コーヒーは、もはや「カフェインあり」か「カフェインなし」だけを選ぶ時代ではありません。
革新的なカフェイン除去技術「ZEN Craft Decaf Process™」を開発する「ストーリーライン株式会社」(以下、ストーリーライン)は、コーヒーの風味をそのままに、カフェイン量を自由に調整できる新しい体験を提案しています。
BtoC向けのカフェスタンド「CHOOZE COFFEE」や定期便サービス、さらにはBtoB向けの法人向けサービスまで幅広く展開する同社は、健康志向のライフスタイルを提案し、国内外のコーヒー市場に新たな潮流を生み出しました。
本記事では、ストーリーラインの事業内容やその特徴、そして将来のビジョンについて詳しく紹介します。
事業内容:カフェインを調整する技術の研究開発
ストーリーライン株式会社は、独自のカフェイン除去技術「ZEN Craft Decaf Process™」を軸に、BtoCとBtoBの両面で新しいコーヒー体験を提供する研究開発型スタートアップです。同社はカフェイン量を調節する「カフェインコントロール」という新しいコーヒー体験を提供することで、健康的なライフスタイルを提案しています。
【ストーリーラインの事業一覧】
- BtoC事業
- 「CHOOZE COFFEE 日本橋」カフェインを選べるコーヒースタンド
- 「CHOOZE COFFEE ONLINE」カフェインを自宅でコントロールできる定期便サブスク
- 「デカフェ本舗」デカフェ・カフェインレスに特化したECショップ
- BtoB事業
- 「CHOOZE COFFEE for BIZ」カフェインコントロールできるコーヒーマシン
革新的技術「ZEN Craft Decaf Process™」で市場をリード
ストーリーラインの中核を担うのが、東北大学と共同で開発された、超臨界CO2流体技術を活用した「ZEN Craft Decaf Process™」という独自の技術です。この技術は、コーヒー豆の風味を損なうことなくカフェインを選択的に除去する画期的なプロセスで、カフェイン除去率を0%、30%、50%、70%、100%といった細かな段階で調整可能です。
従来のデカフェ技術では、カフェインとともに豆本来の成分も失われることが課題でしたが、同社の技術は水と二酸化炭素のみを使用し、成分を保ちながら環境負荷を抑えることに成功しています。これにより、コーヒー市場に「カフェインの強弱」という新しい概念を導入しつつ、美味しいコーヒーを提供することに成功し、幅広い消費者から人気を集めています。
(1) CHOOZE COFFEE 日本橋 – カフェインを選べるコーヒースタンド
東京都日本橋の「CHOOZE COFFEE」は、全てのドリンクでカフェイン量を選択可能なコーヒースタンドです。全てのメニューについて、レギュラー(カフェインそのまま)・ハーフ&ハーフ(カフェイン少なめ)・デカフェ(カフェインレス)の3種からカフェインの量を選択することができます。
また、シングルオリジンのスペシャルティコーヒーをはじめ、ラテやフラッペなどの多彩なメニューを取り揃えている点も特徴です。体調や時間帯に応じて、カフェイン量を調節することで、日中の活力や夜間のリラックスをサポートします。
なお、通常はデカフェを飲まない(どちらかというとカフェイン中毒気味な)ビジネスマンを対象に、証券マンやコンサル業の方々が多数行き交う日本橋一丁目にて、実証店舗「CHOOZE COFFEE」がオープンされたそうです。
(2)CHOOZE COFFEE ONLINE – カフェインを自宅でコントロール
「CHOOZE COFFEE ONLINE」は、コーヒーの定期便サービスです。カフェイン量を調節した3種セットやカフェインレスのセットが用意されており、健康志向の消費者に支持されています。体調管理や睡眠の質向上に寄与する商品ラインナップで、家庭での新しいコーヒー体験を提供しています。なお、現在は定期便セットかトライアルセットの2つしか販売していません。
(3)法人向け事業「CHOOZE COFFEE for BIZ」
ストーリーラインは、企業や施設向けに、オフィスやコワーキングスペース、宿泊施設などで利用可能な「CHOOZE COFFEE for BIZ」を展開しています。このサービスでは、専用のコーヒーマシンを設置し、従業員が自身のカフェイン摂取量を調節できる環境を提供します。
現在のトレンドとして、従業員の健康管理を経営的視点で捉え戦略的に実践する「健康経営」が推奨されており、健康投資が企業の重要課題となっています。多くのオフィスでは福利厚生としてコーヒーが提供されている一方で、カフェインの過剰摂取を懸念する従業員も少なくありません。
そのため、健康経営を目指す企業にとって、従業員の健康維持や生産性向上を実現する手段として、本サービスが注目されています。ストーリーラインは、今後、航空会社のラウンジやショールームなど、利用シーンをさらに広げる計画です。
資金調達:日本政策金融公庫・仙台銀行から協調融資を実施
