で大きな役割を果たしています。
例えば、オフィス内に配線不要で複数のセンサー(温湿度など)を配置し、人の近くの環境情報を基にビルシステムを統合制御します。その結果、空調コストを削減し、オフィスワーカーのストレスも軽減することができます。
創業の経緯:スタンフォードでの研究から着想
エイターリンクは、田邉勇二氏と岩佐凌氏の共同創業により、2020年に設立されました。田邉氏はスタンフォード大学で「メディカルインプラントデバイス」の研究を行っており、この技術を基にして事業化を進めました。
心臓のペースメーカーなどの埋め込み型医療機器は、バッテリー交換による患者の手術負担が大きく、ワイヤレス給電技術が求められていました。田邉氏は、電波を通しにくい人体でも20cm深部にワイヤレス給電できる技術を開発し、多数の特許出願と論文発表を行いました。
この技術を人体外空間で応用すると、ワイヤレス給電可能範囲は20メートルまで伸ばすことができ、角度にも制限がないという利点がありました。
エイターリンクは、このワイヤレス給電技術を基にして、配線のないデジタル世界を実現することを目指しています。
資金調達:シリーズBラウンドで合計20.6億円の調達に成功
エイターリンクは、シリーズBラウンドで合計20.6億円の資金調達を実施しました。これにより、設立以来の累計調達額は約30億円となりました。
今回の資金調達には、慶應イノベーション・イニシアティブ、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、ジャフコ グループ、スパークス・アセット・マネジメント、みずほキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、三菱UFJキャピタルなどが参加しました。
今後は、「AirPlug™」の量産化とインプラントデバイスの開発へ
今回の資金調達は、ビルマネジメント領域での「AirPlug™」の量産と営業拡大に使われます。工場オートメーション(FA)分野での製品開発や量産体制の構築、さらに医療分野など新たな領域での研究開発や事業立ち上げにも投資されます。
また、「AirPlug™」の海外展開も進めており、特にアメリカをはじめとするグローバル展開にこの資金が活用される予定です。
さらに、医療分野では新たなインプラントデバイスの研究開発を行い、2025年以降のスタートを目指しています。
市場規模:DXによってビルマネジメント市場が拡大
エイターリンクが関わる市場は、工場オートメーション、ビルマネジメント、医療分野など多岐にわたります。これらの市場は、デジタライゼーションの進展に伴い、今後も成長が見込まれています。特に、ビルマネジメント市場はエネルギー効率化が重要視される中で注目を集めています。
矢野経済研究所の調査によると、2022年度の国内ビル管理市場規模(元請金額ベース)は4兆5889億円で、前年度比105.7%の成長を記録しました。コロナ禍で延期されていた新規案件が再開したことや、ビル管理関連の改修工事の受注が増加したことが市場拡大の主な要因です。
会社概要
会社名:エイターリンク株式会社(Aeterlink Corp.)
設立年:2020年8月
創業者:田邉勇二、岩佐凌
拠点:東京都千代田区大手町1-6-1 大手町ビル6F Inspired.Lab内