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近年、サステナビリティへの関心が高まる中、木材の流通経路を明確にし、持続可能な森林管理を実現することが求められています。しかし、従来の木材市場は情報の非対称性が強く、品質や価格の不透明さが課題となっていました。
今回紹介する「株式会社森未来」(以下、森未来)は、こうした課題に取り組むIT企業です。木材プラットフォーム「eTREE」をはじめとする革新的なサービスを通じて、設計者や工務店が適正な価格で木材を調達できる環境を整えています。また、森林認証の支援やCLT(直交集成板)の活用推進など、多角的なアプローチで林業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進中です。
本記事では、森未来の事業内容や市場の動向を詳しく解説し、同社が目指す「持続可能な森林」の実現に向けた取り組みを紹介します。
事業内容:森林・林業・木材に関するITビジネスを展開
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森未来は、木材流通の透明化を目指し、森林・木材・林業に関する情報を集約するITビジネスを展開しています。
同社の代表的な事業である「eTREE(イーツリー)」では、需要者と供給者を直接つなぎ、適正価格で木材を購入できる仕組みを提供。全国の林業家・製材所・木質建材メーカーとのネットワークを活かし、持続可能な森林(Sustainable Forest)の実現にも取り組んでいます。
近年、SDGsへの関心の高まりとともに、国産材や流通経路が透明化されたサステナブルな木材の需要が増加中です。しかし、木材のサプライチェーンは品質(Q)・価格(C)・納期(D)の面で不透明であり、設計者や工務店にとって利用しづらい状況が続いています。日本では1964年の林業基本法制定以来、持続可能な林業への取り組みが進められてきましたが、多くの課題が残っているのが現状です。
森未来は、こうした課題に本気で向き合い、次世代に豊かな森林を残すための流通改革を進めています。
主要事業①「eTREE」:設計者・デザイナーのための木材プラットフォーム
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eTREEは、設計者やデザイナーが必要な木材をスムーズに調達できるWebプラットフォームです。建築家やデザイナーの木材利用を支援し、新たな空間デザインの可能性を広げることを目的としています。
木材の需要が高まる一方で、利用者と供給者の間には情報のギャップが存在し、木材の流通が円滑に進んでいません。特に、需要側から地域材や環境貢献につながる木材の利用を望む声が増加しているものの、供給側では新たな商品が誕生しても、それらの情報が十分に共有されていないのが現状です。
eTREEでは、この課題を解決するため、木材の情報を集約し、需要と供給を効率的に結びつける仕組みを構築。設計者や工務店がより簡単に木材を選択し、利用できる環境を整えています。
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また、同サービスの大きな特徴として、流通経路が明確で社会や環境に良い影響を与える素材を重視し、その情報を明示した上で提供することを基本方針としています。具体的には、eTREEの木材調達方針のランク3以上に相当するもののみを「サステナブルウッド」として扱い、ランク1およびランク2に該当する木材は取り扱いません。
こうした厳格な基準のもと、設計者やデザイナーが安心して持続可能な木材を活用できる環境を提供しています。
主要事業②「木材コーディネート」
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(引用:森未来公式HP)
森未来は、木材を活用したデザインやプロジェクトの実現をサポートする「木材コーディネート」事業も展開しています。全国のネットワークを活かし、木材の選定から調達、加工、納品まで一貫した支援を行っています。
同社が提供する木材セレクションには、30点以上の個性豊かな木材・木質商品が掲載されており、多様なニーズに対応可能です。また、これまでにアパレル店舗の什器、地域材を使用したテーブル、CLT(直交集成板)を用いた内装など、さまざまな事例を手掛けています。木材の専門知識を活かし、社会貢献性の高いプロジェクトにも積極的に関与しています。
その他の事業①「森林認証コンサルティング」
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森未来は、持続可能な森林管理の普及を目的とした「森林認証コンサルティング」も展開しています。SGEC/PEFCなどの国際的な森林認証の取得をサポートし、企業が環境に配慮した木材を調達できるよう支援しています。
森林認証は、適切に管理された森林とその木材を証明し、消費者に対して持続可能な木材の選択肢を提供する制度です。これにより、企業はトレーサビリティを確保し、環境リスクを管理しながら社会的責任を果たすことができます。また、ESG経営を強化し、企業価値の向上にも寄与します。
その他の事業②「CLTコンサルティング」
