最終更新日 25/01/14
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【Craif】尿検査で未来を変える!がんの早期発見を実現する注目スタートアップ

ヘルスケア
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(引用:Craif公式HP)

高度な技術が進歩した現代においても、私たちを苦しめ続ける「がん」厚生労働省の統計によると、がんは日本人の死亡原因の第1位を占め、全体の24.3%に上ると言われています。これは、およそ4人に1人ががんで命を落としている計算です。

この深刻な問題に立ち向かうためには、治療技術の進化だけでなく、早期発見が不可欠です。早期にがんを発見することで、患者の生存率を飛躍的に高めるだけでなく、治療の負担を大幅に軽減することができます。しかし、従来の検査方法は手間や身体への負担が大きく、定期的な検査を受けることが難しいという課題がありました。

こうした課題を解決するために、Craif株式会社」(以下、Craif)は尿を用いた簡便で高精度ながん検査「マイシグナル®」を開発。従来検出が難しかったすい臓がんの早期発見を実現するなど、画期的な成果を上げています。さらに、「身体への負担を軽減しながら自宅で検査を可能にする」という革新的なアプローチが、多くの注目を集めています。

また、最近では、本田圭佑氏が運営するベンチャーキャピタル「X&KSK」から資金調達を達成したことを発表し、世間から大きく注目を集めました。本記事では、がん治療の新時代を切り開くCraifの技術や将来展望について解説します。

事業内容:尿検査でがんを検出できる「マイシグナル®︎」

Craifの代表製品である「マイシグナルシリーズ」(引用:Craif公式HP)

Craifは、尿など簡単に採取できる体液から、がんを検出する技術を研究開発しています。その中で開発された基盤技術「NANO IP®(NANO Intelligence Platform)」により、マイクロRNAなど、病気に関連した生体物質を尿から高い精度で検出することに成功しました。

この技術を応用したCraifの代表製品が、尿がん検査「miSignal(マイシグナル®)」です。このマイシグナルシリーズは4つのパッケージで構成されており、がんの予防と早期発見を支援しています。

Craifの代表製品:マイシグナルシリーズ

  • 「マイシグナル・スキャン」:マイクロRNA×AIでがんリスクを高精度に評価する検査
  • 「マイシグナル・ライト」:より手軽にがんリスクを評価する検査
  • 「マイシグナル・ナビ」:がんに特化した遺伝子検査
  • 「マイシグナル・チェック」:DNAダメージをモニタリング・予防につなげる検査
マイシグナルでは食道がんなど、7つのがんを検出することができる(引用:マイシグナル公式HP)

このマイシグナルの最大の特徴は、身体への負担が少なく、簡単に検査を行える点です。尿やだ液を採取するだけで、がん死亡数の約7割を占める7つのがんリスクを一度に検査することができます。特に、すい臓がんや卵巣がんなど、従来のがん検診でカバーされていないがん種にも対応しており、利便性の面で優れています。また、自宅でも簡単に検査を行えるため、がんリスクの定期的なモニタリングに最適です。

検査でがんを発見できる時期のうち、早期ステージはわずか半年から2年程度。この段階でがんを発見し適切な治療を行うことが、患者の生存率向上や治療負担の軽減につながります。だからこそ、定期的な検査を受けることが非常に重要であり、それを可能にするマイシグナルは革新的なソリューションなのです。

検査でがんを発見できる時期のうち、早期ステージはわずか半年から2年程度(引用:マイシグナル公式HP)

さらに、尿に含まれるマイクロRNAを用いた独自の技術により、すい臓がんを早期発見できる点もマイシグナルの特筆すべきポイントです。従来の血液マーカー「CA19-9」による早期すい臓がんの検出感度が37.5%だったのに対し、マイシグナルでは92.9%という圧倒的な精度を誇ります。このように、マイシグナルは検査精度の面でも大きな発展をもたらしました。

マイシグナルは92.9%という圧倒的な感度ですい臓がんを早期に発見できる(引用:マイシグナル公式HP)

資金調達:シリーズCラウンドの1stクローズにて10億円を調達

(引用: Craif公式HP)

Craifは2024年12月23日、シリーズCラウンドの1stクローズとして、本田圭佑氏が率いるベンチャーキャピタル「X&KSK」をリード投資家とした資金調達を実施したと発表しました。X&KSKは今回のラウンドで10億円を出資しており、これは同ファンド史上最大の投資額となります。この調達により、Craifの累計資金調達額は約62億円となりました。

また、同社は2025年春頃に予定しているシリーズC 2ndクローズにて、事業会社を中心に追加の資金調達を計画していると明かしました。

【資金調達の概要】

  • シリーズC 1stクローズ資金調達額:10億円
  • 累計資金調達額:62億円
  • 新規投資家:X&KSK
  • 調達方法:第三者割当増資

資金調達の目的:国内事業の拡大・米国研究開発拠点の強化

今回調達した資金を活用し、Craifは国内での事業拡大および米国での研究開発拠点の強化を進める方針です。特に、すい臓がんの早期検出技術を基盤とし、より多くのがん種に対応する技術の研究開発を加速させ、グローバル市場への展開を推進するとしています。

