Redwood Materials(以下、レッドウッド・マテリアルズ)は、古い電子機器やバッテリーからバッテリー材料を精製し、リサイクルを進めるスタートアップです。
本記事では、レッドウッド・マテリアルズの創業の経緯やリサイクルの方法、市場規模などについて、詳しく説明していきます。
創業の経緯:イーロン・マスクとの出会いとテスラからの独立
レッドウッド・マテリアルズは、2017年にJB Straubel(以下、ストラウベル/CEO)とAndrew Stevenson(以下、スティーブンソン/CFO)によって設立されました。
レッドウッド・マテリアルズの創業経緯について、以下で詳しく述べたいと思います。
スタンフォード大学でエネルギーシステム工学の学士号を取得したストラウベルは、レース用に古いポルシェを電気自動車に改造したことで有名になりました。後にスタンフォード大学で工学の修士号も取得しました。
2003年、ストラウベルはPayPalを退社したばかりのイーロン・マスクと出会い、1回の充電でアメリカを横断できる電気自動車を提案しました。すでに電気自動車プロジェクトに投資を考えていたイーロン・マスクは、小さなスタートアップであるテスラ・モーターズに目をつけ、投資を行なっていました。
ストラウベルは、テスラの初期の社員となり、世界中のメーカーの手本となるリチウムイオンバッテリーの開発に貢献しました。しかし、ストラウベルは、バッテリー効率や導入コストの面で課題を感じていました。
2017年、ストラウベルと、当時テスラの特別プロジェクト責任者だったスティーブンソンは、レッドウッド・マテリアルズを設立しました。
スティーブンソンは、レッドウッド・マテリアルズのCFOを務め、ストラウベルは、2019年にテスラを退社しました。
2019年、レッドウッド・マテリアルズは、ネバダ州カーソンシティに拠点を構えました。この拠点は、国内最大のリチウムイオンバッテリー工場であるテスラのギガファクトリーから数マイルの場所に位置しています。そして、Amazon・Breakthrough Energy Ventures・Capricorn Investment Group から4000万ドルを調達し、事業拡大を開始しました。
事業内容:バッテリーの調達→再生産・メーカーへの供給
レッドウッド・マテリアルズは、バッテリーの材料をリサイクルし、リチウム・コバルト・ニッケル などの貴金属を回収・精製することで、バッテリーを再生産しています。
以下にバッテリーを再生産までに必要な工程の詳細を記載していきます。
リチウムイオンバッテリーは、アノード(負極)・カソード(正極)・電解質の3つの主要部分から構成されています。カソードはリチウム・ニッケル・コバルトで作られており、バッテリーの大部分を占めています。一方、アノードは銅とグラファイトで構成されており、バッテリーの充電性能に大きな影響を与えます。
これまで、バッテリーにとって上記のように必要不可欠な貴金属を得る方法は、採掘でした。しかし、採掘はリサイクルよりも安価ですが、安定した供給には多くの課題が残っています。低価格の理由は安価な採掘労働によるものです。また、鉱山が多い地域では、大気汚染、水質汚染、土地の劣化が進行しています。鉱山からメーカーまでバッテリーを運搬する過程で、大量の二酸化炭素を排出していることも問題として残っています。
このような課題の多い採掘に変わり、同社はバッテリーの材料をリサイクルすることで、貴金属を回収・精製をしています。
レッドウッド・マテリアルズは、バッテリーの再利用に3つのステップを採用しています。
- 収集とリサイクル
- 精製と再製造
- バッテリー材料のメーカーへの供給
リサイクル可能な材料は主に以下の3つがあります。
- 消費者電子機器
- 古いEVバッテリー
- バッテリー生産の際に出るスクラップ
消費者電子機器は、古い携帯電話・電動工具・ノートパソコンなどのことです。これらは、電子廃棄物供給業者から回収します。
古いEVバッテリーは、容量の低下や自動車事故などの理由で回収されます。
バッテリー生産の際に出るスクラップは、工場内で発生するバッテリー廃材のことで、最大で10%の廃棄がされており、それらを回収します。
上記はすべてレッドウッド・マテリアルズの施設に運ばれ、従業員が電子機器を分解し、リサイクル可能な部品を抽出します。このプロセスの一環として、これらの部品は回収可能な金属にまで還元されます。
同社によると、同社のプロセスはセルに含まれるリチウムの80%以上、ニッケル・コバルト・アルミニウム・グラファイトの95%以上を回収することができると言います。
市場規模:リチウムイオンバッテリー市場とEV市場
リチウムイオンバッテリー市場は、車両や家庭の電化が進む影響で2025年で900億ドル以上の価値があると予測されています。
EVについては、2021年の自動車販売の4.6%でしたが、規制の変更や需要の増加により、2025年には自動車販売の10%、2040年には58%を占めると分析されています。
沿革:工場・拠点の拡大
レッドウッド・マテリアルズは、2017年に、ストラウベルと、スティーブンソンによって創業されました。
2019年には、ネバダ州カーソンシティに拠点を構えました。この拠点は、国内最大のリチウムイオンバッテリー工場であるテスラのギガファクトリーから数マイルの場所に位置しています。そして、Amazon・Breakthrough Energy Ventures・Capricorn Investment Group から4000万ドルを調達し、事業拡大を開始しました。
2022年、同社はサウスカロライナ州に35億ドル規模のEVバッテリーリサイクル工場を開設すると発表しました。この工場は米国エネルギー省からの20億ドルの条件付き低コストローンによって資金提供されており、電気自動車の部品の国内供給を活性化することを目的としています。
同社の目標は、2025年までに年間100GWhのバッテリー材料をリサイクルおよび生産することで、これは100万台のEVを動かすのに相当する量です。
さらに、ストラウベルは、2030年までに原材料のコストを採掘コストの半分に抑えられると考えています。これによりバッテリー製造に関連する排出量を少なくとも40%削減できると同社は述べています。
資金調達:総額28億ドルの資金を調達
レッドウッド・マテリアルズは、総額28億ドルの資金を調達しました。
大部分は米国エネルギー省によるものです。同社は2021年7月にシリーズCで7億ドルを調達し、その時点での企業価値は37億ドルでした。このラウンドおよびその他のラウンドの著名な投資家には、T. Rowe Price・ゴールドマンサックス・フィデリティ・Climate Pledge Fund・Capricorn Investment Group・Breakthrough Energy Ventures・Baillie Giffordが含まれます。同年後半、フォードモーターからも5000万ドルの投資を受けています。
会社概要
会社名:Redwood Materials
創業者:JB Straubel(ストラウベル)・Andrew Stevenson(アンドリュー・スティーブンソン)
設立:2017年
拠点:アメリカ合衆国、ネバダ
事業内容:リチウムイオン電池のリサイクル・電動輸送機器や蓄電機構の電池の製造
URL:https://www.redwoodmaterials.com/