今回ご紹介するのは、半導体メモリ分野で世界的に活躍する「キオクシアホールディングス株式会社」(以下、キオクシアホールディングス)です。
同社は、2024年12月に上場する見込みで、現在多くの投資家から注目を集めています。キオクシアホールディングスは、世界全体のフラッシュメモリ需要の約3分の1を担っていると推定されており、私たちの生活や産業を支える重要な役割を果たしています。
このように市場での存在感が大きい一方で、過去には2度の上場延期を経験するなど、順調な道のりではありませんでした。それでも、同社はさまざまな課題を乗り越え、事業を成長させています。
この記事では、キオクシアホールディングスの事業内容や、これまでの資金調達動向を詳しく紹介していきます。同社の背景を知ることで、2024年の上場がどのような意味を持つのかを一緒に考えてみましょう。
事業内容:世界最大級のフラッシュメモリ製造
キオクシアグループは、メモリや関連製品の研究開発や製造、販売を行う、世界最大級のフラッシュメモリ専業企業です。その製品は、私たちの生活に欠かせない多くの場面で使用され、デジタル社会の進展を支えています。
実際に、2024年3月期のグループ全体の売上は1兆766億円にのぼり、従業員数も約15200人を記録。また、世界10カ国に拠点を設けており、国内外の拠点と連携することで技術開発力と生産力を強化しています。
フラッシュメモリとは
フラッシュメモリは、データの読み書きが可能な記憶媒体の一種です。
「不揮発性メモリ」に分類され、「電源を切ってもデータが消えない」という特長を持っています。その名前は、データの消去が瞬時に行える特性から、カメラのフラッシュをイメージして名付けられました。
身近な例としては、USBメモリやSDカードなどに活用されています。
キオクシアの技術革新
1987年、キオクシアはNAND型フラッシュメモリを発明しました。以降、微細化技術を磨き、高密度化を実現し続けています。
さらに2007年には、他社に先駆けて3次元積層構造を発表。この技術を活かした3次元フラッシュメモリ「BiCS FLASH™」を製造し、フラッシュメモリの大容量化を成功させ、電子機器の進化や情報社会の発展に貢献してきました。
実際に、キオクシアは、以下の2つの主要工場で世界のフラッシュメモリ需要の約3分の1を生産しています。
- 四日市工場(三重県四日市市)
- 世界最大級のフラッシュメモリ工場であり、AIを活用したスマートファクトリーとして高い生産効率を誇ります。敷地面積69.4万㎡に6つの製造棟を備え、技術開発部門とも緊密に連携しながら世界最先端のフラッシュメモリを生産しています。
- 北上工場(岩手県北上市)
- 2020年に稼働を開始し、主に3次元フラッシュメモリ(BiCS FLASH™)を生産しています。
北上工場に新たな製造棟が完成
北上工場では、フラッシュメモリ需要の増加に対応するため、第2製造棟(K2棟)の建設が進行中です。建屋は2024年7月に完成し、稼働開始は2025年秋を予定しています。また、管理部門や技術部門は2024年11月から新管理棟への移転を開始する計画です。
なお、K2棟の設備投資には、2024年2月に認定を受けた特定半導体生産施設整備等計画に基づき、助成金の一部が充てられるとのこと。
キオクシアは、「『記憶』で世界をおもしろくする」というミッションのもと、データセンターやAIの普及による需要拡大を見据え、中長期的な成長を目指しています。市場動向に合わせた機動的な設備投資や、競争力を強化するための研究開発を継続することで、デジタル社会の発展に貢献し続けるとしています。
2024年12月中に上場予定!想定時価総額は7500億円
キオクシアホールディングスは2024年11月22日、東京証券取引所から上場承認を受ける見通しであることが明らかになりました。想定される時価総額は約7500億円で、順調に手続きが進めば12月中に上場が実現する見込みです。
さらに、関係者によれば、キオクシアの過半数の株式を保有している米国の投資ファンド「ベインキャピタル」などが保有株の一部を売却する可能性もあると見られています。
キオクシアホールディングスは2024年11月8日、新たなIPOの仕組みである「承認前提出方式(S-1方式)」を採用し、上場を目指すと発表しました。この新方式は、株式公開までの期間を短縮できる点が特徴です。