【Craifの今後の取り組み】

  • 検査サービスのさらなる研究開発・研究成果の公表
  • 前向き臨床研究の強化
    • 前向き臨床研究とは、主治医(担当医)がこれから行う治験の内容を説明して、患者の同意の下で行う研究のこと
  • 「マイシグナル®」の対応がん種の拡充
  • 米国でのFDA承認取得を目指した研究開発拠点の整備
  • 事業開発組織の新設と強化

調達資金を活用して採用活動も強化すると発表

Craifは今回の資金調達を契機に、採用活動を大幅に強化する方針も示しています。具体的には、マイクロRNAとAIを活用した超早期がん検査技術の研究開発や、日本およびグローバル市場での事業拡大を支えるため、多岐にわたる職種で人材を募集しています。

特に、研究開発の推進や事業拡大(0⇒1、1⇒100フェーズ)、将来の上場を見据えた組織体制の構築に重点を置いているそうです。また、事業の急速な拡大に伴い、各プロジェクトをリードする事業責任者や海外拠点を統括するリーダーシップポジションの採用にも注力するとしています。

本田圭佑氏が率いるベンチャーキャピタル「X&KSK」について

(引用:PR Times)

X&KSKは、プロサッカー選手であり実業家としても活躍する、本田圭佑氏が創業したベンチャーキャピタルです。

同ファンドは約150億円を運用しており、「日本初のデカコーン企業を生み出す」というミッションのもと、主にシリーズA段階のスタートアップに1〜10億円規模の投資を行っています。対象となる領域は幅広く、日本発のスタートアップや日本人起業家の事業を中心に、その成長を支援しています。

X&KSKの最大の強みは、本田氏の持つ国内外での影響力とグローバルネットワークです。これにより、投資先企業の海外進出や海外VCからの追加資金調達を強力にサポートします。

2025年1月4日には、三井住友銀行やSBIグループを含む複数の金融機関・事業会社、さらには国内外の個人投資家から約153億円の資金を調達したことを発表しました。日本からデカコーン企業を創出するという目標に向け、X&KSKのさらなる活躍が期待されます。

市場規模:がん関連遺伝子検査市場は2023年に137億円

(引用:矢野経済研究所)

矢野経済研究所によると、国内のがん関連遺伝子検査市場は急速に拡大しており、2023年度の市場規模は前年比110.5%の137億円に達しました。この成長は今後も続くと見られており、2024年度には147億円(前年比107.3%)に達すると予測されています。

この成長を支える主な要因は、遺伝子解析技術の進化、保険適用の拡大、そして政府の政策支援です。

がん関連遺伝子検査市場のトレンド

がん関連遺伝子検査市場の拡大を支えている要因として、以下の2つのトレンドが挙げられます。

  • がんゲノムプロファイリング検査の普及
  • マルチプレックス検査の拡大

1.がんゲノムプロファイリング検査の普及

「がんゲノムプロファイリング検査」は、がん細胞の多くの遺伝子変異を網羅的に解析し、新たな治療薬を見つける可能性を提供する検査です。2019年に保険適用となったことで、医療現場での利用が大幅に増加しました。この検査は特に、標準治療が効かない患者に対し、新たな治療選択肢を提供できる点で注目されています。

2.マルチプレックス検査の拡大

これまでの遺伝子検査は1つの遺伝子変異しか調べられないことが一般的でしたが、現在では一度の検査で複数の遺伝子変異を調べる「マルチプレックス検査」が普及しています。この技術により、診断の効率化や患者の負担軽減が実現され、特に肺がん治療での導入が進んでいます。

がん関連遺伝子検査市場の将来展望

がん治療は、従来の臓器別アプローチから遺伝子情報に基づく「個別化医療」へと移行しつつあります。これにより、新たな治療薬の開発が進み、患者に提供できる選択肢が拡大しています。一方で、検査コストやデータプライバシーといった課題の解決が必要です。

医療分野のさらなる発展に大きく貢献する、がん関連遺伝子検査市場の今後の成長に注目です。

企業概要

  • 企業名:Craif株式会社(英語表記:Craif Inc.)
  • 代表者:代表取締役 小野瀨 隆一
  • 設立:2018年5月
  • 所在地: 113-0034 東京都文京区湯島2-25-7 ITP本郷オフィス5F
  • 公式HP:https://www.craif.com/

まとめ

本記事では、尿がん検査「miSignal(マイシグナル®)」を開発・提供するCraif株式会社について紹介しました。

New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。

Craif株式会社のように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。

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