昨今の働き方改革やコロナ禍を通じて、健康であることの価値が重視されるようになりました。
しかし、OECDによれば、日本人の睡眠時間の短さは先進国33カ国の中でワーストを記録。超高齢化社会や、それに伴う医療費・介護費の増大、人生100年時代と日本は健康問題が山積みです。このままでは労働生産性が低下し、健康問題による労働生産性低下が招く経済損失「プレゼンティーズム」(Presenteeism)を引き起こしてしまいます。
そこで今回紹介する「株式会社TENTIAL」(以下、TENTIAL)は、アスリートとタッグを組み、彼らがパフォーマンス向上のために日々実践するセルフケア「コンディショニング」を軸にしたブランドを展開。「良いコンディションを保つために普段から予防やケアをする」という考えのもと、パジャマ・ソックスなど、さまざまなプロダクトを販売しています。
この記事では手軽に心身を整えられるブランドを提供することで、日本全体のポテンシャルを発揮させようとするTENTIAL(テンシャル)について紹介します。
事業内容:コンディショニングブランド「TENTIAL」の運営
TENTIALの事業内容は、パフォーマンス向上に向けて心身を整えられる、コンディショニングブランド「TENTIAL」の運営です。
コンディショニングとは、ライフパフォーマンス向上のために、体調に関わるすべての要因を良い状態に整えることを指します。この未病予防につながるアプローチを誰もが簡単に日常へ取り入れられるよう、TENTIAでは一般医療機器の服や機能性インソール、寝具など、さまざまな商品を販売中です。
たとえば同社の代表製品であるリカバリーウェア「BAKUNE」は、一般医療機器のパジャマであり、着用して寝るだけで疲労回復や肩凝り、腰痛の緩和が期待できます。本製品は発売から3年で70万枚を販売するなど、高い評価を受けているそうです。
TENTIALが開発する特殊機能繊維「SELFLAME」が血行を促進
パジャマなのに一般医療機器として扱われる「BAKUNE」。TENTIALが開発する製品には、なぜ「心身を整える」という高い機能性が備わっているのでしょうか。
その秘密は、同社が長年研究開発してきた特殊機能繊維「SELFLAME」にあります。「SELFLAME」には極小セラミックス粉末が独自配合されており、肌から放出される遠赤外線を吸収。その後、吸収した遠赤外線が再び身体に向かって放出されるため、体温が一定に保たれ、血流改善により心身のパフォーマンスを整えてくれます。
またTENTIALは、その服の構造にも工夫を凝らしています。実は「人は一晩で数回〜数十回寝返りを打つ」と言われていますが、この行動には睡眠の質を高めたり、血流を促したりする効果があるとのこと。そこで同社は大学や製薬会社の研究所出身者などを活用して、身体をスムーズに動かせる服の構造を研究し、パターン(型)に落とし込んでいます。
「人々の手軽なコンディショニング」を実現すべく、プロダクト1つ1つを熱心に研究開発しているのが、TENTIALの最大の特徴と言えるかもしれません。
単なるアパレルブランドではなく医療機器メーカーに
TENTIALは2024年9月4日に第二種医療機器製造業許可を取得したことを発表し、従来よりも要件が厳しい「管理医療機器」を取り扱うことができるようになりました。
これにより、リカバリーウェア「BAKUNE」やワークウェア「MIGARU」といった医療機器を他社に委託して販売していましたが、今後は一連のプロセスを自社で一貫して管理できるようになります。
「この取り組みは、単なる業務の効率化に留まらず、医療機器メーカーとしての当社の成長を加速させる重要なステップ」とCEOの中西氏は述べています。
資金調達:2024年10月にデットファイナンスで20億円を調達
TENTIALは2024年10月28日に、株式会社三井住友銀行をアレンジャーとするシンジケート方式のコミットメントライン契約を締結し、総額20億円の資金調達を行ったと発表しました。
「日々のコンディショニング」に対する顧客の期待に応え続け、持続的な成長を実現していくために、さまざまな資金調達方法を活用し、資本コストや調達コストを適切に管理することが重要だと主張。
エクイティ(株式)による資金調達に加え、デットファイナンス(銀行借入)も積極的に活用することで、成長性と財務の健全性を両立させるファイナンススキームを構築・活用していくと述べています。
<資金調達の概要>
- 契約締結日 :2024年10月28日
- 契約期間 :2024年10月から1年間(延長申込オプション付き)
- 資金使途 :運転資金
- 組成額 :総額20億円
- アレンジャー:株式会社三井住友銀行
- 参加金融機関:株式会社りそな銀行、株式会社商工組合中央金庫
2023年3月に総額10億円を資金調達
TENTIALは2023年3月に、総額10億円の資金調達を実施したと発表しました。
調達方法は、ニッセイ・キャピタル株式会社をリードインベスターとして、TBSイノベーション・パートナーズ、PARAMOUNT BED Healthcare Fund、楽天キャピタルを引受先とした第三者割当増資と、金融機関等からのデットファイナンスです。
量・質両面で充実した製品開発を実現し、より多くの人の健康を支えるため、人材採用にも力をいれて組織体制を強化するとしています。
市場規模:ヘルスケア産業は2025年に約33兆円まで成長
経済産業省によると、日本のヘルスケア産業市場は2025年には約33兆円まで成長します。世界的には、ウェルネス・予防分野のCAGR(年平均成長率)が11%と予想する媒体もあるそう。
将来展望:グローバルで1兆円規模に
TENTIALのCEOである中西氏は、「コンディショニングという視座のもと、モノ以外の事業領域へと広げたい」と発言。「今後、食事やウェアラブルデバイスといった領域や、法人に向けた健康経営の提案は、間違いなく可能性がある」と見ています。
中西氏が目指す先は、グローバルで1兆円規模。実現する手法は既に思い描けているそう。
高機能なヨガウェアなどを販売するグローバル企業のルルレモン・アスレティカは、2024年1月期の通期業績の売上高で約1.4兆円(円換算)を記録。この企業が示すように「コンディショニング×アパレル」分野の期待値は高いと主張しました。世界に勝てるポテンシャルを持つ製造業と、世界共通のテーマである健康を掛け合わせることで、目標を達成していくそうです。
企業概要
- 企業名:株式会社TENTIAL
- 代表者:CEO 中西裕太郎
- 設立:2018年2月
- 所在地: 東京都品川区北品川6-7-29 ガーデンシティ品川御殿山 西館5階
- 公式HP:https://corp.tential.jp/
まとめ
本記事では、コンディショニングブランド「TENTIAL」を運営する株式会社TENTIALについて紹介しました。
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