近年では、女性特有の健康課題についてテクノロジーで解決を目指す「Femtech(フェムテック)」が注目を集めており、多くの企業が取り組み始めています。
実際に経済産業省が発表したレポートによれば、月経にともなう体調不良による労働損失は4911億円にのぼり、通院・医薬品にかかる費用の負担と合わせると、総額は約7000億円になるそう。
こうした働く女性をサポートする企業の1つが、今回紹介する「株式会社ファミワン」(以下、ファミワン)です。同社は、LINEを活用した妊活コンシェルジュサービスを提供しており、さらに企業や自治体向けに妊活や不妊治療に関する研修を行っています。
2024年9月には住友生命・からの出資を受け、さらに注目を集めているファミワン。今回は、この企業の取り組みについて詳しく紹介します。
事業内容:女性健康サポートを軸に複数のサービスを展開
ファミワンは妊活や不妊治療を軸とした事業を展開しています。
その1つのサービス「ヘルスケア相談サポート」では、約50名の専門家がユーザーの健康課題に寄り添い、LINE上でサポートしてくれます。妊活や不妊治療はもちろん、コミュニケーションやメンタル面の悩み、仕事との両立やキャリアに関する相談まで、幅広くサポートをお願いすることが可能です。
さらに、ファミワンは個人向け妊活相談で培った知識を活かし、企業や自治体向けの福利厚生サービスも提供しています。専門家によるオンライン健康相談や、健康リテラシーを向上させるセミナーを、企業や団体のニーズに合わせてカスタマイズして提供中です。
法人向けに「ファミワン 福利厚生サービス」も展開
ファミワンは、女性の活躍推進を軸に、ダイバーシティ経営を支援する法人向けプログラム「福利厚生サポート」サービスを提供しています。このサービスは、従業員の健康リテラシー向上や組織風土の改善に役立つだけでなく、利用促進のための広報資料の作成までサポートし、担当者の負担を軽減できます。
ファミワンを導入している企業の従業員は、オンラインで看護師や心理士、キャリアカウンセラーなどの専門家に、時間や場所を選ばず匿名で相談することが可能です。相談内容が会社に知られることはなく、心理的安全性が保たれるため、従業員満足度の向上が期待できるでしょう。また、早期に悩みを相談することで、自身の身体や心の状態に気づき、行動を変えるきっかけとなり、不調の予防にもつながります。
さらに、全従業員を対象に、専門講師によるセミナーや研修を実施できるため、会社全体のリテラシーを高められます。なおセミナーや研修のテーマは、各企業のニーズや課題に合わせて柔軟にカスタマイズすることが可能です。
自治体向けに「ファミワン 自治体サポート」も展開
自治体向け「ファミワン 自治体サポート」(引用:ファミワン公式HP)
ファミワンは、自治体の住民を対象にしたヘルスケアサポートサービスも提供しています。
実際に、神奈川県横須賀市をはじめ、長崎県、東京都杉並区や世田谷区、広島県三原市、群馬県邑楽町など、都道府県単位から中核都市、さらには数万人規模の市区町村に至るまで、幅広くサービスを展開しているそうです。
資金調達:住友生命・あすか製薬から調達
ファミワンは2024年9月26日、「SUMISEI INNOVATION FUND*」および「あすかイノベーションファンド**」を引受先とする第三者割当増資による資金調達を実施し、1.4億円を調達したと発表しました。これにより、ファミワンの累計調達額は4.5億円に達しました。
- SUMISEI INNOVATION FUND*:住友生命保険相互会社のコーポレートベンチャーキャピタルファンド
- あすかイノベーションファンド**:あすか製薬株式会社のコーポレートベンチャーキャピタルファンド
CEOの石川勇介氏によれば、今回の資金調達を契機に、住友生命・あすか製薬の2社と共同で事業を進めていくことを検討しており、企業の従業員向け福利厚生や自治体向けの相談事業など、事業を大きく拡大していく予定です。
また、新しいサービスの提供開始や、2022年7月にFTratment社から事業譲渡を受けたFCheckに関する今後の展開など、多方面からビジョンの実現に向けて推進していくと述べています。
資金調達の時期 | 主な投資家 | 累計調達額 |
2024年9月 | 住友生命保険相互会社 あすか製薬株式会社 | 4.5億円 |
2022年5月 | 住友生命保健相互会社 キャナルベンチャーズ株式会社 | 3.1億円 |
2021年5月 | 株式会社Relic 守屋 実氏 麻生 要一氏 | 不明 |
2020年4月 | 株式会社KVP アフラック・イノベーション・パートナーズ合同会社 ベンチャーユナイテッド株式会社etc | 1.5億円 |
市場規模:フェムテック市場は2023年に約750億円まで成長
株式会社矢野経済研究所によると、2022年のフェムケア&フェムテック(消費財・サービス)市場は、前年と比べて107.8%成長し、695億円に達しました。この成長は、2020年の市場規模が前年比103.5%だったことに比べると、2021年以降の市場拡大の勢いが一段と加速していることを示しています。
さらに、2023年の市場規模は前年比107.0%増の743億9100万円に達すると予測されており、フェムケア&フェムテック市場の成長は今後も続くでしょう。
市場の成長を後押しする要因の1つとして、女性の健康に特化したナショナルセンターの開設があります。2023年8月、政府は2024年度中に女性の健康に特化した国立高度専門医療研究センターを開設する方針を決定しました。このセンターは、国内での研究データの共有や成果の活用に加えて、女性一人ひとりに向けた正しい情報提供の面でも重要な役割を果たすことが期待されています。
実際、一般社団法人Femtech Community Japanが「2023年最新版国内フェムテックプレイヤーマップ」を公開するように、フェムテック業界内の競争が進んでいます。
実際に、MamaWellというスタートアップは、パーソナル助産師がデータをもとに支援してくれる、妊娠・育児期の女性に向けた伴走型サービスを展開中です。
このように、さまざまな企業や団体が登場するフェムケア&フェムテック市場は、今後も注目される分野となるでしょう。
企業概要
- 企業名:株式会社ファミワン(FamiOne, Inc.)
- 代表者:石川 勇介
- 設立:2015年6月1日
- 所在地: 〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂1-10-8 渋谷道玄坂東急ビル2F−C
- 公式HP:https://famione.co.jp/
まとめ
本記事では、妊活や不妊治療を軸とした事業を展開する株式会社ファミワンについて紹介しました。
New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。
株式会社ファミワンのように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。