トラックドライバーの長時間労働が規制された結果、輸送能力が不足し、従来のように荷物を運べなくなると懸念されている「物流の2024年問題」。
もともと物流業界は高齢化が進んでおり、アナログな体制が残っていることや給与水準の低さから、慢性的な人材不足や生産性の低下が課題となっています。また、限られたスタッフを業界内で取り合う状況もあり、物流への不安は一層高まっている状況です。
そこで人材の有効活用・効率的な倉庫作業を実現するために、多くの企業が物流ロボティクスや自動化の導入を進めています。そんな中、特に注目を集めているのが、フランス発のユニコーン企業「Exotec SAS」(以下、Exotec)です。
Exotecは「Skypodシステム」と呼ばれる物流自動化ソリューションを提供しており、日本にも「Exotec Nihon株式会社」として拠点を構えています。同社はユニクロやGAPといった大手企業とも提携し、事業を急速に拡大中です。
全世界のSkypodシステムの売上高が10億ドル(約1500億円)を突破するなど、世界的に影響力を持ち始めたユニコーン企業Exotecについて紹介していきます。
事業内容:物流の自動化を可能にする「Skypodシステム」を開発
Exotecは物流の自動化を可能にする「Skypodシステム」を開発・提供しています。このシステムの最大の魅力は、倉庫での保管、荷物の回収、運送といった物流に関わるすべてのプロセスを自動化できる点です。
具体的には、まず注文が入ると、自律走行するロボットが最大12メートルの高さまで登り、ラック(棚)から指定された荷物を取り出してステーションまで運びます。ステーションでは、ロボットが運んできた商品がピッキング(回収)され、すぐに陳列されるため、倉庫内のスタッフはその場で簡単に配送作業を進めることが可能です。
さらに、わずか数週間で設置可能なベルトコンベアも完備しており、クライアントのニーズに応じた効率的な荷物運送ができます。
Exotecの革新的な物流ロボティクスは世界中で高い人気を集めており、Gap やCarrefour、ユニクロといった50以上のリーディングブランドに採用され、世界中の100を超える拠点でオペレーションの効率化を実現しています。
2019年には、ユニクロを展開するファーストリテイリングと戦略的グローバルパートナーシップを締結し、日本市場へ進出しました。その後「Exotec Nihon株式会社」を設立し、ヨドバシカメラや3COINSを運営するパルグループHDなど、国内の大手企業をクライアントに迎え、事業を拡大しています。
なお、Exotecは2015年にフランス人起業家のRomain Moulin(ロマン・ムラン)氏と、Renaud Heitz(ルノー・ハイツ)氏により設立されました。両者はもともと医療用ロボットの開発に携わっており、その技術力を活かして物流の自動化分野で急成長を遂げています。
<Exotecが手がける「Skypodシステム」の魅力>
- 倉庫内の商品を自動で管理し、効率的な物流を実現
- 人間工学に基づいた設計で、作業者の負担を軽減
- 法令に基づいた強固な耐震設計
- 3カ国にコントロールセンターを設置し、セキュリティ対策も抜群
倉庫自動化の検証が行える「Exotec東京デモセンター」を運営
Exotecの100%子会社である「Exotec Nihon株式会社」は、倉庫自動化ソリューション「Skypodシステム」の実機を展示する場所として、「Exotec東京デモセンター」を運営しています。
本施設では、クライアントの商材を実際に使用して、倉庫自動化を想定したパフォーマンス検証・コンサルティングまで行うことが可能です。倉庫自動化を中心に、物流の全体最適化に向けた多くのインサイトを提供する場所として機能しているとのこと。
売上高:Skypodシステムの累計売上が10億ドルを突破
Exotecは2024年3月13日に、全世界のSkypodシステムの売上高が10億ドル(約1500億円)を突破したと発表しました。実際に、ExotecはユニクロやGAPといった100を超えるサイトで採用されており、APACや欧州、北米などの主要地域で記録的な事業成長を遂げています。
従業員数も非常に増加しており、この1年で80%増を記録し、全世界で850人以上を擁するまでに成長したとのこと。年間売上高の10%を毎年研究に投資していると、新しいソリューションへの研究開発に対して熱心であることもアピールしており、2024年には100人近い研究開発者を採用するとしています。
常に研究開発に取り組み、変化する市場のニーズに応え続けるExotecの今後の成長に期待です。
市場規模:物流ロボティクス市場は2025年に604億円へ
矢野経済研究所のレポートによると、2021年度の物流ロボティクス市場規模は、前年度比127.5%の242億9000万円に到達しました。この市場は、2025年には604億円まで成長すると予測されており、引き続き高い成長が見込まれています。
実際にEC需要の増加・物流業界の人手不足を背景に、物流倉庫内の自動化ニーズは年々高まっています。コンテナから荷物を取り出す「デバンニング作業」を行うロボットや、自律走行で荷物を搬送するロボットが登場するなど、物流現場で新しいロボットの導入も進んでおり、今後さらに成長していく予想です。
企業概要
<グローバル本社>
- 企業名:Exotec SAS
- 代表者:共同創業者/CEO Romain Moulin(ロマン・ムラン)
- 設立:2015年
- 所在地: 251 Rue Jean Monnet, 59170 Croix France
- 公式HP:https://www.exotec.com/ja/
<日本支社>
- 企業名:Exotec Nihon株式会社(Exotec Nihon Co., Ltd.)
- 代表者:取締役社長 立脇 竜
- 設立:2020年4月
- 所在地: 〒108-6028 東京都港区港南2丁目15−1 品川インターシティA棟28階
まとめ
本記事では、物流の自動化を可能にする「skypodシステム」を開発するExotecについて紹介しました。
New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。
Exotecのように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。