現在の都市交通が、「乗用車の使用効率の低さ」という問題を抱えているのはご存知ですか。平均的な4人乗り乗用車が実際に使用される際、平均搭載人数はわずか1.3人と言われており、乗用車が都市交通手段として物理的に冗長的であることがわかります。
そこで、この課題に注目し、より効率的な都市交通の実現を目指しているのが「Lean Mobility株式会社」(以下、Lean Mobility)です。同社の創業者である谷中氏は、新しい都市型小型EVのカテゴリー「RideRoid」を提唱し、その初代モデルとして「Lean3」を開発。「Lean3」は利便性と快適性を兼ね備えた次世代の小型モビリティであり、都市交通の効率を改善すると期待されています。
この記事では、2024年10月に約46億円を資金調達し、2025年の販売開始が見込まれるなど、注目を集めるLean Mobilityについて、その事業内容等を紹介していきます。
事業内容:都市型小型EV RideRoid「Lean3」を開発
Lean Mobilityは、よりスマートで効率的な都市交通を目指し、新しい都市型小型EVのカテゴリー「RideRoid」を開発しました。その初代モデルとして誕生した「Lean3」は、コンパクトでありながら高い利便性と快適性を備えた次世代モビリティです。
「Lean3」は乗用車の約1/3のサイズでありながら、2人乗りが可能で、後部座席にはISO規格準拠のチャイルドシートが設置できます。また、全周囲を囲むキャビンと空調を備えているため、雨風を防ぎながら快適に移動できるのも大きな魅力です。
さらに、「Lean3」の最大の特徴として「アクティブ・リーン・システム」と呼ばれる姿勢制御技術を搭載しています。この技術により、車両の傾きを最適に制御しながら走行できるため、旋回時や路面が荒れた状況でも、安定した走行と爽快なコーナリングが可能です。
また、Lean Mobilityは単にハードウェアを提供するだけでなく、日常生活での使いやすさや導入のしやすさ、さらには移動の楽しさそのものを高める包括的なサービスや事業モデルの開発にも力を入れています。
【「Lean3」開発以外のLean Mobilityの事業】
- 利便性の向上
- 駐車場事業者との連携、遊休スペースの有効活用
- スマートフォンアプリとの連携、利用者情報の統合管理
- 導入障壁の低減
- リースや保険サービスの提供
- シェアリングモデルの構築
- 包括的なメンテナンスサービスの提供
- 移動体験の魅力向上
- LTEやユーザーのスマートフォンを活用した車両情報の収集・分析
- ユーザー体験に基づいた継続的なサービス開発・改善
- 多様な利用シーンの開拓
- 観光地やリゾート施設での導入
- 企業と従業員双方にメリットをもたらす通勤パッケージ(社内ACコンセントの活用等)
台湾大手の中華汽車と覚書を締結し2025年の販売生産へ加速
Lean Mobilityは、台湾を代表する自動車メーカーである中華汽車工業股份有限公司(以下、中華汽車)と、アセンブリ委託*に関する覚書(MOU)を2024年10月23日に締結したと発表しました。
アセンブリ委託*:部品を組み立てて完成品を生産する作業を委託すること |
今回の覚書により、Lean Mobilityが生産した車体や部品を中華汽車に提供し、中華汽車がこれらの組み立てや検査を担当することになりました。この提携によって、Lean Mobilityの都市向け小型EV「Lean3」の量産プロセスがさらに進み、2025年の台湾市場投入・グローバル展開に向けた体制が大幅に強化されました。
中華汽車は1969年の創業以来、自社ブランドの二輪車・四輪車の生産に加え、日系メーカーを含む国際的な自動車メーカーからの受託生産も行ってきた実績があり、台湾の自動車産業をリードする企業として知られています。同社の豊富な製造経験と技術力により、Lean3の製造体制が強力にサポートされることが期待されています。
資金調達:2024年10月に約46億円(10億台湾ドル)を調達
Lean Mobilityは2024年10月14日に、国内ヴィークル製造スタートアップとして過去最大となる、46億円(10億台湾ドル)を新たに資金調達したと発表しました。これにより、同社は都市型小型EV RideRoid「Lean3」の量産化に向けた重要なマイルストーンを達成しました。
デザインや設計は既に完了しており、部品の大部分に関してサプライヤーが決定。また、台湾における効率的な組立プロセスの計画も整い、2025年の市場投入と量産に向けて準備が進められています。
さらに、Lean Mobilityは革新的な都市モビリティの提供を目指し、一般消費者向け(B2C)の販売に先立って、法人(B2B)や政府機関(B2G)とのパートナーシップを開始しました。具体的な例として、愛知県豊田市との連携があり、市内の事業所・団体に通勤用車両として、「Lean3」を導入する提案が進行中です。
持続可能で自由な都市移動を実現する新しいモビリティ「Lean3」と、それを開発するLean Mobilityの今後の活躍が期待されます。
市場規模:EVの世界市場は2032年に約1.9億ドルまで成長
Fortune Business Insightによると、世界の電気自動車(EV)市場規模は、2023年に5004億8千万米ドルと評価され、2024年には6714億7千万米ドルに拡大すると予想されています。
そして、2032年には1兆8910億8千万米ドルまで成長し、予測期間中の年平均成長率(CAGR)は13.8%を誇るそうです。特にアジア太平洋地域は2023年に51.24%の市場シェアを占め、電気自動車市場をリードしているとのこと。
この市場成長は、電気モビリティ分野への投資が増加していることが背景にあります。たとえば、ダイムラーAGやフォードモーター、BYD、ルノーグループといった大手企業が、電気自動車の生産計画に多くの資金を投じています。
具体的な例として、BYDは2022年9月にタイでのEV生産計画を発表しました。2024年までに年間15万台の生産能力を持つ予定で、タイ投資委員会の支援を受けて、WHAラヨーン36工業団地に最新技術を搭載した右ハンドル車向けの施設も設立する予定です。
また、ダイムラーAGやメルセデス・ベンツといった大企業もEVの開発に多額の資金を投入しており、このような取り組みにより、今後の市場成長が加速すると考えられています。
今後もEV市場のさらなる成長が期待されており、特にアジア太平洋地域を中心に、電気モビリティが普及していくことが見込まれます。
創業者プロフィール:谷中 壯弘氏
谷中 壯弘氏は1993年に東京大学工学部を卒業し、その後、トヨタ自動車株式会社に入社しました。入社後は、シャシー設計や走行制御システムなどの開発実務を経験し、新しいコンセプト車両の企画や都市交通システムの研究開発にも携わりました。
多くのコンセプトカー開発や実証プロジェクトを推進する中で、谷中氏は小型モビリティが持つ社会的な可能性に気づき、この分野を自分のライフワークとすることを決意。そして、2022年6月に自らLean Mobility社を設立し、現在は小型モビリティの普及と発展に取り組むことを目指しています。
企業概要
- 企業名:Lean Mobility株式会社
- 代表者:創業者/CEO 谷中 壯弘(やなか あきひろ)
- 設立:2022年6月
- 所在地: 〒470-0309 愛知県豊田市西広瀬町川原田519-2
- 公式HP:https://leanmobility.net/jp/
まとめ
本記事では、より効率的な都市交通の実現を目指し、都市型小型EV RideRoid「Lean3」を開発するLean Mobility株式会社について紹介しました。
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