今回の上場計画は、キオクシアにとって3度目の挑戦となります。同社は2018年6月に東芝から独立して以来、これまでに2度、上場を目指しましたが、いずれも見送られてきました。
過去2度の上場計画を見送った経緯
キオクシアが最初に上場を目指したのは2020年8月のことです。独立からわずか2年での上場計画でしたが、米中対立の影響で想定されていた時価総額2兆円に届く見込みが立たず、1.7兆円規模にとどまりました。この結果、同年9月に上場を中止しました。
次に、2024年8月に2度目の上場を計画します。当時はフラッシュメモリー市場が回復傾向にあったため、2024年10月末までの上場を目指して準備が進められていました。しかし、目標としていた時価総額1.5兆円に対し、投資家からの需要は1兆円に満たず、再び計画を見送ることとなりました。
3度目の挑戦にかける期待と課題
今回の上場計画は、業績が改善している現状を受けての決断です。同社の2024年4月から9月期の業績では、当期純利益が過去最高となる1760億円を記録し、黒字転換を果たしました。
半導体メモリー市場は変動が激しいため、市場環境が好調なうちに上場を実現することが重要です。そこで、今回の業績改善を好機と捉えて、年内上場を目指すことになったと見られています。
ただし、想定時価総額については当初の目標であった1兆円を大きく下回る7500億円と見られており、依然として課題も残っています。今回の挑戦が「三度目の正直」となるかどうかは、予断を許さない状況です。
上場の目的は工場新設に向けた資金調達
キオクシアは、岩手県北上市にある北上工場の新棟を2025年秋に稼働させる計画を持っています。この先端的な半導体の開発・製造には多額の資金が必要です。そのため、上場によって銀行からの借り入れ以外の資金調達手段を確保することを目指しています。
今後、キオクシアの上場計画が順調に進むかどうか、その動向に注目が集まります。
市場規模:半導体の世界市場は2025年に6873億ドルまで成長
世界半導体市場統計(WSTS)は12月4日、2024年の半導体市場規模が前年から16%増加し、6112億ドル(約95兆円)に達すると発表しました。この見通しは、2023年11月に公表された従来の予測を上方修正したものです。生成AIへの積極的な投資が市場を牽引しており、AIに関連するロジック半導体やメモリー半導体の需要が増加しています。
2024年:2年ぶりのプラス成長
2024年の市場規模は、過去最高だった2022年を上回ると予測されています。特に種類別では、メモリー半導体が前年比で77%増と急回復すると見られています。一方、ロジック半導体は11%増と堅調な伸びを見せる見通しです。
AI関連製品の需要が好調な一方で、スマートフォンやパソコン向けの汎用半導体は、回復のペースがやや緩やかになるとされています。地域別では、アメリカをはじめとする市場の成長が際立っています。
2025年:さらなる成長へ
WSTSは同日、2025年の市場規模も予測を発表しました。2025年の半導体市場は、2024年から12%増加し、6873億ドルと新たな過去最高を記録する見込みです。
生成AIの普及による需要増加が続くほか、再生可能エネルギー関連の電源装置や電気自動車、自動運転技術に使われる半導体の需要がさらなる成長を後押しすると見られています。
日本市場の動向
2024年の日本国内における半導体市場規模は、前年比5%増の約6兆8670億円と予測されています。政府の補助金政策により、国内での半導体関連投資が活発化しており、2025年には9%増の約7兆5088億円に達する見通しです。
企業概要
- 企業名:キオクシアホールディングス株式会社
- 代表者:代表取締役社長 早坂 伸夫
- 設立:2019年3月1日
- 所在地: 〒108-0023 東京都港区芝浦3-1-21 田町ステーションタワーS
- 公式HP:https://www.kioxia-holdings.com/ja-jp/top.html
キオクシアのグループ構成
キオクシアのグループ沿革
まとめ
本記事では、世界最大級のフラッシュメモリ専業企業であるキオクシアホールディングス株式会社について紹介しました。
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