climeworks は、二酸化炭素の回収事業を行なっているスイスのスタートアップです。同社は、2009年に設立され、2012年には、年間1トンもの二酸化炭素を排出するプラントを実装することに成功しています。
本記事では、同社の創業経緯や二酸化炭素の回収の仕組み等について、詳しく説明していきます。
創業の経緯:スキー中に感じた環境問題
2009年、climeworks は Christoph Gebald(クリストフ・ゲバルト) と、 Jan Wurzbacher(ヤン・ヴルツバッハー)によって設立されました。
二人はチューリッヒ工科大学の工学部の学生として、2003年10月に出会いました。共にドイツ人だった二人は、スイスの方言が聞き取りにくいという事実で意気投合したと言います。
転機となったのは、スイスのアルプスでスキーを楽しんでいた時でした。ゲバルトとヴュルツバッハーは 氷河の後退を目の当たりにして衝撃を受け、その結果「気候変動に取り組むためにできることはすべてやろう」と決意したと言います。
彼らは大学院生として、二酸化炭素を使って合成燃料を製造する方法を研究していた Aldo Steinfeld(アルド・スタインフェルド)教授の下で働き始めました。
スタインフェルド教授のもとで、炭素を抽出するプロトタイプを開発し、大気中から0.5gの二酸化炭素を取り出すことに成功しました。それは大した量ではありませんでしたが、大気中から炭素を抽出することが可能であることのの証明にはなりました。
そして、2009年、2人はスイスの財団から30万ドルの資金を獲得し、climeworks は大学から独立した組織となりました。
2011年、さらに200万ドルの調達に成功。その資金を活用し、 2012年に同社は、年間1トンの二酸化炭素を抽出するプラントを製造。さらに同社は、2050年までに、二酸化炭素回収量を年間50トンにするプラントを開発・実装することを目標にしています。
二酸化炭素回収の3ステップ
climeworks の二酸化炭素回収のプロセスは以下の通りです。
- 大気中から二酸化炭素だけを収集
- 収集した二酸化炭素を100℃で熱し、濃縮
- 濃縮した二酸化炭素の塊を地中に埋める
Step1 大気中から二酸化炭素だけを収集
climeworks は、DAC(Direct Air Capture/直接空気回収技術)を用いて、大気中から二酸化炭素だけを集めます。具体的なプロセスは、大気中の二酸化炭素をフィルターに付着させる形で取り出し、集めます
DAC(Direct Air Capture/直接空気回収技術)とは、大気中の二酸化炭素を分離・回収する技術の総称です。DACの利点は、二酸化炭素の貯留や利用など用途に合わせた回収場所が選択でき、より効率的に二酸化炭素の回収が実現できることです。
Step2 収集した二酸化炭素を100℃で熱し、濃縮
次に行うことは、集めた二酸化炭素を濃縮することです。装置内を100℃で加熱することによって、二酸化炭素が濃縮され、扱いやすくなります。
Step3 濃縮した二酸化炭素の塊を地中に埋める
最後の工程は、濃縮した二酸化炭素を個体にして、地中に埋めることです。ここで、活躍するのが*Carbfix社のCO2貯蔵技術です。
Carbfixは、地下パイプラインで濃縮された二酸化炭素を受け取った後、1トンのCO2を27トンの水と結合させた合成溶液を作ります。この溶液は地盤に注入され、母岩と反応して個体となり、永久に貯蔵されます。
*Carbfix はアイスランドの企業で、CO₂ を水に溶かして玄武岩に注入することで CO₂ を永久に貯蔵する方法を開発した企業。
市場規模:二酸化炭素除去市場
炭素回収・貯留・利用市場の2022年の市場規模はわずか30億ドルだが、急成長が予測されている。市場の将来性に関する予測は千差万別で、低い方では2030年までに142億ドル、高い方では1,350億ドルに達する。一方、カーボンオフセット市場は2037年までに1兆ドルに達する可能性がある。
ボストン・コンサルティング・グループ(以下、BCG)が発表した報告書によると、二酸化炭素除去(CDR)は、2030年から2040年にかけて、世界の脱炭素化の要となると予想されています。短期的には世界の純排出量を抑制し、長期的には過去の排出量を消去する意味で極めて重要な役割を果たすと咆哮されています。
CEOの語る、政府協力の必要性
climeworks のCEOである、Jan Wurzbacher(ヤン・ヴルツバッハー)は以下のように述べています。「世界の排出量のわずか1%を回収するには、CO2回収装置を満載した輸送用コンテナが75万個必要である。そのため、規模を拡大するためには政策的措置が必要になるだろう」
政府がCDR市場に貢献する必要性は高まっています。米国政府や世界各国は、2023年の時点で、DACやその他のCDR技術に数十億ドルの資金を提供しているが、さらなる協力が必要と言えます。
資金調達:8億ドルを超えを達成
2022年4月、climeworks は、未公開株取引で6億5,000万ドルを調達したと発表した。このラウンドはPartners GroupとGICが主導し、Baillie Gifford・Carbon Removal Partners・Global Founders Capital などが参加した。
この資金はプラントの拡大と、将来的に二酸化炭素をメガトン単位で回収する装置の開発に使われる予定です。
このラウンドにより climeworks の資金調達総額は、2024年1月時点で8億ドルを超えました。
会社概要
会社名:climeworks
設立:2009年
拠点:スイス
創業者:Christoph Gebald(クリストフ・ゲバルト) 、 Jan Wurzbacher(ヤン・ヴルツバッハー)