ストーリーラインは2024年12月24日、日本政策金融公庫仙台支店と仙台銀行本店営業部から協調融資を受けたことを発表しました。
資金調達額は公表されていませんが、今回の融資は事業展開に必要な運転資金の一部として活用され、さらに資本性資金の導入を通じて財務体質の強化を図るとしています。
資金調達の目的と用途
ストーリーラインは、調達した資金を以下の3つの主要な取り組みに活用する予定です。
- 研究開発と技術革新の加速:令和5年度成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)に採択されたことに伴い、研究および技術開発を加速し、体制を強化します。
- 量産化試験フェーズへの移行:製品の量産化に向けた試験段階において、組織体制を整備し、効率的かつ効果的な生産基盤を構築します。
- 新規事業「CHOOZE COFFEE for BIZ」の強化:法人向けカフェイン調節コーヒーサービスの展開を支える事業体制を強化します。
今後の展望:新たなコーヒー文化の創出
ストーリーラインは、技術を起点に「カフェインコントロール」という新しいコーヒー体験を提案し、コーヒー市場に新たな文化を創出することを目指しています。同社は、カフェインレス市場のさらなる拡大と、新しい顧客層の開拓を進めることで、持続可能な成長を追求していく方針です。
ストーリーラインの革新的な取り組みは、単なる製品の枠を超え、コーヒーの楽しみ方そのものを再定義しようとしています。この取り組みが、新しいライフスタイルや価値観を生み出し、コーヒー市場にどのような影響を与えるのか、今後の展開に注目です。
市場規模:カフェインレスコーヒー、2030年に36億ドルへ到達
カフェインレスコーヒー(デカフェ)市場は、健康志向の高まりや新たなライフスタイルの影響を受け、急速に拡大しています。調査企業グローバルインフォメーションによると、2023年の市場規模は24億米ドルで、2030年には36億米ドルに達すると予測されています。この間の年平均成長率(CAGR)は5.9%とされ、特に中国市場は8.9%の高い成長率を示す見込みです。
カフェインレス市場拡大を支える新しい需要
近年の市場拡大の背景には、以下のような要因が挙げられます。
- 多様な消費者層からの支持:従来、妊娠・授乳中の女性やカフェイン不耐症の方々が主な消費者でしたが、近年では日常的にコーヒーを楽しむ層にも支持が広がっています。特に「1日数杯のうち1杯をカフェインレスに置き換える」というカフェインマネジメントが新しいトレンドです。
- 健康志向の高まり:良質な睡眠や健康的な生活を求める声が増え、夜間でも楽しめるカフェインレスコーヒーが注目を集めています。この流れが市場のさらなる成長を後押ししています。
日本市場の動向と主要ブランド
日本市場では、健康志向と自宅消費の増加を背景に、カフェインレスコーヒーが大きな成長を遂げています。ネスレ日本の調査では、2023年の家庭内市場は2013年比で約3倍に拡大しました。ここでは主なブランドの成功事例を紹介します。
- ネスレ日本:「ネスカフェ ゴールドブレンド カフェインレス」のスティックブラックタイプが特に好調で、夕方以降のニーズに対応しています。
- UCC上島珈琲:ワンドリップタイプの「おいしいカフェインレスコーヒー」は前年比で売上が2桁増加。また、外食産業向け製品の展開にも力を入れています。
- キーコーヒー:「インスタントコーヒー カフェインレス」が前期に数量・金額ともに2桁増。水や牛乳で手軽に楽しめる点が支持を集めているとのこと。
- 味の素AGF:「ブレンディ ドリップパック やすらぎのカフェインレス」は、睡眠や利尿を気にする消費者層に受け入れられ、売上が好調です。
外食市場とカフェインレスの未来
カフェインレスコーヒーは家庭内消費にとどまらず、外食市場にも広がりを見せています。多くの飲食店がカフェインレスメニューを導入し、消費者との接点を増やしています。さらに、製品の多様化や流通チャネルの拡充が進む中で、市場はさらなる成長を遂げる見通しです。
企業概要
- 企業名:ストーリーライン株式会社 / STORYLINE Inc.
- 代表者:代表取締役 岩井 順子
- 設立:2018年07月13日
- 所在地:
- 本店:〒158-0083 東京都世田谷区奥沢4-26-7
- 研究所:〒980-0845 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-40 T-Biz308号室
- 公式HP:https://storyline.co.jp/
まとめ
本記事では、「カフェインコントロール」という新しいコーヒー体験を提供するストーリーライン株式会社について紹介しました。
New Venture Voiceでは、このような注目スタートアップを多数紹介しています。
ストーリーライン株式会社のように、国内外の面白い企業についてもまとめているため、関連記事もご覧ください。