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森未来は、近年注目されている木質建材「CLT(Cross Laminated Timber)」の活用支援も行っています。CLT(直交集成板)は、木材を直交方向に貼り合わせて強度を高めた建築用素材です。従来の木造建築よりも耐久性が高く、大型建築物にも活用されています。
森未来のCLTコンサルティングでは、設計や調達に関するアドバイスを提供し、適切な材料選定や施工方法をサポートします。概算見積の作成、設計・施工者の紹介、金物の選定、加工業者の仲介、輸送時のパネル積みの最適化など、CLTを活用した建築プロジェクトの円滑な進行を支援しています。
実績:2024年度グッドデザイン賞を受賞
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森未来が開発したサウナ付きトレーラーハウス「Earthboat(アースボート)」が、2024年度グッドデザイン賞を受賞しました。この賞は、日本で優れたデザインに贈られる権威ある賞であり、Earthboatの革新性やサステナビリティが高く評価されています。
Earthboatは、自然の中で快適に過ごせることを目的に開発された量産型トレーラーハウスです。CLTを活用しており、耐久性と快適性を兼ね備えた環境配慮型の住空間を実現しています。断熱材を使用せずとも快適に過ごせる設計で、数時間で組み立てが可能な点も特徴です。
現在、豪雪地向けの「Earthboat 1」が展開され、今後は平野部向けの「Earthboat 2」も予定されています。審査では、基礎工事不要で環境負荷を抑え、撤去後の負の遺産を残さない点が高く評価されました。宿泊業を通じて荒廃した土地の再生に貢献するという社会的使命も果たしており、今後の宿泊施設の新たなモデルケースとして注目されるかもしれません。
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資金調達:シリーズAラウンドにて2.6億円を調達
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森未来は2025年1月28日に、第三者割当増資により、シリーズAラウンドにて2.6億円を資金調達したことを発表しました。
今回のシリーズAラウンドでの資金調達により、「eTREE」をさらに発展させ、木材ポータルサイトおよびデータベースとしての機能を充実させると、同社の代表取締役である浅野氏は述べています。
<資金調達概要>
- 調達金額:約2.6億円
- 調達方法:第三者割当増資
- 引受先(敬称略、順不同):
- JPインベストメント地域・インパクト1号投資事業有限責任組合
- アグリビジネス投資育成株式会社
- SMBCベンチャーキャピタル8号投資事業有限責任組合
- Open Network Lab・ESG 1号投資事業有限責任組合
- 奥能登SDGs投資事業有限責任組合
市場規模:林業産出額は2022年に5807億円を記録
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林業の市場規模は長期的に縮小傾向にありましたが、近年は回復傾向が見られます。
農林水産省のデータによると、木材価格の低下や国産材生産量の減少により、長年4000億円前後で推移していました。しかし、2022年(令和4年)は製材用素材の価格上昇や燃料用チップの需要増加が影響し、前年比6.4%増の5807億円を記録しました。
日本の木材自給率は約40%
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1955年には木材の自給率はほぼ100%でしたが、1960年の「木材輸入自由化」により急速に低下し、1970年には50%を下回りました。以降、輸入材への依存が進み、現在の自給率は約40%にとどまっています。
加えて、1997年以降は新築住宅の着工数減少に伴い、木材需要も縮小。リーマンショックなどの経済危機の影響もあり、国産材の需要低迷が続いています。
こうした状況を打開するため、2010年に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が制定されました。2021年には対象が民間建築物にも拡大され、「都市の木造化推進法」として国産材利用の動きが強まっています。
日本の林業は依然として輸入材依存や担い手不足といった課題を抱えていますが、政策支援や木材の需要変化を活かし、持続可能な成長を目指すことが重要でしょう。
企業概要
- 企業名:株式会社森未来
- 代表者:代表取締役 浅野純平
- 設立:2016年4月
- 所在地: 〒108-0014東京都港区芝5-27-6 泉田町ビル6階
- 公式HP:https://shin-mirai.co.jp/
- BtoB向け木材プラットフォームeTREE:https://www.etree.jp/
まとめ
本記事では、森林・木材・林業に関する情報を集約するITビジネスを展開する株式会社森未来について紹介しました。
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