Cortical Labs(コーティカルラボ )は、「DishBrain」という、人間の幹細胞から培養した脳細胞とシリコンチップを組み合わせたものを開発しているオーストラリアのスタートアップです。
本記事では、「DishBrain」とは何か、Cortical Labsの事業内容等を紹介しています。
「DishBrain」
「Dish Brain」とは、
「Dish Brain」は、人間の脳細胞と機械を組み合わせた生物学的知能を持つシステムです。シャーレの中で培養された脳細胞を、微小電極の上で育てることで作ります。脳と機械が相互作用できる環境を構築されています。 さらに、「Dish Brain」は卓球ゲームの「PONG」をAIよりも速く学習し、わずか5分で遊び方をマスターしたと報告されています(Brett et al. 2022)。
AIと「DishBrain」の違い
「DishBrain」は、よくAI(人工知能)と比較されます。そこで、AIと「DishBrain」の違いについて説明します。 具体的な違いは以下の通りです。
- 構成要素
- AI: コンピュータープログラムやアルゴリズムに基づいて動作します。
- DishBrain: 実験室で培養された人間の脳細胞と機械の組み合わせです。
- 学習方法
- AI: データから学習し、パターンを認識することでタスクを実行します。
- DishBrain: 実際の脳細胞が相互作用し、学習および適応を行います。
- 柔軟性
- AI: プログラムに基づいているため、柔軟性がありますが、限られたタスクに特化しています。
- DishBrain: 生物学的なプロセスに基づいているため、柔軟性が高く、多くのタスクに適用できる可能性があります。
「DishBrain」の実装イメージ
文章帯だけでは、伝わりづらいと思うので、Cortical Labs の公式YouTubeも合わせてご覧ください。
上記の動画では、「DishBrain」の適応前と適応後の変化を見ることができます。
- 「DishBrain」の適応前
- 犬型のロボットが見た目の通り、よくあるロボットような直線的な動きがされています。
- 「DishBrain」の適応後
- 犬型のロボットが、まるで本物の犬かのように動きます。表情も豊かに表現され、感情が宿っているように思うことができます。
Cortical Labs立ち上げの理由とビジョン
Cortical Labs の創業者であるHON WENG CHONG(ホン・ウェンチョン)氏は、2018年にこの研究所を立ち上げた理由について、以下のように述べています。
HON氏の経歴や前職での経験から、他のAI関連スタートアップがニューラルネットワークなどの技術に注力している一方で、その背後にある生物学的側面を見落としていることに気付きました。
AIの進歩には生物学的なルーツとの結びつきが重要であると考えたHON氏は、生物学的計算と神経科学の知識を組み合わせて新たなアプローチを模索しました。その結果、バイオインフォマティクスの博士号を持つBrett氏と共同で、実際の脳細胞を用いた「DishBrain」の研究を開始しました。
Cortical Labsの今後のビジョン
Cortical Labsの今後について、創業者のHON WENG CHONG(ホン・ウェンチョン)氏は、以下のように述べています。
私たちのビジョンは、合成生物学と人間の脳の潜在能力を活用して、社会の最大の課題に適応し、問題を解決できる流動知能を備えた新しいクラスの人工知能を開発することです。
この「Dish Brain」プロジェクトは、生物学的処理ユニットの可能性を探求するものであり、医療やAI分野に革新的な展望をもたらすことを目指しています。
Cortical Labs 資金調達
Cortical Labs は、2023年に1000万ドルの資金調達を行なっています。
主な投資家は、Horizons Ventures、Blackbird Ventures、LifeX Ventures、Radar Venturesになります。
この資金の用途は「DishBrain」のさらなる開発だと、Cortical Labs は述べています。ロボティクス、医学等の企業に高度な自律型ロボットの選択肢を提供することを目指しています。
会社概要
会社名:Cortical Labs
創業者:Hon Weng Chong(Founder & CEO)
設立年:2018年
従業員数:約12人